その節税、自社に当てはまりますか?情報に振り回されない社長の判断基準

目次

はじめに:同じように節税して、なぜ結果が分かれるのか

節税をして、わざわざ損をしたい。そう考える社長はいません。この記事を読んでくださっている方も、節税でお金を残したいという思いをお持ちのはずです。
ところが現実には、節税の名のもとに行動した結果、しっかりとお金を残せる社長がいる一方で、かえってお金を失ってしまう社長がいます。同じ立場で、同じように情報を集めているのに、結果は反対に分かれるのです。

税理士業界に25年間身を置き、100名以上の社長の税務をサポートし、500回以上の決算に携わるなかで、この分かれ目を数多く見てきました。
そして、お金を失った失敗の多くには共通点があります。
行動する前に予測でき、防ぐことができたはずの失敗だという点です。才覚や運の差ではなく、事前に見えていたはずの落とし穴に、そのまま踏み込んでしまっています。
では、踏み込む社長と踏みとどまる社長は、どこが違うのでしょうか。

結論から言えば、差を生むのはベースとなる節税知識の有無です。

この記事では、なぜ知識のベースが勝敗を分けるのか、そしてベースがあると社長の節税がどう変わるのかを説明します。

節税情報そのものは、敵ではない

世の中には節税に関する情報があふれています。WEB検索をすれば無数の記事が出てきますし、YouTubeにも節税を解説する動画が並んでいます。保険や節税商品の営業を受けることもあれば、社長同士の会食で「うちはこれで税金を減らした」という話を聞くこともあるでしょう。

こうした情報の多くは、嘘ではありません。制度として実在し、条件が合えば実際に税負担を減らせるものがほとんどです。
問題は情報の真偽ではなく、その手前にあります。
その方法は自社にも当てはまるのか。当てはまるとして、どの程度のリスクをはらんでいるのか。
この二つを測るものさしを、社長自身が持っているかどうかです。

ものさしを持つ社長は、入ってきた情報を自社の状況に照らして取捨選択できます。持たない社長は、情報の量に押されて鵜呑みにするか、勧められるがままに契約するかのどちらかになりやすいのです。

同じ情報の海にいながら、一方は情報を武器にし、もう一方は情報に振り回されます。

ものさしの中身は三つ

ここで言うものさしは、難しい税法の知識ではありません。中身は三つに整理できます。

1つ目は、その制度が何のために用意されているのかという狙いです。
狙いから外れた使い方は、税務調査で否認されやすくなります。

2つ目は、お金がいつ出て、いつ、いくら戻るのかという資金の動きです。
税額の減り幅だけを見て、出ていくお金を見ていない失敗がもっとも多いからです。

3つ目は、自社の利益水準や資金繰りに照らして無理がないかという適合性です。
他社で効いた方法が自社でも効くとは限りません。

この三つを確認する習慣があるだけで、節税話の見え方は大きく変わります。

実行を決めるのは、税理士ではなく社長

ここで、顧問税理士がいれば大丈夫ではないか、という疑問が浮かぶかもしれません。
たしかに、節税策の効果とリスクを測定し、正しく社長にお伝えするのは税理士の仕事です。しかし、その節税策を実行するかどうかを最終的に決めるのは、税理士ではなく社長自身です。

そして、この最終判断の場面で知識のベースの差が表に出ます。
ベースがない状態では、税理士がリスクを説明しても、その説明を十分に理解できないまま「先生が言うなら」「みんなやっているなら」で実行してしまいます。

結果として、想定していなかった課税が起きたり、税務調査で指摘を受けて追徴課税に至ったりします。説明は受けていたのに、判断の材料にできていなかったわけです。

逆に言えば、税理士の説明を理解できるだけのベースがあれば、同じ説明から自社にとっての採否を導けます。

専門家と同じレベルの知識は要りません。必要なのは、説明を受け止めて、質問を返せる程度の土台です。土台の有無は決算書には表れませんが、判断の質を通じて、数年後の通帳残高に表れてきます。

知識のベースが節税ミーティングの質を変える

ベースを持つ効果がもっともわかりやすく表れるのは、顧問税理士との打ち合わせの場です。

知識のベースがあると、税理士の提案に対して「その方法は、うちの利益水準でも意味がありますか」「解約や取り崩しのときの課税はどうなりますか」といった具体的な質問を返せるようになります。
質問が具体的になれば税理士の回答も具体的になり、打ち合わせが「報告を聞く場」から「一緒に設計する場」に変わります。

ベースを身につけるのに、税理士と同じ勉強をする必要はありません。
近道は、目の前の節税話を先ほどの三つのものさし(狙い、資金の動き、自社への適合性)に当てはめて、わからない部分を税理士に質問することです。質問と回答を重ねるうちに、打ち合わせそのものが学びの場になり、判断の土台が少しずつ強くなっていきます。断片的な情報を大量に集めるより、この往復のほうが確実です。

自社に合う節税策を選べるようになると、もう一つの変化が生まれます。
無理のない節税は資金繰りを圧迫しないため、利益と手残りが安定します。そして安定した利益は、打てる節税策の幅そのものを広げます。先々の利益が読める会社ほど、数年がかりの設計を組みやすいからです。

知識が判断を支え、判断が利益を守り、利益が選択肢を広げる。この循環に入れるかどうかが、数年単位で見たときの大きな差になります。

注意点:こんな節税話は一度立ち止まる

知識のベースは一朝一夕には身につきません。そこで、ベースを固めるまでの間も使える目安として、次の三つに当てはまる話は、契約や実行の前に一度立ち止まってください。

1つ目は、「税金が減る」という結果だけが強調され、出ていくお金や戻り方の説明がない話です。
減った税額の裏で、それを上回るお金が出ていくかもしれません。

2つ目は、その場での決断を迫られる節税商品の営業です。
決算が近い場合でも、顧問税理士に確認する時間すら取れない話には応じないほうが安全でしょう。

3つ目は、他社の成功例だけを根拠にした方法です。
利益水準や業種が違えば、同じ方法でも結果は変わります。

いずれの場合も、顧問税理士に「実行した場合としない場合で、手残りがどう変わるか」を確認してから判断すれば、防げる失敗がほとんどです。

まとめ:知識のベースが、節税で勝つ社長をつくる

節税で勝つ社長と負ける社長を分けるのは、ベースとなる節税知識の有無です。

情報そのものはあふれるほどありますが、自社に当てはまるか、どの程度のリスクがあるかを測るものさしがなければ、情報は判断の材料になりません。

実行を決めるのが社長自身である以上、このものさしは税理士に預けきりにはできないのです。制度の狙い、資金の動き、自社への適合性。まずはこの三つを確認する習慣から始めてみてください。

なお、税制や制度の取扱いは改正されることがあります。実際の判断の前には、その時点の最新情報もあわせてご確認ください。

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わかお税理士
税理士(税理士登録番号:140275)、国際認証MBA(経営学修士)、ファイナンシャル・プランナー

20年以上の実務経験の中で、上場企業から中小零細企業まで100数十名の社長の経営・税務・資産形成を継続的に支援。
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