安定リピート売上が広げる節税の選択肢。手残りを増やす好循環の三角形とは

目次

「今期は利益が読めないから、節税どころじゃない」その悩みの正体

決算が近づくたびに、慌てて使えそうな経費を探す。利益が出そうな年は焦って節税商品に手を出し、売上が落ちた年は節税どころか資金繰りで頭がいっぱいになる。多くのひとり社長が、毎年この波に振り回されています。

その原因は、節税を打つための土台が不安定なことにあるかもしれません。その土台とは、毎月くり返し入ってくる「安定したリピート売上」です。

本記事では、なぜ安定したリピート売上こそが最強の節税基盤になるのか、その仕組みを税理士の視点から解説します。読み終えたとき、「節税の前にやるべきこと」が見えてくるはずです。

なぜ、節税には「安定した利益」が必要なのか

節税には大きく3つの型があります。国の優遇を受ける「制度を使う節税」、来期以降の利益のために今期お金を投じる「経費を使う節税」、そして課税の時期や受け手をずらす「テクニックを使う節税」です。このうち後者2つは、いずれも継続的なキャッシュと利益の見通しを前提にしています。

「ずらす」節税ほど、安定収益がものを言う

代表例が、中小企業の多くが活用する経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)です。支払った掛金はその事業年度の損金に算入できます(根拠:租税特別措置法第66条の11第1項第二号)。掛金は月額最大20万円・年間240万円、累計800万円までで、取引先の倒産に備えながら節税ができる王道の仕組みです。

ただし、この共済が効果を発揮するのは「毎年コンスタントに掛金を払い続けられる会社」だけです。売上が不安定で、ある年は払えてある年は払えない、という状態では、節税効果も資金の備えも中途半端になってしまいます。掛金を安定して払えるだけの安定収益があってはじめて、こうした節税は本来の力を発揮するのです。

経費を使う節税も「収穫の見通し」が前提

来期の売上やコスト削減につながる支出を今期に「種まき」として計上する。これが経費を使う節税の本質です。しかしこの考え方も、来期以降にきちんと「収穫」が見込めるという前提があってこそ成り立ちます。売上の土台が読めなければ、種まきはただの浪費になりかねません。やはりここでも、安定した売上が判断の支えになります。

リピート売上が生む「好循環の三角形」

安定したリピート売上は、節税だけにとどまらない好循環を会社にもたらします。私はこれを「好循環の三角形」と呼んでいます。

まず、リピート売上が安定すると、利益の見通しが立ちます。利益が読めれば、経営セーフティ共済の掛金や種まき経費といった節税策を、計画的かつ継続的に打てるようになります。その結果、ムダなく税金を抑えられ、手元に残るお金が増えます。増えたお金は、設備投資や人材採用、さらなるリピートを生む仕組みづくりへ再投資できます。そして再投資がまた新たな安定売上を生む。こうして、売上・節税・再投資が互いを強め合う循環ができあがります。

この再投資の中でも、特に効果が大きいのが人材です。安定した利益があれば、賞与や昇給という形で従業員に報いることができ、優秀な人が定着します。人が育てば、社長が現場に張りつかなくても売上が回るようになり、社長は仕組みづくりという本来の仕事に集中できます。こうして「リピート売上 → 節税 → 人材 → さらなるリピート」という三角形が、より強く回り始めるのです。

逆に、売上が場当たり的だとこの三角形は回りません。利益が読めず、節税は後手に回り、手残りが増えないので再投資もできない。気づけば毎年同じ場所で足踏みしているという状態に陥ります。あなたの会社は、どちらの循環の中にいるでしょうか。

実践:売上を「客数 × 客単価 × リピート」で分解する

では、安定したリピート売上はどうつくるのか。出発点は、売上を3つの要素に分解して考えることです。すなわち「客数 × 客単価 × リピート(来店・購入の回数)」です。

ここで意識したいのが「穴の開いたバケツ」のたとえです。新規客という水をいくら注いでも、バケツ(既存客との関係)に穴が開いていれば、水はどんどん漏れていきます。多くの会社が新規集客にばかりお金をかけて疲弊するのは、この穴をふさがないまま水を注ぎ続けているからです。

簡単な試算をしてみましょう。客数100人、客単価1万円、年間リピート2回の会社があるとします。年間売上は「100人 × 1万円 × 2回 = 200万円」です。ここで新規客を増やさず、リピート回数を2回から3回に引き上げるだけで、売上は「100人 × 1万円 × 3回 = 300万円」になります。新規集客のコストをかけずに、売上が1.5倍になる計算です。

増えた100万円の多くは、新規獲得コストがかからないぶん利益として残りやすく、その利益が前述の節税原資になります。リピートの改善は、売上対策であると同時に、節税余力を生む経営対策でもあるのです。

「次もある」を設計でつくる

リピートは「気に入ってもらえれば自然に増える」ものではありません。意図的に設計するものです。たとえば、買って終わりにせず次回の利用につながる案内を用意する、定期的に接点を持つ仕組みをつくる、上位のサービスへ自然に進んでもらう流れを用意する。こうした一つひとつが、バケツの穴をふさぐ作業にあたります。重要なのは、ツールを導入することではなく、お客様を積み上げていく「利益製造の仕組み」を設計するという発想です。どんな販促ツールも、この仕組みがあってはじめて効果を発揮します。

取り組む際の注意点

第一に、順番を間違えないことです。
あくまで「リピートの仕組みづくりが先、節税は後」です。土台となる安定売上がないまま節税策だけを追いかけても、効果は長続きしません。

第二に、「ずらす」節税には必ず出口があることを忘れないでください。
経営セーフティ共済の掛金は支払時に損金になりますが、解約して受け取る解約手当金は、その時の益金(収益)になります。つまり課税が消えたのではなく、将来に先送りされているだけです。退職金の支給など、益金をぶつける出口をあらかじめ設計しておくことが欠かせません。

第三に、改正点への注意です。
令和6年度税制改正により、経営セーフティ共済を解約した場合、その解約の日から2年を経過する日までに再契約して支払った掛金は損金に算入できなくなりました(根拠:租税特別措置法第66条の11第2項)。短期の解約・再加入をくり返す節税は、もう通用しないとお考えください。

まとめ:節税の前に、売上の土台を固める

節税のテクニックを増やす前に、まずは毎月くり返し入ってくる安定したリピート売上という土台を固める。これが、結果として一番大きな手残りを生む近道です。安定した利益は、使える節税策の選択肢そのものを広げてくれます。

自社のリピート率はいま何回でしょうか。そして、その安定した利益を活かしきれる節税設計ができているでしょうか。

※本記事は2026年6月時点の税制にもとづいています。共済の掛金上限や要件は今後の税制改正で変更される可能性がありますので、実行前には顧問税理士に最新の取り扱いをご確認ください。

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わかお税理士
税理士(税理士登録番号:140275)、国際認証MBA(経営学修士)、ファイナンシャル・プランナー

20年以上の実務経験の中で、上場企業から中小零細企業まで100数十名の社長の経営・税務・資産形成を継続的に支援。
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