
なぜ売上が増えてもお金が残らないのか? 新規顧客獲得と節税戦略をリンクさせて考える
今回は、「売上は伸びているのに、手元にお金が残らない」というお悩みを抱えている中小企業の経営者の方に向けた記事です。
このテーマにおいて、私がお伝えしたいのは、「売上」「利益構造」「節税戦略」「新規顧客開拓」は、すべてがつながっているということです。
売上を増やすことばかりに目が行きがちですが、それだけでは会社にお金は残りません。
加えて、顧客が商品やサービスを購入する際の3ステップ(想起・比較・自己投映)を正しく理解し活用することで、より効果的な集客と、売上・利益の両立が可能になります。
1. 売上を増やしてもお金が残らない理由
まず、根本的な話をします。
中小企業の経営者がよく陥るのが、「売上さえ伸ばせば会社はうまくいく」という思考です。
でも実際には、売上が上がっても、以下のようなことが起きていませんか?
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原価や外注費、人件費も比例して増えた
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事業規模を広げたことで間接コストも増えた
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設備投資や広告費でキャッシュが流出した
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税金が思った以上にかかってしまった
その結果、「利益は出てるのに、通帳残高はスカスカ」という現象が起こります。
これを防ぐには、利益構造を見直し、計画的な節税と手元資金の確保が不可欠です。
さらに、これは単なるコストカットや節税テクニックではなく、新規開拓のプロセスにも密接に関係しているのです。
2. 「想起」の段階で有効な自己開示
想起とは、お客さまが「どこで買おうかな」と思ったときに、頭に浮かぶ選択肢に自社が入っているかどうかという話です。
ここで重要なのは、「覚えてもらう工夫」。そして、その方法として“ギャップ”の演出が効果的です。
税理士で例えれば以下のような発信です。
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「税理士ですが、昔バンドマンでした」
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「節税のプロですが、貯金はありません」
こんな投稿を繰り返していると、「なんか記憶に残る税理士」として、SNSやセミナーで見かけたときに思い出してもらえる確率が上がります。
これを御社の商品やサービスに置き換えましょう。
例えば、ある商品を提案するとき、
「こんなにすごいんですよ!」と押すよりも、
「実はこういう苦労がありましたが、ようやくここまで来ました」と伝えることで、強み+自己開示=売りに変わります。
そしてこれは、単なるPRではありません。
この“想起”のタイミングで記憶に残れば、競合との価格競争に巻き込まれずに済む=利益が守られるのです。
3. 「比較」の段階で共感と信頼を生むストーリーへ
お客様の頭の中でいくつかの選択肢が浮かんだあと、次に起きるのが「比較」です。
このとき、多くの経営者がついやってしまうのが「うちは他より安い」「早い」「便利」といった打ち出し方。
でも、これだけだと価格競争に巻き込まれ、結果的に利益が削られます。
しかも、そういうお客様は「もっと安いところ」を見つけたら、すぐに離れていってしまうことも多いのです。
では、どうしたらいいか?
それは、共感で選ばれる会社になることです。
今のお客様は、「誰から買うか」「どんな想いの会社なのか」を重視しています。
商品やサービスに対する価値観や姿勢に共感できるかどうかが、判断基準になってきているのです。
商品そのものに差がない時代だからこそ、「会社の想い」「苦労と工夫のストーリー」が、信頼をつくります。
たとえば、次のような話はどうでしょうか。
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地元で30年商売を続けてきた理由
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苦しい時期に社員と乗り越えたエピソード
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社員の家族のために整えた働きやすい環境
これらは、どんな広告コピーよりも人の心を動かします。
4. 「自己投映」=未来のお金の流れを見せる
そして最後の段階が、「自己投映」。
これは、お客さまが商品やサービスを買った後の未来をイメージできるかどうかです。
多くの企業がここをサボります。
でも実はここが、購入率・受注率を最も左右するポイントです。
たとえば私が節税提案をするときには、次のことを伝えます。
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いつ、どれくらい税金が減るのか?
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手元にいくら現金が残るのか?
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その分をどんな目的に使えるのか?
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その後、利益はどう積み上がっていくのか?
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解約や見直しの柔軟性はあるのか?
節税策を実行した後の未来を見せることで、お客さまは「なるほど、そういう未来が待ってるんだな」と安心します。
御社のビジネスにも、「その商品を買ったら、どういう未来が得られるのか」をきちんと設計・提示することが求められます。
これは節税と同じです。
節税は、単に税金を減らすことではなく、未来のお金の流れをデザインすることです。
この未来のイメージが湧けば湧くほど、人は前向きに意思決定できます。
逆に、不安が残っているうちは、いくら魅力的な提案でも動いてくれません。
5. 売上ではなく「お金が残る仕組み」を設計する
ここまでを整理すると、
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想起:覚えてもらう仕掛け(ギャップ・継続発信)
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比較:価格よりも共感を重視したストーリー設計
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自己投映:購入後の未来を具体的に見せる
これら3つを磨けば、単価を下げなくても選ばれるようになり、結果として利益が残ります。
さらに、その利益に対しては、「お金を残す」ことを目的とした節税戦略が必要です。
私がご提案する節税の考え方は、次の3点です。
(1)タイミングをデザインする
税金がかかるタイミングをズラすだけで、手元資金は大きく変わります。
(2)利益配分を工夫する
利益を誰に配分するかによって、またはどうやって配分するかによって納税額は変わります。
(3)節税策は「ストーリー」で考える
中小企業投資促進税制や役員退職金制度などは、単体で考えるのではなく、会社や経営者の未来とリンクさせて設計することで、より満足感のある節税策にすることができます。
6. まとめ:まずは「未来を見せる資料」を作ることから始めましょう
このように、節税と新規開拓は、まったく別物のように見えて、お金を増やすという目的の元で深くつながっています。
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覚えてもらう情報発信(想起)
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価格ではなく共感で選ばれる仕掛け(比較)
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購入後の未来を可視化するシナリオ設計(自己投映)
そして、そこから得た利益を守り、増やすのが節税戦略です。
中小企業がこのプロセスを回していくには、短期的なテクニックではなく、中期スパンでの仕組み化が必要です。
まずは、御社の商品やサービスについて、
「これを買ったら、どんな未来が手に入るのか?」
を言語化・資料化することから始めましょう。
そして、その資料を作る過程で、御社の利益構造も見えてきます。
そこに、会社にお金を残すための節税戦略をセットで組み込むことで、「売上が増えてもお金が残らない状態」から、抜け出すことができます。