
売上が増えてもお金が残らない…その原因は、節税の仕方が間違っているから?
中小企業の経営者の方々から、よくこんなお悩みを聞きます。
「売上は伸びてるのに、なぜか手元にお金が残らない」
この悩み、実はとても多いです。
一見、黒字経営でも、通帳の残高が増えない。頑張って売って働いても、現金がない。そこには「利益の構造」と「節税の戦略」に原因があります。
今日は、融資を受けやすくなる財務改善の考え方とあわせて、「どうやって利益を残し、節税をしながら会社にお金を残すか」について、税理士の視点から分かりやすく解説します。
1. 売上が増えても手元にお金が残らない理由
「利益が出ていない」からではありません。
たいていの場合、利益は出ています。でも、「お金」が残らない。
その主な理由は次の通りです。
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売掛金(ツケ)の増加:売っても現金がすぐ入らない
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過剰在庫:売れ残りにお金が寝ている
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設備投資:減価償却でしか経費化されず、現金は先に出ていく
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借入金の返済:元金部分は経費にならないのに、現金は出ていく
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法人税の支払い:利益に対してドンと課税される
つまり、「黒字でも現金不足」というのは、当たり前の構造なんです。
2. 財務体質を強くする第一歩は、"お金を残す"こと
会社の体力=手元資金です。
経営の選択肢も、融資の可能性も、最終的には「いま現金があるかどうか」で決まります。
まず目指すべきは、月商3か月分の現金を持つこと。これができれば、資金繰りの不安が一気に減ります。
そのために必要なのが、
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利益をしっかり確保すること
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無駄な節税をしないこと
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銀行から適正な融資を受けること
3. 税金を減らしすぎると、かえってお金が残らない?
節税というと、
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保険に入る
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車を買う
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社員旅行に行く
というように、「利益を減らす=税金を減らす」方法が一般的です。
ですが、ここに落とし穴があります。
税金は減るけど、現金も減っているということです。
特に、保険や高額備品などは、現金が大きく減ります。
税金を抑えても、通帳にお金がなければ意味がありません。
節税の目的は、「税金を減らすこと」ではなく、「会社にお金を残すこと」。これを忘れてはいけません。
4. 正しい節税戦略とは?
私がおすすめするのは、以下の3ステップです。
ステップ1:利益の可視化
まず、「利益がいくら出ていて、税金がどれくらいかかりそうか」を月次で見える化すること。
税理士に任せきりにせず、自社で「今月はこれくらい儲かってる」という感覚を持つことが重要です。
ステップ2:意味のある節税を選ぶ
利益が出そうな年は、
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設備投資(生産性UPや業務効率化)
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教育・研修・福利厚生(社員のモチベーションUP)
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退職金の積立(役員の将来資金)
など、「将来の利益や安心」に繋がる支出を選びましょう。
"使い切る"のではなく、"投資する"という発想がカギです。
ステップ3:融資と節税のバランス
融資を受けたいなら、「利益が出ている」ことを決算で示す必要があります。
節税しすぎて赤字になれば、融資は通りません。
逆に、適正な利益を出して節税しつつ、決算書の見栄えを良くすることで、銀行からの信頼が高まります。
決算書で特に見られるのは、
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営業利益、経常利益が黒字か
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現預金がどれくらいあるか
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借入金が減っているか
です。
利益を確保してこそ、財務改善が進み、融資も受けやすくなります。
5. 節税と財務改善を両立させる具体策
では、どうすれば節税と財務改善を両立できるか?
具体的な方法を紹介します。
1. 減価償却の計画的活用
減価償却費は、現金を出さずに計上できる経費です。
「今年は利益が出そう」という年は、可能な範囲で多めに償却して税金を抑える。
逆に利益が減りそうなら、償却を最小限にして利益を維持する。
税金と利益のバランスを自社でコントロールするイメージです。
2. 借入金とキャッシュの使い分け
節税とキャッシュ確保の両立のためには、借入を活用することも大事です。
例えば、必要な投資は借入で行い、手元資金は運転資金として確保しておく。
銀行評価も高まり、いざという時の備えにもなります。
3. 納税予測とキャッシュフロー計画
決算2〜3か月前には、「税金がいくらになるか」を試算して、
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納税に備える
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節税余地を見極める
といった準備を行いましょう。
「納税してもお金が残る状態」を計画することが重要です。
6. 税理士と連携して「会社にお金が残る経営」へ
節税の知識だけでは、会社にお金は残りません。
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数字の見える化
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財務改善の視点
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銀行とのつきあい方
この3つを総合的に見られる税理士と組むことで、売上が伸びても「通帳にお金が増えない」という悩みから卒業できます。
まとめ:節税は「お金を残す」ための手段にすぎない
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売上が上がってもお金が残らないのは、利益構造と資金の流れが見えていないから。
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節税は単なるコストカットではなく、未来に繋がる投資にすべき。
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銀行評価を高め、融資を受けやすくするには、決算書の見栄えと財務体質がカギ。
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月次での数字管理と納税予測で、経営にゆとりが生まれる。
大切なのは、「税金を減らす」ではなく、「会社にお金を残す」ことです。
節税はそのための一つの方法にすぎません。