
「節税」と「リピート売上戦略」は両立できるのか?
― 顧客心理と脳のメカニズムから考える、利益最大化の新常識 ―
「節税」と「売上アップ」は、経営者にとってしばしば相反するテーマとして捉えられがちです。
節税に注力すれば投資が控えめになり、売上を増やそうとしても利益が残らない。このようなジレンマに頭を悩ませている方は少なくありません。しかし、そもそも“新規顧客の獲得”を前提とした経営モデル自体が、売上と節税を対立させてしまっているのです。
事業を本質的に安定させる鍵は、「リピート(再購入)」の仕組みをつくることです。
ここで提唱するのは、「リピート戦略 × 節税」という視点での経営再設計です。これは表面的なノウハウではなく、人間の脳と感情メカニズムに基づいた構造的アプローチと言えます。
「節税」は目的ではなく、未来への武器です
多くの企業が「節税=支出を増やすこと」と誤解しています。
法人カードで無理に経費を作ったり、高額な備品や交際費で帳尻を合わせようとしたりするケースもあります。しかし、それらの支出が売上につながらなければ、ただの浪費に過ぎません。
本来、節税とは「利益の使い道を未来の売上に変える戦略」であるべきです。つまり、将来の利益を生み出す“布石”として、合法的に経費を使うことが前提になります。
この視点で有効なのが、「リピートの仕組み化」なのです。
リピートの仕組みに使うお金は、節税と売上の両方に効きます
リピート率を高める取り組みには、明確な投資対象があります。しかも、それらの多くは事業上必要な支出であると同時に、節税にもつながります。
▶ 1. 「異経験リピート」を狙うギフト戦略
同じ商品でも、顧客が別の目的で再購入することがあります。たとえば、自分用に買ったワインを、次は贈り物として購入するようなケースです。
こうした異なる目的でのリピートを促すために、ギフト用のパッケージ開発や紹介キャンペーン、SNS連携などの施策を行えば、広告宣伝費や販売促進費として計上することが可能です。
単なる販促ではなく、リピートを増やす“設計”として機能するのがポイントです。
▶ 2. 「時系列リピート」を設計して先手を打つ
「この商品を買った人は、次に何が欲しくなるか」をあらかじめ考え、準備しておくことが重要です。
たとえば、
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コンサルティングサービスの契約後に「補助金申請サポート」や「採用支援パッケージ」を案内する
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飲食業で「顧客限定のイベント」や「体験型ギフト」を追加する
こうした連携商品やサービスは、開発費・研修費・販促費などとして適切に経費化できます。顧客にとっては自然な流れで再購入する理由ができ、企業にとっては安定収益の土台になります。
節税で「顧客満足の体験」を買いましょう
リピートの前提には「顧客満足」があります。ただし、「欲しかったものが手に入った」だけでは、本当の満足にはつながりません。
お客様が満足を感じるのは、「この人に頼んで良かった」と感情的に納得したときです。つまり、お客様の「こうなりたい」「こうありたい」という願望に寄り添った体験を提供することが必要です。
この体験設計にかけるコストもまた、節税の対象になります。
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スタッフのヒアリング力を鍛える研修
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パーソナルな手紙やメッセージツールの制作
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顧客との関係性を深めるツールや演出
こうした支出は、単なるサービス提供ではなく、「関係性の価値」を高めるための投資として活用できます。
社内の空気を整えることも節税の一部です
見落とされがちですが、リピート率の高い会社ほど、従業員の離職率が低い傾向があります。
その理由は明快です。長く通ってくれるお客様から「ありがとう」と言われる経験は、スタッフの承認欲求を満たし、仕事にやりがいを感じさせるからです。
こうした組織づくりにも、節税資金を有効に使うことができます。
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社内表彰制度の導入(福利厚生費)
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顧客との交流イベント(交際費)
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スタッフ向けの教育やメンタルケア(研修費)
節税を“税金を減らす作業”と考えるのではなく、“職場のエネルギーを整える投資”と捉えることで、結果的にパフォーマンスの高い組織が生まれます。
新規獲得は「最後」で良い
多くの経営者が、新規顧客の獲得に時間とお金をかけすぎています。確かに、新規獲得は「目に見えて効果が出やすい」ため、取り組みやすい側面があります。
しかし、リピートの仕組みが整っていない状態で新規を増やすのは、「穴の開いたバケツに水を注ぐ」ようなものです。
むしろ、既存顧客との関係性を深め、リピート率を高めた方が、圧倒的に効率的です。信頼関係が築かれた顧客は、自ら進んで紹介者になってくれるからです。
「節税資金」は、バケツに蓋をするために使いましょう
売上は、「客数 × 客単価 × リピート率」で構成されます。
この中で、最も安定性をもたらすのは「リピート率」です。
節税によって得た資金を、新規集客ではなく「既存顧客を手放さない仕組み」に投資することで、売上も利益も自然と積み上がっていきます。
節税は単なる守りだけではありません。
顧客の感情と心理に寄り添い、信頼を積み上げていくための攻めの道具でもあります。