
「値決め」と「利益構造」で節税はほぼ決まる:ひとり社長のための現実的な経営戦略
「これだけ売上があるのに、手元にお金が全然残らない…」
「節税といっても、何をどうすればいいのかわからない」
こういったお悩みを抱えている方は少なくありません。とくに、小さな会社やひとり社長の場合、売上はしっかりあるのに、なぜか資金繰りにいつも不安を感じる。そんな状況に陥りがちです。
その原因は、税金が高いからではなく、「値決め」と「利益構造」の設計に問題がある可能性があります。
「値決めは経営そのものである」という考え方は、節税にも深く関係しています。
今回は、「どんなビジネスモデルで、どう値決めを行うか」によって、手元資金を厚くし、無理なく節税し、長く稼げる仕組みを作る方法について解説していきます。
値決めは「誰と付き合うか」を決めること
価格とは、ただの数字ではありません。どのような人と、どのような関係で仕事をしていきたいかという「経営者としての意思表示」なのです。
たとえば、月に100個売れている商品があるとしましょう。それを150個売って1.5倍の売上を目指すより、単価を1.5倍にして100個売る方が、手間もコストも少なく済みます。利益率が上がり、税引き後に手元に残る金額も増える可能性が高いです。
しかも、価格を上げることでお客様の層が変わっていきます。価格にシビアな顧客よりも、「価値」を重視してくれる方と出会えるようになります。
ビジネスモデルによって節税の「勝ち筋」は変わります
ビジネスのやり方によって、得られる利益の性質も、節税方法も変わってきます。ここでは、8つのビジネスモデルごとに、節税の観点から注意すべき点と改善策を整理します。
1. 仕入れ販売モデル:在庫は節税の敵になります
商品の仕入れにお金をかけたとしても、売れ残って在庫になってしまうと、その分は経費として認められません。
そのため、年末に大量に仕入れて節税しようとしても、在庫が残っていれば逆効果になる可能性があります。
→ 対策:在庫を持たない受注生産・予約販売にする、支払い条件を改善してキャッシュアウトを減らす
2. 製造販売モデル:価値に応じて自由に値決めできます
自分で作って売る商品(ハンドメイド・デジタル商材など)は、原価が低く利益率が高くなりやすいため、税金も多く発生しがちです。
ですが、逆にいえば「価値を正当に見積もって価格を上げやすい」モデルでもあります。
→ 対策:価格を見直して粗利を増やしつつ、設備投資や制作委託などで適切に経費を使いましょう
3. 仲介・紹介手数料モデル:売上=利益になりやすいモデルです
仲介型は原価がかからず利益率が高いため、放っておくと課税所得が大きくなります。
→ 対策:外注スタッフの手配・移動費・営業活動費などをしっかり経費計上/顧客と長期契約を結んで売上の分散も図りましょう
4. 請負型モデル:売上タイミングを設計しましょう
成果物納品後に一括請求をしていると、売上が一度に集中し、節税しにくくなります。
→ 対策:部分的に仕事が完了した都度請求するよう契約を設計し、売上の期を分散する工夫をしましょう
5. 利用料・サブスク型モデル:安定収益でも油断は禁物です
毎月の定額収入がある分、利益が積み上がってしまい、節税対策を怠ると手元資金が減っていきます。
→ 対策:定期的な設備投資や新サービス開発で経費を上手に発生させる/顧客満足のための支出を「未来の経費」と捉えましょう
6. 広告料モデル:早めに法人化を検討すべきモデルです
アクセスや影響力がある人は広告収入が得られますが、個人のままだと雑所得扱いになり、経費処理が難しくなる場合があります。
→ 対策:法人化を検討し、撮影機材・編集ツールなどの支出を経費化して節税効果を高めましょう
7. 会費・コミュニティモデル:つながりが利益と節税の鍵です
安定的な収入が得られる一方で、支出を怠ると利益が残りすぎてしまいます。
→ 対策:オフ会・イベント・講師招待など、会員向け価値提供に伴う支出をしっかり発生させる/コミュニティ運営スタッフも経費対象に
節税は「数字の操作」ではなく「仕組みの設計」です
節税と聞くと、「経費を増やせばいい」「売上を抑えればいい」といった短絡的な発想になりがちです。
ですが、そうではありません。どんなお客様に、どんな価値を、どんな価格で、どんな方法で提供するかという、ビジネスの設計そのものが、節税に直結するのです。
たとえば、
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値決めを見直すことで、売上と利益を同時に増やすことができます。
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ビジネスモデルを変えることで、自然と経費が発生し、結果的に節税になります。
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顧客層を変えれば、サポートやサービスコストも抑えられます。
まとめ:あなたの値決めが、事業と税金の未来を決めます
節税とは、単なる税金対策ではありません。
どんなビジネスを、どう育てていくか。その設計を問い直すことが、最大の節税策なのです。
「節税は税理士に任せればいい」と考えるのではなく、「自分のビジネスモデルをどう磨くか」を考えることが、ひとり社長にとって一番重要です。
そしてその第一歩が、「値決め」です。