その節税、会社のお金を減らしていませんか?正しい節税の順番とは

日々、社長からご相談を受ける中で、私がずっと気になっていることがあります。
それは、節税の手法をごちゃ混ぜにして考えている方が非常に多いということです。
社用車も欲しい、倒産防止共済も気になる、なんだか凄い保険にも入りたい……。
このように、あれもこれもと手当たり次第に節税策へ手を出そうとすると、効果が薄まるばかりか、資金繰りがショートする原因になりかねません。
実はこうした失敗には、ある共通点があります。
それは、節税の型を理解していないことです。
世の中には無数の節税テクニックが存在しますが、それらには明確な3つの型があります。
この型を理解し、正しい順番で取り組むことこそが、失敗しない節税の鉄則といえるでしょう。
特にひとり社長や中小企業経営者の方にとって、この分類を知っているかどうかで、手元に残るお金の額は数百万円、場合によっては数千万円単位で変わってきます。
節税には3つの型がある
私は、世の中に存在する節税テクニックを、その性質によって以下の3つに分類しています。
第1の型:制度を使う節税(基本のキ)
第2の型:経費を使う節税(投資と消費)
第3の型:テクニックを使う節税(利益のズラし)
これらは、リスクの低さと実行のしやすさの順に並んでいます。
多くの社長が節税で失敗するのは、最も重要な第1の型である制度を飛ばして、いきなり第2の型の経費や第3の型のテクニックに手を出してしまうからです。
それぞれの型の特徴を、順番に見ていきましょう。
第1の型:制度を使う節税(まず最初に取り組むべきもの)
これは、国税庁が認めている制度を活用する方法です。
この型の特徴は3つあります。
まず、リスクが低いこと。
次に、キャッシュアウト、つまり現金の流出が少ないこと。
そして、適用するだけで効果が出ることです。
具体的には、以下のようなものが該当します。
中小企業投資促進税制による特別償却や税額控除
中小企業経営強化税制による即時償却や税額控除
賃上げ促進税制による税額控除
少額減価償却資産の特例による30万円未満の備品の一括経費化
役員社宅規程の整備
出張旅費規程の整備
これらは国が認めているものですから、税務調査で否認されるリスクが低いといえます。
要件さえ満たせば、安心して活用できるでしょう。
しかも、社宅規程や旅費規程のように、会社から個人へお金を移転しつつ、会社の税金を減らし、さらに個人も税負担なしで受け取れるという、まるで魔法のような効果を持つものもあります。
あなたの会社では、これらの制度をすべて活用できていますか?
知っているか知らないか。
そして、面倒くさがらずに規程を作ったかどうか。
たったそれだけの差で、年間数十万円から数百万円の違いが生まれます。
すべての会社が最優先で取り組むべきなのが、この制度を使った節税です。
第2の型:経費を使う節税(成長への投資として考える)
これは、利益が出そうなときに必要なモノやサービスを購入して経費を増やし、税金を減らす方法です。
おそらく、節税と聞いて最も多くの方がイメージするのが、この型ではないでしょうか。
この型の特徴は、キャッシュアウトを伴うという点です。
そのため、投資効果の見極めが欠かせません。
具体的には、以下のようなものが該当します。
広告宣伝費、人材採用費や教育研修費、決算賞与の支給、消耗品や備品の購入、接待交際費
ここで重要なのは、将来の利益につながるかという視点です。
第1の型である制度を使う節税と違い、この型では確実にお金が出ていきます。
税金(約30%)を減らすために、経費(100%)を使うわけですから、単純計算ではお金は減ることになります。
したがって、この型の節税を行う際の判断基準は、将来のリターンが期待できる種まきであるかどうかという点に尽きます。
来期の売上を作るための広告費や、従業員のモチベーションを上げて生産性を高めるための決算賞与などは、効果的に使えば良い節税といえるでしょう。
一方で、単なる見栄のための高級車や、必要性が低い備品の購入などは、キャッシュを減らすだけの悪い節税になりかねません。
経費を使う前に、一度立ち止まって考えてみてください。
その支出は、本当に会社の未来につながるものでしょうか。
第3の型:テクニックを使う節税(シミュレーションが必須)
これは、法律の仕組みを複雑に組み合わせて、利益の発生時期や帰属先を操作する方法です。
この型の特徴は、難易度が高いこと、リスクが伴う場合があることです。
具体的には、以下のようなものが該当します。
経営セーフティ共済(倒産防止共済)、オペレーティング・リース(航空機やコンテナへの出資)、法人保険(解約返戻金のピークを活用したもの)、分社化による利益分散、決算期の変更
これらは、今期出すぎた利益を赤字になりそうな数年後に飛ばす時間のズラしや、法人税の高い会社から税率の低い親族へ所得を移す人のズラしといったワザです。
強力な効果を持ちますが、出口戦略を間違えると大火傷することになります。
たとえば、保険やリースで数千万円を経費にしたはいいものの、解約してお金が戻ってきたときにどうするかまで設計しておかないと、結局そこで課税されてしまいます。
これでは単なる課税の繰り延べ、つまり先送りにしかなりません。
また、この型の手法は税制改正のターゲットになりやすく、数年前はOKだった方法が今はNGというケースも頻繁に起こります。
安易に手を出すと税務署に目をつけられたり、資金が長期間ロックされて身動きが取れなくなったりするリスクがあるため、慎重な判断が求められます。
失敗しないための正しい順序とは
節税で失敗しないためには、この3つの型に取り組む順番が大切です。
まずは制度を徹底的に使い倒すこと。これがベース作りになります。
次に、事業成長に必要な経費への投資を検討すること。これが成長エンジンです。
そして、最後にテクニックを検討すること。
多くの失敗事例は、この順番が逆転していることに原因があります。
社内規程も整備していない、つまり制度を使っていないのに、いきなり保険というテクニックに入ろうとする。
来期の利益につながる見込みもないのに、高級車という浪費的な経費を買ってしまう。
こうした行動が、会社の資金繰りを圧迫していくことになります。
役員報酬の設定は適切でしょうか。
社宅扱いにできる家賃はないでしょうか。
出張手当は支給しているでしょうか。
少額資産の特例は活用したでしょうか。
これらを一つひとつチェックするだけで、無理にお金を使わなくても、驚くほど税金はコントロールできるようになります。


