決算前に焦って経費を使っていませんか?税理士が伝えたい「お金が残る節税」の考え方

日々、多くの中小企業の経営者の方とお話しする機会がありますが、決算が近づくとこんなご相談をいただくことが増えます。

「先生、今期は思ったより利益が出そうで…。何か良い節税の方法はありませんか?」

そのお気持ちは、本当によくわかります。
朝から晩まで働いて、リスクを取りながらようやく生み出した利益です。
そこから何割もの税金を持っていかれるのは、どうしても納得しづらいものでしょう。
私自身、経営者の方々の苦労を間近で見ているからこそ、その感情は理解できます。

ただ、長年この仕事を続けてきた中で、少し気になることがあります。

節税に熱心な会社ほど、なぜか手元にお金が残っていないケースが多いということです。

一方で、着実に会社を成長させている経営者の方々は、節税に対する考え方が少し違うように感じます。

今回は、多くの方が陥りがちな節税の落とし穴と、本当の意味でお金を残すための考え方について、税理士としてお伝えしたいと思います。

目次

決算前の「駆け込み経費」に潜む落とし穴

まず、よくあるケースです。

決算の2〜3ヶ月前、予想以上に利益が出そうだとわかったとします。
「このままでは数百万円の納税になってしまう…」と焦り、急いで社用車を購入したり、まとめて備品を買い込んだり、取引先との会食を増やしたりする。
心当たりのある方もいらっしゃるかもしれません。

「これで経費ができた。税金が減ってよかった」と、ひとまず安心されるでしょう。

でも、これは本当に「よかった」と言えるのでしょうか。

ここで、具体的な数字で考えてみましょう。
日本の中小企業の法人税実効税率は、おおよそ30%程度です。
つまり、100万円の利益が出た場合、そのまま何もしなければ約30万円の税金を払い、手元には70万円の現金が残ります。

一方で、税金を払いたくないからと100万円を使って経費を作ったとします。
利益がゼロになれば、法人税もゼロになりますから、確かに30万円の税金を払わずに済みました。

しかし、通帳の残高はどうなっているでしょうか。100万円を使ってしまったので、手元に残る現金はゼロです。

何もしない場合は、手元に70万円が残ります。
経費を使って節税した場合は、手元に残る現金はゼロです。

これが、「節税貧乏」と呼ばれる状態の正体です。
目先の30万円の税金を惜しむあまり、70万円という大切な資金を手放してしまっているわけです。

「いやいや、車や備品という資産が残るじゃないか」という声もあるでしょう。
確かにその通りです。
ただ、その車は本当に今すぐ必要だったでしょうか。その備品は、税金のことがなくても買う予定だったものでしょうか。

もし「税金を減らすため」という動機がなければ買わなかったものであれば、それは投資ではなく、浪費に近いものかもしれません。

資金繰りと銀行評価への影響

節税を優先しすぎることの影響は、手元資金が減るだけではありません。

決算書の利益を意図的に圧縮し続けると、銀行からの評価にも響いてきます。
融資を受けたいときに「この会社は利益が出ていない」と判断されれば、必要な資金を調達できなくなる可能性があります。

過度な節税策を続けた結果、決算書が赤字続きになり、いざというときに融資が受けられなくなってしまった会社が過去にはありました。
売上はあるのに、資金が回らなくなってしまうケースです。

逆に、適切に納税を行い、健全な決算書を維持していた会社は、コロナ禍のような予測不能な危機でもスムーズに融資を受けることができました。
結果として、ピンチを乗り越えるどころか、その後の成長につなげた経営者もいらっしゃいます。

節税には、何らかの副作用がつきものです。
手元の現金が減る、銀行評価が下がる、税務リスクが高まる。
こうした側面を理解した上で判断することが大切です。

お金が残る会社の経営者は、節税をどう考えているのか

では、着実に資産を増やし、事業を拡大している経営者の方々は、節税をどのように捉えているのでしょうか。

私が見てきた限り、彼らにとっての節税とは、単に税金の額を減らすことではありません。
会社と個人の手元に残る現金を最大化するための手段として位置づけています。

彼らは「税金を払いたくない」という感情で動くのではなく、「この判断をしたら、最終的に通帳の残高は増えるのか、減るのか」という視点で考えています。
いわば、投資対効果の観点から冷静に判断しています。

たとえば、同じ100万円を使うとしても、考え方が異なります。

「この100万円を広告費に使えば、来期は300万円の売上増が見込める。今期の税金が30万円減って、来期の売上増で現金が増える。だから今期のうちに先行投資しよう」

あるいは、「従業員の研修に100万円を使おう。サービスの質が上がれば単価アップにつながる。これは未来への投資になる」

このように、将来のリターンが見込める支出であれば、それは価値のある経費になります。
税金というコストを減らすことが目的ではなく、税金をコントロールしながら会社の成長スピードを上げることが目的になっています。

情報に振り回されず、税理士と一緒に考える

インターネットやSNSには、さまざまな節税情報が溢れています。
「この方法なら大幅に節税できる」といった、魅力的な言葉も目にするでしょう。

しかし、はっきり申し上げると、リスクなしで劇的に税金が減る魔法のような方法は存在しません。
もしそのような話があれば、それは違法な脱税か、かなりリスクの高いグレーゾーンの手法である可能性が高いです。

断片的な情報をもとに「ネットで見たこの方法をやりたい」と実行してしまうと、後から税務調査で否認されたり、思わぬ形で資金繰りが悪化したりするケースも少なくありません。

一方で、お金を残している経営者の方々は、情報を鵜呑みにせず、税理士を経営のパートナーとして活用しています。

「今期の利益はこれくらいになりそうだ。来期以降はこういう展開を考えている。そのために、今できる最も効果的で安全な方法は何か、一緒に考えてほしい」

こんなふうに相談してくださると、税理士としても具体的な提案がしやすくなります。
会社のビジョンや資金状況を共有していただければ、「それなら今は無理に経費を使わず、しっかり納税して銀行評価を上げておきましょう。そのほうが、来期の大型投資のときに有利です」といった戦略的なアドバイスもできるようになります。

税理士を単なる記帳や申告の代行業者としてではなく、経営の相談相手として活用していただければ、節税の質は大きく変わってくるはずです。

節税と成長のバランスを考える

会社経営において最も大切なことは、事業を継続することです。
そして、会社を継続させるために欠かせないのが現金です。

節税は、この大切な現金を無駄に流出させないための手段の一つに過ぎません。
節税にこだわりすぎて、肝心の事業や成長投資がおろそかになってしまっては本末転倒でしょう。

車にたとえるなら、節税はエンジンオイルの交換やタイヤの点検のようなメンテナンス作業です。
大切なことではありますが、メンテナンスばかりに気を取られて、目的地に向かって走ることを忘れてしまっては意味がありません。

あなたの会社にとって、今一番大切なことは何でしょうか。
目先の税金を減らすことでしょうか。それとも、将来の成長に向けて体力をつけることでしょうか。

この問いに対する答えは、会社の状況やフェーズによって異なります。
だからこそ、自社の現状を正しく把握し、優先順位をつけて判断することが重要になってきます。

今日からできる3つのこと

最後に、今日から意識していただきたいことを3つお伝えします。

1つ目は、言葉を変えることです。
「税金を減らしたい」という表現を、「手元の現金を最大化したい」と言い換えてみてください。
言葉が変わると、選ぶべき選択肢も自然と変わってきます。

2つ目は、経費を使うときに自問することです。
その支出は、将来的に利益を生み出す投資でしょうか。
それとも、税金を減らすためだけの浪費でしょうか。
もし後者であれば、素直に税金を払ったほうが、結果的に会社は強くなります。

3つ目は、税理士にビジョンを伝えることです。
次回の打ち合わせでは、領収書を渡すだけでなく、「来年はこういうことをしたい」「3年後にはこうなっていたい」という話をしてみてください。
そこから、あなたの会社に合ったオーダーメイドの節税戦略が生まれます。

節税は、正しく活用すれば会社の成長を後押しする強力な武器になります。
しかし、使い方を誤れば、自らの首を絞める結果にもなりかねません。

どうか、ネット上の情報に振り回されず、感情的な判断を避け、冷静な経営判断として節税と向き合ってください。
それが、あなたの会社を長く続く強い会社にするための第一歩になるはずです。

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わかお税理士
税理士(税理士登録番号:140275)、国際認証MBA(経営学修士)、ファイナンシャル・プランナー

20年以上の実務経験の中で、上場企業から中小零細企業まで100数十名の社長の経営・税務・資産形成を継続的に支援。
もっと会社にお金を残したい社長へ。利益最大化と合理的節税で通帳残高を増やす、ご機嫌な未来志向の経営をサポートしています

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