資本金を1万円多くしただけで税金が数百万円増える? 会社設立前に知っておきたい3つの落とし穴

「よし、個人事業も軌道に乗ってきたし、そろそろ法人化しよう!」
「新しいビジネスのために、会社を立ち上げよう!」

そう決意して、ワクワクしながら社名を考え、司法書士や設立代行業者に連絡する。
そして登記が完了した後に、私のもとを訪れてこうおっしゃいます。

「会社を作りました! これから税金対策、よろしくお願いします!」

この瞬間、私は心の中で少しだけ焦ることがあります。

なぜかと言うと、節税は会社を設立する前にすでに始まっているからです。

資本金をいくらにするか。決算月を何月にするか。株主を誰にするか。
これらは単なる書類上の項目ではなく、将来支払う税金の額を数百万円単位で左右することもある戦略的な判断です。

今回は、これから会社を作ろうとしているあなたが、スタートラインでつまずかないために知っておくべき会社の設計の話をお伝えします。

目次

資本金1000万円の壁を知っていますか

会社を作るとき、必ず決めなければならないのが資本金の額です。

「取引先への信用が大事だから、1000万円にしておこう」
「とりあえずキリのいい100万円でいいか」

こんなふうに、なんとなくで決めてしまう方が実は多いですが、ここには明確なボーダーラインがあります。
それが1000万円という数字です。

結論から言います。
節税を重視するなら、資本金は1000万円未満、つまり999万円以下に設定してください。

理由は消費税にあります。
資本金が1000万円未満であれば、設立してから最初の1期目は消費税の納税義務が免除される可能性が高くなります。
条件次第では2期目も免除されます(インボイス制度の登録状況による部分はありますが、この判定自体は今も有効です)。

ところが、資本金を1000万円以上に設定してしまうと、設立した初年度から問答無用で消費税の納税義務が発生します。

具体的に考えてみましょう。
初年度の売上が5000万円だった場合、簡易課税や業種にもよりますが、ざっくり数百万円規模の消費税が発生する可能性があります。
つまり、資本金をたった1万円多く設定しただけで、数百万円の税金を払う結果になりかねません。
これが税法の怖いところです。

さらに、資本金が小さいことには別のメリットもあります。
法人住民税の均等割という、赤字であっても毎年必ず支払わなければならない税金がありますが、この金額も資本金が1000万円を超えると高くなる自治体が多くなっています。

迷ったら、まずは小さく始めて、必要になった時点で増資する。
これが賢いスタートの切り方です。

決算月の決め方ひとつで手元に残るお金が変わります

次に悩みやすいのが決算月の設定です。

「日本の年度末だし3月にしようかな」
「個人の確定申告と同じ12月が楽そうだな」

こうした理由で決めてしまう方も少なくありません。
しかし決算月をどこに置くかは、想像以上に大きな影響があります。

設立時に決算月を選ぶ際、意識していただきたい視点は2つあります。

消費税の免税期間をできるだけ長くする

消費税の新規設立に伴う免税メリット(またはインボイスの2割特例など)を受けられるのは、最大で2期間です。
ここで気をつけたいのは、2年間ではなく2期であるという点です。

たとえば1月に会社を設立して、決算月を2月にしたとしましょう。
すると第1期は1月から2月のわずか約2か月間です。
第2期は3月から翌年2月の12か月間です。
合計しても免税期間は約14か月にしかなりません。

一方で、1月に設立して決算月を12月にした場合はどうでしょうか。
第1期は1月から12月の約12か月間。第2期は翌年1月から12月の12か月間です。
合計で約24か月間、免税のメリットをフルに活かせます。

このように、設立月からなるべく遠い月を決算月に設定するのが、設立当初のセオリーのひとつになります。

資金繰りと繁忙期のバランスを考える

もうひとつ大切な視点が、キャッシュフローとの兼ね合いです。

決算月から2か月後には、法人税や消費税の申告と納税が待っています。
1年で一番お金が少ない時期に、大きな納税のタイミングが重なったらどうなるでしょうか。
最悪の場合、帳簿上は黒字なのに資金がショートする、いわゆる黒字倒産のリスクが高まります。

売上の入金時期にズレはないか。
繁忙期で手一杯の時期に、決算作業の負担が重なっていないか。
こうした点を考慮して、お金にも時間にも比較的ゆとりがある時期の2か月前を決算月にするのがおすすめです。

将来を左右する株主構成という設計図

そして、設立時の判断の中で最も取り返しがつきにくいのが、誰が株を持つかという株主構成の問題です。
株主構成ひとつで、将来の納税額が大きく変わるという事実を、意外と多くの社長さんがご存じありません。

「とりあえず自分が100%持っておけばいいでしょう」

もちろん、これが一番シンプルな形ではあります。
しかし、将来会社が成長していった時に、節税の選択肢が狭まる可能性があることは覚えておいてください。

家族を株主に入れるかどうかで未来が変わります

たとえば、将来的に配当金を出して節税したいと考えたとしましょう。
社長が100%の株を持っている場合、配当はすべて社長個人に入ります。総合課税であれば、もともと高い所得にさらに配当が上乗せされ、税率が跳ね上がるだけです。

一方で、所得がない、あるいは低い配偶者やお子さんが株を持っていた場合はどうでしょうか。配当金を家族に分散させることで、世帯全体で見たときの税負担を抑えられる可能性が出てきます(贈与税の問題は事前にクリアしておく必要があります)。

また、将来会社を売却、いわゆるM&Aすることになった場合にも、株を持っている人に売却益が入ります。
株価がまだ安い設立時のうちに、将来の資産移転を見越してお子さんに少し株を持たせておくという高度な設計も可能です。
(ただし経営権の問題がありますので、議決権のない種類株を使うなど、専門家と相談しながら設計する必要があります)

家族を役員にして所得を分散させるという戦略

株主だけでなく、取締役などの役員に誰を入れるかも重要なポイントです。
家族への役員報酬を活用して適用税率を下げるテクニックは、中小企業だからこそ使える大きな武器になります。

日本の所得税は超過累進税率という仕組みで、稼ぐほど税率が上がります。
住民税と合わせると最大55%にも達します。

社長おひとりで年収2000万円を受け取る場合と、社長1000万円、配偶者(取締役)500万円、お子さん(取締役)500万円と分けた場合では、世帯全体の手取り額に大きな差が出ます。
もちろん、配偶者やお子さんが実際に業務に携わっている実態があることが前提です。

設立時に配偶者を役員として登記しておけば、最初からこの所得分散が実現できます。
後から役員を追加することもできますが、登記費用や株主総会の決議が必要になります。

最初から家族をチームとして経営に参加させる設計にしておくのも、有効な選択肢のひとつと言えるでしょう。

利益が大きくなったら考えたい2社目という発想

もう少し視野を広げると、2社目の会社を作ることで実現できる節税も見えてきます。

すでに1社を経営していて新規事業を始める場合、別会社を設立したほうが税務上有利になるケースがあります。

まず、消費税の免税期間を再び活用できる可能性があります(インボイスとの兼ね合いは確認が必要です)。
次に、交際費の損金算入枠800万円がもうひとつ増えます。
さらに、法人税の所得800万円以下に適用される軽減税率を2社分使えるようになります。

利益が順調に伸びてきたら、事業を分けて別会社にすることで税率の壁を低く抑えられます。
最初からホールディングス化を目指す必要はありません。
しかし、事業ごとに会社を分けるという発想は、頭の片隅に置いておいて損はないはずです。

まとめ:登記する前に税理士に会いに行ってください

ここまでお読みになって、「しまった、もう登記してしまった…」と焦っている方もいらっしゃるかもしれません。
ご安心ください。手間と費用はかかりますが後からある程度の対応はできます。

このブログでは繰り返しお伝えしていますが、節税の成否は事業計画の段階でほぼ決まります。
そして、その計画の第一歩こそが会社の設立です。

これから法人化を考えている方にお願いしたいのは、司法書士に印鑑証明を渡す前に、まず税理士に相談するということです。

「売上の見込みはこれくらいで、家族構成はこんな感じで、将来はこうなりたいと思っています」

そう伝えていただければ、

「それなら資本金は300万円にして、決算月は8月にしましょう。奥様も役員に入れておきましょう」

と、あなただけの設計図を一緒に描くことができます。

ボタンの掛け違いを後から直すのは大変です。
最初のボタンをきちんと留めるところから、資産形成への最短ルートは始まります。

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わかお税理士
税理士(税理士登録番号:140275)、国際認証MBA(経営学修士)、ファイナンシャル・プランナー

20年以上の実務経験の中で、上場企業から中小零細企業まで100数十名の社長の経営・税務・資産形成を継続的に支援。
もっと会社にお金を残したい社長へ。利益最大化と合理的節税で通帳残高を増やす、ご機嫌な未来志向の経営をサポートしています

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組織再編税制に係る行為計算否認規定の解釈とその適用

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