申告書1枚で納税額100万円の差がつくことも!税理士が教える優遇制度7選

私のところに相談に来られる社長の決算書を拝見していると、残念な気持ちになるときがあります。
あの制度を使っていれば100万円以上税金が安くなっていたのに。
出張が多いのに旅費規程がないから、年間数十万円を取りこぼしている。
こうしたケースは、決して珍しくありません。
制度を知らない、あるいは使っていないというのは、会社の金庫に穴が空いているようなものです。
しかも、その穴は申告書を1枚出すだけ、あるいは社内ルールを作って運用するだけで塞げるものだったりします。
今回は、国が用意してくれている優遇税制の中から、特に中小企業経営者が見逃してはいけないものを厳選してお伝えしていきます。
なぜ制度を使う節税が最も効果的なのか
具体的な制度の紹介に入る前に、なぜ私が制度活用を推奨するのか、その理由を共有させてください。
一般的な節税、つまり経費を使う節税は、税金を減らすためにお金を使う必要があります。
100万円の経費を使って、30万円の税金を減らす。手元の現金は70万円減る。
これが基本的な構造です。
しかし、制度を使う節税の多くは、この構造とは異なります。
すでに行った投資や日常の業務に対して税金を減らす権利がもらえる仕組みになっています。
たとえば、必要な機械を買った。人を雇った。
これらは事業のために必要なことです。
こうした行動に対して、国が定めた要件に合致していれば、追加の支出なしで税金だけが安くなります。
あるいは、経費にできる額が増えることもあります。
これほどローリスクでハイリターンな方法は、ほかにはなかなかありません。
活用しないのは、もったいないと思いませんか。
国からの大きな贈り物、税額控除を見逃さない
まず最初に検討すべきは、インパクトの大きい優遇税制です。
特に税額控除という言葉が出てきたら、ぜひ注目してください。
通常の経費は利益を減らすものですが、税額控除は計算された税金そのものを直接減らしてくれます。
100万円の税額控除を受ければ、それはそのまま100万円の現金をもらったのと同じ価値があります。
制度1:給料を増やしたら活用できる賃上げ促進税制
今、国が最も力を入れている制度がこれです。
従業員の給与総額を前期と比べて一定以上増加させた場合、その増加額の最大45%を法人税から差し引けるという強力な仕組みになっています。
うちは赤字だから関係ないと思われるかもしれません。
しかし、赤字で税金を払っていない場合でも、今年控除できなかった分を翌年以降5年間繰り越して使うことができます。
増員する予定がある方、昇給を検討している方は、顧問税理士に賃上げ税制を使えるかどうか、ぜひ聞いてみてください。
制度2:設備投資をしたら活用できる投資促進税制・経営強化税制
機械装置、ソフトウェア、器具備品などを購入した場合、通常の減価償却ではなく、特別償却という買った年に多額の減価償却ができることがあります。
また、取得価額の7%または10%を税金から直接引く税額控除を選択できる場合もあります。
中小企業投資促進税制は、比較的手続きが簡単で取り組みやすい制度です。
一方、中小企業経営強化税制は事前に計画認定が必要ですが、その分だけ節税効果も大きくなります。
たとえば、1000万円の機械を買った場合、100万円、つまり10%の税金を直接減らせる可能性があります。
キャッシュフローを改善する経費化の特例
次は、税金を直接減らすわけではありませんが、経費になるスピードを早めることで直近の税金を減らし、資金効率を上げる制度をご紹介します。
制度3:30万円未満は即経費にできる少額減価償却資産の特例
通常、10万円以上のパソコンなどの備品を買うと、数年かけて減価償却しなければなりません。
しかし、青色申告をしている中小企業であれば、30万円未満の資産は年間合計300万円まで、買ったその年に全額経費にできます。
今期、ちょっと利益が出すぎたなというとき、翌期に買う予定だった20万円のパソコンを5台、計100万円分、前倒しで購入するという方法があります。
通常なら4年で償却するところを、今期一発で100万円の経費にできるわけです。
これで約30万円の税金が減り、資金繰りが楽になるでしょう。
制度4:去年の税金を取り戻せる欠損金の繰戻し還付
これは赤字になったときの切り札です。
前期は黒字で税金を納めたけれど、今期は赤字が出てしまった。
そんなとき、前期に納めた税金を返してほしいと請求できる制度があります。
多くの社長が、赤字だから税金はゼロで終わりと思っています。
しかし実は、去年払った税金がキャッシュで戻ってくる可能性があることをご存じでしょうか。
これは資金繰りが厳しいときには命綱になり得ます。
規程を作って運用するだけで効果が続く社内制度の整備
ここからは、一度仕組みを作ってしまえば、継続的に節税効果を生み出し続ける社内制度の話です。
社長個人の手取りにも直結します。
制度5:出張が多いなら活用したい出張旅費規程
社長や社員が出張に行った際、実費である新幹線代やホテル代とは別に、日当という手当を支給するルールを作ります。
この日当の凄いところは、2つあります。
まず会社側のメリットとして、全額が経費になります。
消費税の課税仕入れにもなるので、消費税も減らせます。
次に個人側のメリットとして、受け取った日当は非課税所得となり、所得税も住民税も社会保険料もかかりません。
つまり、会社から個人へ無税でお金を移せる仕組みです。
たとえば、日当を1日1万円と設定し、年間50日出張すれば、50万円が無税で社長の懐に入り、会社は50万円の経費を計上できます。
出張の多い会社なら、ぜひ検討していただきたい制度です。
制度6:自宅が賃貸なら検討すべき社宅規程
社長が住んでいる賃貸マンション、個人で家賃を払っていませんか。
会社名義で契約し、借上げ社宅として社長に貸し出せば自宅家賃を経費にできます。
社長個人は、会社に対して一定の家賃、つまり賃料相当額を払う必要がありますが、それは相場の10%から20%程度で済むことも多いです。
固定資産税評価額などをもとに計算します。
結果として、今まで給料から払っていた家賃の大半を、会社の経費として落とせるようになります。
個人の手取り額をアップさせる効果的な節税策の一つです。
制度7:飲食代を経費にする1人1万円枠の活用
以前は1人5000円以下のみが会議費として全額経費、つまり交際費の枠外にできましたが、改正で1人1万円以下に拡大されました。
中小企業にはもともと年間800万円までの交際費枠がありますが、それを超えてしまうような接待が多い会社にとっては朗報です。
1回1万円までなら交際費枠を使わずに経費にできます。
この基準を理解して店選びをするだけで、否認リスクを下げつつ節税につなげられます。
まとめ:制度活用は情報戦である
節税というと、何か特別なテクニックが必要だと思われがちですが、実はこうした当たり前の制度をもれなく適用することが、最も確実で効果の高い節税法です。
経営者であるあなた自身が知識という武器を持つ必要があります。
こういう制度があるはずだと知っていれば、税理士との打合せで適用の有無を確認することができます。
制度の活用は、会社の成長を国が後押ししてくれる仕組みです。
国からの贈り物をフル活用して、手元のキャッシュを最大化し、次の成長投資へとつなげていただければ幸いです。


