明日、主力事業が消えたら?中小企業社長が知っておくべき多角化戦略

目次

はじめに:なぜ事業の柱は3本必要なのか

経営者として日々奮闘しているあなたに、ひとつ質問があります。

今のビジネス、柱は何本ありますか。

もし1本だけだとしたら、少し立ち止まって考えてみてください。
1本足や2本足のイスがグラグラ揺れるように、事業の柱が1本だけの状態は不安定といえます。
でも3本足なら、どっしりと安定しますよね。
事業の柱が1本しかない状態は、その柱が揺らいだ瞬間に、ビジネス全体が倒れてしまう危険性をはらんでいます。

この記事では、あなたのビジネスを盤石なものにするための多角化戦略をお伝えしていきます。

多角化がもたらす最大のメリットは揺るぎない安定性

多角化戦略がビジネスにもたらす最大の価値は、何と言っても安定性です。

たとえば、対面サービスを主力としていた会社が、ある日突然その事業を続けられなくなったらどうなるでしょうか。
2020年のコロナショックでは、多くの企業がまさにこの状況に直面しました。

講演会やセミナー、飲食店など、対面を前提としたビジネスの売上が一夜にして激減したのです。
しかし、複数の事業を持っていた会社は違いました。
対面事業が厳しくなる一方で、オンラインサービスや動画コンテンツなど別の柱が伸び、会社全体としてはダメージを最小限に抑えることができたのです。

この事例から得られる教訓はシンプルです。
複数の収益の柱があれば、どれかひとつに予期せぬ事態が起きても、会社が全滅することを防げます

これこそが多角化戦略の核心的な価値です。
ただし、やみくもに多角化を始めるのは危険でもあります。
成功させるには、適切なタイミングと前提条件が必要です。

多角化を始める前に確認すべき3つの大前提

多角化が大事なのはわかった。しかし、実行するのは少しだけ待ってください。
準備ができていない状態での多角化は、メリットどころか大きなリスクになりかねません。
あなたのビジネスが以下の3つの条件をクリアしているか、必ず確認してください。

収益性

既存事業でしっかりと利益が出ていることが絶対条件です。
1本目の柱が盤石でなければ、次の柱を立てる余裕は生まれません。

リソースの余裕

次の事業に回す時間とお金の余裕があることも重要です。
新しい事業には先行投資が必要になります。
日々の業務に追われている状態では、新規事業どころではありません。

仕組み化

外部パートナーとの連携や業務の自動化が導入されていることも大切です。
すべての業務を一人で抱えている状態では、新しい事業に割くリソースは生まれません。

これらの前提が満たされていない状態での多角化は、戦場で戦力が整わないまま兵士を一人ずつ送り出す逐次投入のようなものです。
ひとつひとつの事業が中途半端になり、結果的にすべてが共倒れになる総崩れのリスクが高まってしまいます。
あなたの今の事業は、この3つの条件を満たしていますか。
これらの前提が整ったら、いよいよ多角化の実践です。
失敗を避けるための3つの基本ルールを見ていきましょう。

失敗しない多角化のための3つの基本ルール

多角化を成功させるには、闇雲に新しいことを始めるのではなく、既存ビジネスとの関連性を意識することが大切です。
ここでは、多角化で押さえておくべき3つの基本ルールをご紹介します。

ルール1:自分のスキルを水平展開する

ひとつの事業を続ける中で身につけたスキルそのものを、次の新しい商品や事業にするという考え方です。

たとえば、コンサルタントがセミナー開催を通じて講師スキルを磨き、やがて講師になりたい人向けの育成講座を始めるケースがあります。
さらにその講座が軌道に乗ると、講座ビジネスの作り方を教える事業へと発展することも珍しくありません。

ひとつのスキルが次々と新しい事業を生む連鎖反応を起こすのが、水平展開の醍醐味です。
あなたが無意識にこなしている業務の中に、他の人がお金を払ってでも学びたいと思う隠れたスキルはありませんか。
ぜひ一度、棚卸ししてみることをおすすめします。

ルール2:既存のお客様に垂直展開する

すでに関係性のあるお客様が次に必要とする商品を提供し、顧客単価を高めていく考え方です。

たとえば、ビジネスモデル構築のセミナーを受講したお客様が、次にセミナー講師育成講座に参加し、その後は集客のための動画制作サービスを申し込むといった流れが考えられます。

同じお客様の成長段階に合わせて、異なるサービスが縦につながっていくのです。
ビジネスで最もコストがかかるのは新規開拓です。既存のお客様の成功を支援し続けることで、新規開拓コストをかけずに安定した収益基盤を築くことができます。
あなたの今のお客様は、次にどんな壁にぶつかるでしょうか。
その悩みを解決する新しいサービスを提供できないか、考えてみてください。

ルール3:リソースの効率化で一石多鳥を狙う

ひとつの行動で複数の成果を得ることを目指す考え方です。これを一石多鳥と呼ぶこともあります。

たとえば、出張で地方を訪れる際に旅の様子を動画で撮影し、YouTubeに公開するケースを考えてみましょう。
移動時間という既存のリソースを活用することで、本業とは別の収益源やブランディングの機会を生み出すことができます。
すでにあるリソースや、どうせやらなければならないことの上に、新しい売上を作る仕組みを乗せるという発想が重要です。

あなたが日々行っているルーティン業務や移動時間の中に、新しい価値を生み出すビジネスチャンスが眠っているかもしれません。
これらの基本ルールを押さえたら、さらに事業を成長させるための応用モデルを見ていきましょう。

事業を次のステージへ導く2つの応用モデル

多角化は単なるリスク分散ではありません。
事業を戦略的にステップアップさせる強力なエンジンにもなります。
ここからは成長を加速させる2つの応用モデルをご紹介します。

応用モデル1:縦の多角化で楽になる仕組みを作る

これはやればやるほど楽になるステップアップ戦略です。
ホームページ制作会社を例に、3つのステップで説明します。

最初のステップは技術の提供です。
自分の制作スキルを直接提供して売上を作ります。多くの経営者がここからスタートするはずです。

次のステップは仲介へのシフト。
制作案件を外部パートナーに委託し、自分は品質や進捗を管理するディレクション業務に専念します。
利益率は下がりますが、圧倒的な時間が生まれます。

最後のステップは資産化です。
ステップ2で生まれた時間で営業を強化すると、クライアントとパートナーが増えていきます。
そのネットワーク自体が資産になり、最終的には自分が動かなくてもパートナー間の紹介だけで収益が生まれる仕組みが完成します。

応用モデル2:川上への多角化で影響力を高める

これは、まるで鮭が産卵のために川を上っていくように、事業のレイヤーを上げていくイメージから遡上モデルと呼ばれています。
一言でいえば、現在行っている事業のノウハウを同業者に提供するビジネスを始めることです。

たとえば、Web制作会社が自社で培ったプロジェクト管理の仕組みを、他のWeb制作会社に教えるといったケースが該当します。

この戦略の真価は、一度で終わらない点にあります。
コンサルタントが成功手法を他のコンサルタントに教え、その手法で成功した人たちを組織化して団体を設立する。
上へ上へとポジションを変えながら、市場での影響力を高めていくことが可能になります。

これらの成長モデルに加えて、守りを固めるための非常に重要な考え方があります。それが次にご紹介するリスクヘッジに特化したモデルです。

最大のリスクに備えるウォームスタンバイという考え方

多角化の大きな目的のひとつはリスクヘッジです。
特に中小企業にとって最大のリスクは何でしょうか。それは、自分が動けなくなったら事業が止まるということ。
この最悪の事態に備えるための戦略が、ウォームスタンバイです。
事業の準備状態には、3つのレベルがあります。

ホットスタンバイ

既存事業と新規事業を両方とも全力で展開している状態です。
理想的に見えますが、リソースが分散しがちな点には注意が必要です。

コールドスタンバイ

構想や仕組みだけを用意しておく状態です。
しかし、危機が起きてから動き出すのでは遅すぎます。

ウォームスタンバイ

新規事業を小規模に始めておく状態です。
利益は少なくても構いません。いざという時にアクセルを踏めば、すぐに本格稼働できるのが特徴です。
常に複数の事業を全力で回すホットスタンバイはリソースに限りがある中小企業ではハードルが高いです。
かといってコールドスタンバイでは、いざという時に間に合いません。

だからこそ、小さな規模でもいいので実際に動かしておくウォームスタンバイが、最も現実的かつ効果的な選択肢となります。

たとえば、対面サービスを主力としながら、オンラインでのサービス提供を小規模に続けておく。
こうしておけば、対面が難しくなった時にすぐにオンラインへシフトできます。

ここまで様々な多角化戦略を見てきましたが、最終的にどこを目指すべきなのでしょうか。
最後に、多角化の先にあるゴールについて考えてみましょう。

まとめ:多角化の先にある究極のゴールとは

様々な多角化戦略を駆使した先に、私たちが目指すべき究極のゴールとは何でしょうか。

それは、自分がいなくても回る仕組みを作ることです。

なぜこれが重要なのか、理由は2つあります。

ひとつ目は、中小企業の最大のリスク回避につながるからです。
自分が機能しなくなった瞬間に事業が止まるという、中小企業が抱える根源的な危機感への根本的な対策となります。

ふたつ目は、事業の資産化が実現できるからです。
自分という個人に依存しない事業は、ひとつの独立した価値を持ちます。
これは、いざという時に売却できる資産になることを意味しています。

多角化は、単に売上を増やすためのテクニックではありません。
あなたという存在がいなくても価値を生み出し続ける仕組みと資産を作り上げ、あなたを本当の意味で自由にするための戦略です。

まず今の事業の柱を盤石にすること。そして、その上で次の柱の種となるスキルやお客様のニーズは何かを考えましょう。
ぜひ、3本の柱を持つ安定したビジネスの構築に向けて、今日から一歩を踏み出してみてください。

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税理士(税理士登録番号:140275)、国際認証MBA(経営学修士)、ファイナンシャル・プランナー

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