「決算前に節税しなきゃ!」と焦る社長ほど、なぜかお金が残らない本当の理由

「今期、思ったより利益が出そうだ。何か節税できないかな」

決算の1〜2ヶ月前になると、こんな相談が一気に増えます。
私は税理士として多くの中小企業経営者とお話ししてきましたが、実はこのタイミングで相談に来られる方ほど、会社にお金が残りにくい傾向があります。

不思議に思われるかもしれません。節税しようとしているのに、なぜお金が残らないのか。
その答えは、節税の時期にあります。

お金を残している経営者は、決算月に慌てて動くことはありません。
彼らは期首、つまり年度の始まりに計画を立てています。
節税とは、年度末の調整ではなく、年度初めの設計で9割が決まるものだからです。

今回は、なぜ節税において時期がそれほど重要なのか、そして具体的にどう動けばよいのかを、できるだけ分かりやすくお伝えしていきます。

目次

決算間際の節税が失敗しやすい3つの理由

夏休みの宿題を8月31日に泣きながらやった経験はありませんか。
実は、決算月に慌てて節税しようとする状況は、まさにあの光景と同じです。

このタイミングで動くと、思うような成果が出にくい理由が3つあります。

選べる手段が浪費に偏ってしまう

決算まであと数週間しかない状況を想像してみてください。
できることは限られています。
すぐに買えて、すぐに届いて、すぐに経費にできるもの。
そうなると、選択肢はどうしても浪費的なものに偏りがちです。

特に今は必要のない消耗品や備品をまとめ買いしたり、社員との急な飲み会を開催したり、効果検証をしないまま広告費を投入したり。

確かに税金は減ります。
でも、これらが会社の将来に利益をもたらすかというと、正直なところ微妙ではないでしょうか。
経費を使うこと自体が目的になってしまい、本来残るはずだったお金が流れ出ていきます。

事業供用という壁に阻まれる

ここが最大の落とし穴です。
税法上、減価償却や投資減税などの特例を受けるためには、決算日までに購入するだけでは足りません。
事業供用、つまり実際に使い始めていることが必要になります。

たとえば、決算ギリギリに1,000万円の機械を発注し、代金も全額支払ったとします。
ところが、納品や設置が翌期にずれ込んでしまったら、今期の経費には1円も計上できません。
お金は出ていったのに、税金は減らない。
資金繰りの観点から見ると、これは最悪のパターンです。

強力な制度の申請が間に合わない

他の記事でご紹介した経営強化税制のような、即時償却や10%の税額控除が受けられる強力な制度があります。
しかし、こうした制度を使うには、事前に国から計画の認定を受けなければなりません。
この認定には通常1〜2ヶ月かかります。
決算月に思い立っても、物理的に間に合わないのが現実です。

つまり、決算間際の節税は、効果が薄く、リスクが高く、強力な武器が使えないという三重苦の状態で戦うことになります

期首から動く経営者が有利な理由

では、お金を残している経営者はどうしているのでしょうか。
答えはシンプルで、期首から節税を設計しています。

種まきと収穫のサイクルを作る

本質的な節税とは、今期その経費を使うことによって、来期以降に使った金額以上のお金を生み出すことです。

今期は種まき、来期以降は収穫

この構造があって初めて、節税は投資になります。

具体的な例を挙げてみます。
今期、人材の採用費と教育費に投資する。これが種まきであり、同時に節税にもなります。
そして来期、育った人材が売上を上げてくれる。これが収穫です。

こうしたストーリーを描くには、年度の初めに今期はどこに種をまくかを決めておく必要があります。
行き当たりばったりで種をまいても、期待どおりの収穫は得られません。

利益予測こそが最強のツール

計画的な節税を行うために欠かせないのが、利益予測です。
今年はこれくらいの利益が見込める。
その予測があるからこそ、このタイミングで設備投資をしよう、社員に決算賞与を出そう、といった資金の裏付けのある戦略的な判断ができるようになります。

逆に、利益が読めない状態で経費を使うのは、ギャンブルと変わりません。
節税のために経費を使ったけれど、思ったより利益が出ずに赤字に転落した。
税金対策でお金を使った直後に、大口の入金が遅れて資金がショートした。

笑い話のようですが、実際に起こり得る話です。

あなたの会社は大丈夫ですか?

ここで少し立ち止まって、自社の状況を振り返ってみてください。
以下の項目に心当たりがあれば、節税の効果を最大限に引き出せていない可能性があります。

月次決算を導入していない、または試算表が出てくるのが2ヶ月後、3ヶ月後になっている場合
これでは過去の記録を見ているだけで、経営判断には使えません。

売上や利益の予測をしていない場合
今月終わってみないとわからないという状態では、事前の対策を打ちようがありません。

経費の支出目的に一貫性がない場合
その場の思いつきで支出が決まっていると、どうしても効率が悪くなります。

設備投資や賞与が思いつきで決まっている場合
本来、これらは利益予測に基づいて予算化すべきものです。

こうした状態が続くと、税金対策は常に後手に回り、結果としてお金が減り続けることになります。

お金が増える会社の年間節税カレンダー

では、具体的にどのようなスケジュールで動けばよいのでしょうか。
理想的な年間スケジュールをご紹介します。

第1四半期(期首から3ヶ月目まで)に設計と仕込みを行う

この時期にやるべきことは3つあります。

まず、年間計画の策定です。
前期の決算を踏まえて、今期の売上目標と利益目標を立てます。

次に、投資計画の決定です。
今年は機械を買う、新店舗を出すなど、大きな投資の方向性を決めておきます。

そして、優遇税制の確認です。
計画している投資に対して使える税制優遇がないか、顧問税理士に確認しましょう。
経営強化税制のように事前申請が必要な制度は、この時期から準備を始めなければ間に合いません。

第2四半期(4ヶ月目から6ヶ月目まで)に実行とモニタリングを行う

月次決算を徹底し、毎月の実績と計画のズレを確認していきます。

投資も計画どおりに進めます。
設備投資や採用活動は、この段階で発注すれば期内の納品や稼働に余裕を持って間に合います。

第3四半期(7ヶ月目から9ヶ月目まで)に修正と着地見込みを確認する

半期の数字が固まった段階で、通期の着地見込みを修正します。
いわゆる中間決算の検討です。

ここで1回目の納税額シミュレーションを行います。
現時点での予測に基づいて、概算の納税額を把握しておきましょう。

利益が予想以上に上振れしそうなら、追加の対策を検討します。
前倒しできる経費として広告費や修繕費がないか確認したり、倒産防止共済への加入や増額を判断したりするのもこの時期が適切です。

第4四半期(10ヶ月目から決算月まで)に最終調整と翌期の準備を行う

決算の2〜3ヶ月前には、おおよその数字を固められるはずです。
ここで2回目の納税額シミュレーションを行い、最終的な着地点を確定させます。

決算賞与の決定はこの段階で行います。
利益還元の原資が確定しているため、安心して賞与額を決められます。

そして、お金を残す経営者は、この時点ですでに来期のことを考え始めています。

節税とお金の両立を実現する2つの原則

ここまでお読みいただいて、いかがでしょうか。
最後に、タイミング戦略を成功させるための2つの原則をお伝えします。

原則1:12ヶ月を通じて節税を設計する

節税は決算月の一発勝負ではありません。
12ヶ月間を通じて、この支出は投資になるか、このタイミングで適切かを考え続けるプロセスそのものです。
その継続が、結果として大きな差を生み出します。

原則2:経営目的と支出を紐づける

順番を間違えないでください。
節税のために買うのではなく、経営戦略上必要だから買う、その結果として節税になる。
この順番を守ることが大切です。

なんとなく欲しいから、今しか買えないから、ではなく、この支出が将来何を生むのかを言葉にできるようにしておきましょう。

まとめ:経営者の仕事は未来の時間を買うこと

時間がないと嘆く経営者は少なくありません。
しかし、時間をコントロールすることこそが経営者の最も重要な仕事ではないでしょうか。

決算間際にバタバタと動き回るのは、時間に追われている状態です。
一方、期首に計画を立て、淡々と実行していくのは、時間を味方につけている状態です。

お金を残している社長の多くは、時間を味方につけている社長です。

今期の決算が終わったら、ぜひ顧問税理士とアポイントを取ってみてください。
そして、こう伝えてみてはいかがでしょう。

「来期の利益計画と、それに合わせた節税・投資スケジュールを一緒に作りたい」

その1回のミーティングが、来年の決算月におけるあなたの心の余裕と、会社に残るお金の額を大きく変えるきっかけになるはずです。

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わかお税理士
税理士(税理士登録番号:140275)、国際認証MBA(経営学修士)、ファイナンシャル・プランナー

20年以上の実務経験の中で、上場企業から中小零細企業まで100数十名の社長の経営・税務・資産形成を継続的に支援。
もっと会社にお金を残したい社長へ。利益最大化と合理的節税で通帳残高を増やす、ご機嫌な未来志向の経営をサポートしています

【執筆税務論文】
組織再編税制に係る行為計算否認規定の解釈とその適用

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