「節税」が会社を貧しくする? 多くの経営者が知らない本当にお金が残る4つの逆説

「売上は順調に伸びているのに、なぜか手元にお金が残らない」 多くの中小企業経営者が抱えるこの深刻な悩み。

帳簿上は黒字でも、キャッシュが足りずに資金繰りに追われる。
その原因は、もしかするとあなたが信じている「節税」という考え方そのものにあるのかもしれません。

前提として、節税は3種類に分類されます。これらを混同するとほぼ確実に節税で失敗します。
・制度を使う節税
・テクニックを使う節税
・経費を使う節税

本記事では、経費を使う節税を深掘りし、節税を「会社の財務を支える戦略」と捉え直すための4つの逆説を解説します。

目次

逆説① 節税のための支出は、現金を減らす最大の罠

まず「節税=得」という一般的な思い込みが危険です。

多くの経営者は「税金を払うくらいなら、経費を使ったほうがマシだ」と考えがちですが、これが会社の現金を確実に減らす「節税貧乏」への入り口です。

具体的な数字で見てみましょう。

仮に100万円の利益に対して30万円の税金が発生する(税率30%)とします。このままだと手元には70万円の現金が残ります。

100-30=70万円

ここで、「節税」のために80万円の経費を使うとどうなるでしょうか。

利益は20万円に圧縮され、税金は6万円に減ります。
一見、24万円も税金が減ってお得に見えます。しかし、手元に残る現金は、100万円から支出80万円と税金6万円を引いた「14万円」に激減してしまうのです。

100-80-6=14万円

税金を払うことを選択すれば手元に70万円残ったはずが、節税を優先した結果、残る現金はわずか14万円となってしまいました。実に56万円もの現金を失った計算になります。

つまり「税金を減らすこと」と「手元にお金が残ること」は全くの別物だということです。この構造を理解しないまま節税に走ると、会社の体力である現金はどんどん失われていきます。

24万円の節税のために、80万円を失った というのが事実です。

逆説② 目指すべきは税金を払わない会社ではなく「税金を払ってもお金が残る会社」

多くの経営者が「税金を払うこと=悪」という潜在的な思い込みを持っています。
しかし、お金を増やすためには、この考え方を180度転換し「税金を払うこと=経営の武器」としなければなりません。

税金を払っているということは、それだけ利益が出ているという健全性の証です。
納税は、社会と金融機関に対する「我が社はこれだけ稼ぐ力がある」という力強いメッセージです。本当に強い会社、健全な会社ほど、しっかりと納税しています。

逆に、節税に固執しすぎて利益を過度に圧縮してしまうとどうなるか。
決算書の見栄えが悪化し、節税しすぎて赤字になれば、融資が通りにくくなります。融資が通ったとしても融資額や利率などの条件面が悪くなります。

このように過度な節税は事業成長の機会を自ら手放してしまう結果となりかねません。

本当のゴールは、税金をゼロにすることではありません。税金をきちんと払ってなお、手元にキャッシュが豊かに残っている状態こそが、目指すべき会社の姿です。

逆説③ 消費する節税一辺倒をやめ、「投資する節税」に切り替える

経費を使った節税には2つの種類があります。

単に利益を圧縮するための「消費する節税」と、未来の利益を生み出すための「投資する節税」です。多くの会社が決算間際に一生懸命取り組んでいるのは、前者です。

投資する節税とは、支出を単なる「消費」ではなく、将来の売上や生産性向上に繋がる「投資」と捉える考え方です。
これらは経費として計上できるため節税になり、同時に会社の成長の種をまくことになります。

具体的には、以下のような支出が挙げられます。

• 教育研修費
社員のスキルアップが、将来の生産性や売上向上に直結する。

• マーケティング費用
広告やブランディングへの投資が、未来の優良顧客を呼び込む。

• 仕組み化への投資
業務効率化ツールやシステムの導入が、長期的なコスト削減と利益率改善を生む。

これらの支出は、節税と事業成長を同時に達成するまさに戦略的なお金の使い方です。
「お金を消費する」節税から「お金を生み出す」節税へ舵を切りましょう。

逆説④ 最高の節税策は「安定した事業構造」そのものである

多くの経営者は節税を年度末の駆け込み作業だと考えていますが、それは大きな間違いです。
節税は年度末の調整ではなく、年度初めの設計が9割です。 そして、その設計の土台となるのが「安定した事業構造」です。

特に、リピート売上戦略によって毎月の売上が安定し、利益予測の確度が向上すれば、計画的で効果的な節税を可能にする最強の節税基盤が手に入ります。
利益が正確に読めるからこそ「今年はこれくらいの利益が見込めるから、このくらい設備投資をしよう」「このタイミングで社員に賞与を出そう」といった、資金の裏付けのある戦略的な判断が可能となります。

逆に、新規顧客頼りで売上が不安定な状態での節税は、単なるギャンブルです。
場当たり的に経費を使っても、思ったより利益が出ずに赤字になったり、納税資金が足りなくなったりと、資金繰りを悪化させるリスクが高まります。

年度末にやっつけで使った経費は浪費に終わり、将来のお金を連れて来る投資となりません。節税は年度初めに設計し、投資となる節税をしましょう。

本質的な節税とは、テクニックをこねくり回すことではなく、安定して利益を生み出せる事業構造を構築することです。

まとめ

この記事で紹介した4つの逆説は、それぞれがバラバラに機能するのではなく、 財務的に健全な会社を築くための一つのシステムとして働くものです。

1. 「節税のための支出」は現金を減らすと知り、

2. 目指すゴールを「税金を払ってもお金が残る会社」に設定し、

3. そのために「投資する節税」に切り替える。

4. そして、これら全てを可能にする土台が「安定した事業構造」である。

目先の納税額に一喜一憂する「場当たり的な節税」から脱却し、会社のキャッシュフローと未来の成長をデザインする「戦略的節税」へシフトすることこそが会社を豊かにする近道です。
税金との付き合い方が会社の成長力を左右します。

あなたは目先の税金を減らすためにお金を使いますか?それとも、3年後の未来を創るために使いますか?

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わかお税理士
税理士(税理士登録番号:140275)、国際認証MBA(経営学修士)、ファイナンシャル・プランナー

20年以上の実務経験の中で、上場企業から中小零細企業まで100数十名の社長の経営・税務・資産形成を継続的に支援。
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