「うちは関係ない」が命取りに? 税務調査で脱税と疑われないために経営者が知っておくべきこと

顧問税理士から「税務調査が入ることになりました」と連絡を受けたとき、あなたならどう感じるでしょうか。

「何もやましいことはないから、いつでもどうぞ」と胸を張れる方もいれば、心拍数が上がり、過去のあの処理やこの領収書が頭をよぎってしまう方もいるかもしれません。

会社を経営している以上、税務調査は避けて通れないイベントです。
ただし、その結果が単なるミスの修正で済むのか、脱税と認定されてしまうのかによって、会社のその後は天と地ほど変わってきます。

今回は、中央大学の酒井克彦先生が提唱する本屋の立ち読みというたとえ話をもとに、脱税と認定されることの恐ろしさについてわかりやすく解説していきます。
決して脅したいわけではありません。
ただ、このリスクを知らない経営は、目隠しで綱渡りをしているようなものだと思います。

目次

脱税とは何か? 本屋のたとえでわかりやすく説明します

まず脱税の意味をはっきりさせておきましょう。

以前の記事では、節税はレジ待ちの間の立ち読み(店長も公認)、租税回避は買う気もないのにレジ周りで立ち読みする行為(グレーゾーン)とお伝えしました。

では脱税とは何でしょうか。
本屋のたとえで言えば、立ち読み禁止の本屋で店員の目を盗んで本棚の裏に隠れて読む行為です。

これは解釈の違いや見解の相違といったレベルではありません。
明確なルール違反にあたります。

経営の現場では、たとえば次のような行為が該当します。

売上除外とは、現金商売でレジを通さずに現金をポケットに入れたり、取引先からの入金を社長個人の隠し口座に入れさせたりする行為です。

架空経費の計上とは、実在しない外注費を帳簿に載せて知人の口座に振り込み、あとで返してもらったり、家族旅行やブランド品を会議費や消耗品費として処理したりする行為を指します。

「みんな少しぐらいやっている」「バレなければ問題ない」と軽く考える方も中にはいらっしゃいます。
しかし税務署は、あなたが想像している以上に不正を見つけ出すプロだという点は覚えておいてください。

調査官が見ているのはミスかわざとかの一点です

税務調査で調査官が注目しているのは、見つかった誤りが単なるうっかりミスなのか、それとも意図的にやったものなのかという点です。

税法ではこの意図的な行為を仮装・隠ぺいと呼びます。

仮装とは、実際にはないものを本当のことのように装う行為です。
パソコンで架空の請求書を作る、領収書の金額を書き換える、タイムカードを改ざんするといったケースが挙げられます。

隠ぺいとは、本来あるべき事実を隠して、存在するものをないことにする行為です。
売上書類をわざと捨てる、二重帳簿を作る、在庫をわざと数えないといったことがこれにあたります。

調査官が仮装・隠ぺいだと認定した瞬間、事態は大きく変わります。

単なる計算ミスなら過少申告加算税として本税の10%または15%程度で済みます。
ところが仮装・隠ぺいと認定されると、重加算税として35%または40%という非常に重い罰則が上乗せされることになります。

たとえば1,000万円の所得隠しが見つかった場合、本来の法人税等がおよそ300万円だとすると、重加算税だけで100万円以上が追加されます。
さらに延滞税も加わるため、隠したつもりの利益は罰金と税金でごっそり持っていかれてしまいます。

お金より怖い、社会的信用が失われるリスク

しかし本当にお伝えしたいリスクは、目先のお金の話だけではありません。
脱税認定で最も恐ろしいのは、社会的な信用が一気に崩れてしまうことです。

あなたの会社の信用は、一度の判断ミスで失われる可能性があることをご存じでしょうか。

重加算税を課された事実は、税務署のデータベースに残り続けます。その影響は金融機関や取引先にまで波及しかねません。

金融機関からの信用が失われます

銀行は脱税をする経営者をコンプライアンス意識が低いと見なし、融資の格付けを下げる傾向があります。
最悪の場合、融資の引き上げや新規融資の停止につながりかねません。
資金繰りが命綱の中小企業にとって、これほど怖いことはないでしょう。

税務署の要注意リストに入ります

重加算税を受けると要注意納税者としてマークされ、通常より高い頻度で税務調査が来る可能性が出てきます。
そのたびに業務は止まり、精神的ストレスがかかり、税理士報酬も余計に発生します。
常に税務署に見張られている状態で、落ち着いた経営ができるとは思えません。

逮捕や実名報道に発展する可能性もあります

脱税額が巨額で手口が悪質な場合は、国税局査察部いわゆるマルサが動きます。
こうなると刑事告発の対象になり、経営者の逮捕やニュースでの実名報道という最悪の展開を迎えます。
会社は立ち行かなくなり、家族や従業員まで巻き込むことになるでしょう。

たかが税金と軽く見ていたことが、人生そのものを壊してしまう。それが脱税の本当の怖さです。

怖いのは、ミスなのに脱税と疑われてしまうこと

ここまでは意図的に脱税をした場合の話でした。
「自分はそんなことはしていないから大丈夫」と安心した方もいるかもしれません。

しかし、税務調査の現場にはもう一つ見逃せないリスクがあります。
それは、ただのミスなのに脱税とみなされてしまうリスクです。

たとえば忙しさのあまり、期末の現金売上をいくらか計上し忘れてしまったとしましょう。
これは単なるミスです。
しかし「意図的に売上を除外しようとしたのでは?」と調査官に疑われてしまうことがあります。

「それはミスです」と説得力を持って説明できなければ、そのまま重加算税を課される可能性があるのです。

これを防ぐには二つのことが欠かせません。

一つ目は、日々の経理処理の透明性です。
第三者が見てもすぐ内容がわかる帳簿を日頃からつけておくことが大切です。

二つ目は、調査官に対して論理的に反論する力を備えておくことです。
なぜそのミスが起きたのか、隠す意図がなかった根拠は何かを税理士と一緒に整理し、筋道を立てて説明できるようにしておく必要があります。

何も隠していないから大丈夫と高をくくっていると、管理体制のすき間を突かれて脱税と認定されてしまう。
この濡れ衣こそが、まじめな経営者にとって警戒すべきリスクだといえるでしょう。

まとめ:安心して眠れる経営こそが最善の節税対策です

あらためて整理しましょう。

節税は経営者の正当な権利です。制度の範囲内で最大限に活用してください。

租税回避はグレーゾーンの戦略です。リスクを理解した上で慎重に判断する必要があります。

そして脱税は、会社と人生を破滅に導く行為です。どんな理由があっても絶対に手を出してはいけません。

「いつでも調査に来てもらって構いません」と堂々と言える経営状態こそが、最善の節税対策です。
それが銀行からの信用を高め、会社の成長を後押ししてくれます。

夜、安心して枕を高くして眠れるのは、正々堂々と経営している方だけです。

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わかお税理士
税理士(税理士登録番号:140275)、国際認証MBA(経営学修士)、ファイナンシャル・プランナー

20年以上の実務経験の中で、上場企業から中小零細企業まで100数十名の社長の経営・税務・資産形成を継続的に支援。
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