1,000万円の脱税で届いた追徴は2,000万円だった? 税理士が明かすペナルティの全貌

経営者の皆さんは、日々の経営判断のなかで、コストパフォーマンスをとても厳しくチェックされていると思います。
少しでも安く仕入れて、少しでも効率よく利益を出す。
その地道な積み重ねが会社を支えています。
ところが、税金の話になると、この鋭いコスト感覚がふっと鈍ってしまう方がいらっしゃいます。
「売上をちょっと抜けば、税金が100万円浮く。バレなきゃ丸儲けだろう」
もしそんな考えが頭をよぎったことがあるなら、ぜひ一度立ち止まって考えてみてください。
その計算には、とても大きなリスクが見落とされています。
もしその行為が税務調査で明るみに出たとき、支払うのは浮いた100万円を返すだけでは終わりません。
今回は、脱税が発覚した際に課されるペナルティの仕組みを、最新の税率にもとづいてわかりやすく解説していきます。
結論を先にお伝えすると、脱税の代償は本来納めるべきだった税金の約1.5倍にまで膨らみます。
ペナルティの正体は附帯税という追加の税金です
税務調査で修正申告を求められた場合、本来納めるべき税金、いわゆる本税に加えて、附帯税と呼ばれる追加の税金を支払わなければなりません。
これは事実上の罰金みたいなものです。
そして、この附帯税の税率は、違反がどれだけ悪質だったかによって大きく変わってきます。
単純なミスなら10%、意図的な不正なら最大40%
過少申告加算税は税率10%で、計算ミスや認識の違いなど、悪意のない誤りに対して課されるものです。
一方で、重加算税は税率35~40%にもなります。
こちらは、意図的に事実を隠したり、帳簿を偽造したりした場合に適用される、はるかに厳しいペナルティです。
脱税、つまり所得を隠す行為には、当然ながら重加算税が適用されます。
特に、売上を帳簿から除外していたり、そもそも申告すらしていなかったりといった悪質なケースでは、最大の40%が課されることになります。
具体的にイメージしてみましょう。
たとえば1,000万円の税金をごまかそうとした場合、そこに400万円が上乗せされ、合計1,400万円を支払わなければなりません。
本来の税金の1.4倍もの金額を請求されるわけです。
過去に税務署から指摘を受けたことがあると、さらに10%加算されます
国税庁は、繰り返し不正を行う事業者への対応を年々厳しくしています。そのひとつが、加重措置と呼ばれる制度です。
これは、過去5年以内に重加算税や無申告加算税を課されたことがある場合に適用されるルールで、再び同じような違反をすると、税率がさらに10%上乗せされます。
計算してみるとこうなります。
重加算税40% + 加重分10% = 合計50%
本税が1,000万円であれば、ペナルティだけで500万円です。
合計の支払額は1,500万円になりますから、本来納めるべき税金の実に1.5倍を支払う計算になります。
延滞税は銀行金利の4倍から9倍にもなります
重加算税に加えて、見落としがちなのが延滞税です。
これは、税金を期日までに納めなかったことに対する利息のようなもので、時間が経てば経つほど金額が膨らんでいきます。
法律上の原則税率は年14.6%ですが、現在は市中金利に連動した軽減措置が適用されています。
軽減されているとはいえ、その水準は経営を圧迫するには十分すぎるものです。
皆さんの会社は、銀行からどれくらいの金利で融資を受けていますか?
多くの健全な中小企業であれば、年利1~2%程度で借りているはずです。
それに対して、延滞税の実際の税率はどうでしょうか。
国税庁が公表しているデータによると、納期限の翌日から2ヶ月を経過した後の税率は次のとおりです。
令和4年~令和7年(2025年):年8.7%
令和8年(2026年):年9.1%
つまり、銀行融資の4倍から9倍もの利率で、お金を借りっぱなしにしている状態と変わりません。
しかも、脱税が疑われる事案では、税務調査が5年前、悪質な場合は7年前まで遡って行われます。
年利約9%の高い利率が、5年分、7年分と累積していくわけです。
お金の流れに敏感な経営者であれば、この数字がどれほど恐ろしいか、すぐにお分かりいただけるでしょう。
重加算税と合わせれば、支払総額は雪だるま式に膨れ上がっていきます。
1,000万円の脱税をするとどうなるか、具体的に計算してみました
ここからは、実際の数字を使ったシミュレーションを見ていきましょう。
架空の経費を計上するなどして法人税1,000万円を脱税し、それが5年後に発覚したと仮定します。
支払うべきコストの内訳は次のとおりです。
本税(追徴税額):1,000万円
すでに使い込んでいたとしても、現金での一括納付が求められます。
重加算税(40%):400万円
意図的な隠蔽や仮装があった場合に課されるペナルティです。
延滞税(概算):約400万~450万円
年9%前後の利率が数年分にわたって加算されます。最初の2ヶ月は低めの税率が適用されますが、長期間の未納になるとかなり大きな金額に膨らみます。
住民税・事業税の追徴:約200万~300万円
法人税に連動して地方税も追徴されます。これらにもそれぞれ延滞金がかかってきます。
合計の支払額は、およそ2,000万円から2,150万円にのぼります。
1,000万円得したつもりだったのに、結果として倍近くの現金を支払うことになってしまうわけです。
この差額の約1,000万円を取り戻すには、利益率5%の会社であれば、2億円分の売上が必要になります。
たった一度の判断ミスの代償としては、あまりにも大きいと思いませんか?
ペナルティをゼロにできるタイミングがあります
ここまでの話を読んで、不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。
ただ、一つだけ知っておいていただきたい大切な事実があります。
実は、同じ修正申告でも、それをどのタイミングで行うかによって、ペナルティの大きさは天と地ほど変わってきます。
税務署からの連絡が届く前に自分から申告すれば、加算税はゼロになります
法律では、自ら誤りに気づいて正直に修正申告を行った納税者に対して、非常に大きな軽減措置を用意しています。
まず、税務署からの事前通知が届く前に自主的に修正申告書を提出した場合、過少申告加算税はかかりません。
支払うのは本税と延滞税だけで済みます。
次に、事前通知が届いた後であっても、本格的な調査で指摘を受ける前に修正申告を行えば、過少申告加算税は5%まで軽減されます。
そして、調査で指摘を受けてからようやく修正申告を行った場合には、原則どおり10%から最大40%の加算税が課されることになります。
この違いは非常に大きいでしょう。
今こそ冷静に電卓を叩いて正しい判断を
脱税のペナルティを甘く見ている経営者の方は、リスクの計算を見誤っていることがほとんどです。
もし今、不適切な会計処理に心当たりがあるのなら、やるべきことは一つです。
税務署から連絡が来る前に、自主的に修正申告を行ってください。
それだけで、数百万円から数千万円規模のキャッシュアウトを防げる可能性があります。
いつバレるかわからないという不安を抱えたまま、加算税と延滞税という見えない負債を膨らませ続けるのと、ここで思い切って清算してクリーンな経営に戻るのと、どちらが賢い経営判断でしょうか?
自主的な修正申告こそが、最もコストパフォーマンスの高い決断だと思います。


