忙しいのに利益が残らない会社に共通する、たったひとつの習慣

毎日朝早くから夜遅くまで働いて、従業員も一生懸命動いてくれている。
売上だって去年より落ちていない。
それなのに、通帳の残高を見ると増えるどころか減っている気がする。

そんな悩みを抱えた中小企業の経営者の方の相談を受けることがあります。
皆さん決してサボっているわけではありません。
むしろ誰よりも真剣に、誠実に事業と向き合っておられる方ばかりです。

では、なぜこれほど頑張っているのに利益が残らないのでしょうか。

長年、多くの決算書を見てきた税理士として、ひとつの共通点に気づきました。
それは、ある判断を繰り返しているということです。

その判断とは、競合より安くしようとすることです。

もちろん、価格を下げれば売れやすくなるという考え方は、一見すると正しいように思えます。
しかし実際には、この判断が会社を苦しめる原因になっているケースが少なくありません。

本記事では、なぜ値下げが経営を圧迫するのか、そのメカニズムをお伝えします。

目次

安さで集まるお客様の正体

価格を下げると確かにお客様は増えます。
しかし、そこに集まる方々が、本当にあなたの会社を長く支えてくれる存在かどうかは別の問題です。

マーケティングの世界には価格競争の罠(低価格の罠)というものがあります。
これは、価格を下げすぎると品質を重視するお客様が離れ、価格だけを見るお客様ばかりが集まってしまう現象を指しています。

つまり、安さに惹かれて来た方は、商品やサービスの本当の価値ではなく、お得かどうかだけで判断しているケースが多いということです。

あなたの会社の顧客リストには、どんな方が多いでしょうか。

こうしたお客様は、次にもっと安い選択肢が見つかれば、あっさりと離れていきます。
その一方で、価格に見合う価値を求める良質なお客様は、あまりに安い価格を見ると品質への不安を感じ、選択肢から外してしまうことがあります。

結果として、手間がかかる割に利益が残らないお客様ばかりが増えていく。
これが、忙しいのに儲からないという状況の入り口になっています。

初回無料や大幅値引きが招くもの

新規のお客様を獲得するために、初回無料や大幅値引きといった施策を行う会社は多いものです。
まずはお試しで使ってもらい、良さを知ってもらえればリピーターになってくれるだろうという期待があります。

しかし現実には、その期待どおりにいかないことが少なくありません。

安さに惹かれて来たお客様は、商品やサービスの品質よりも、どれだけお得だったかという点に関心を持っています。
そのため、無料期間が終わったり価格が戻ったりすると、あっさりと離れてしまうケースが目立ちます。

さらに厄介なのは、こうした施策を繰り返すうちに、本来あなたの会社の価値を理解してくれていたお客様まで離れていくことがあるという点です。

安売りが常態化すると、会社の雰囲気や対応にも変化が出てきます。
現場は忙しくなり、ひとりひとりのお客様への丁寧な対応が難しくなっていきます。
それを敏感に感じ取った良質なお客様が離れていくことは珍しくありません。

一度下げた価格は元に戻せない

今は厳しいから安く受けておいて、状況が良くなったら値上げしよう。
そう考える経営者の方もいらっしゃいます。しかし、この見通しは残念ながら甘いと言わざるを得ません。

行動経済学には参照点依存性という考え方があります。
人は価格の高い安いを絶対的な金額ではなく、自分の中にある基準と比較して判断するというものです。

たとえば、1万円の商品を5千円で販売したとします。
するとお客様の頭の中では、この商品は5千円が妥当だという基準ができあがります。

後になって1万円に戻そうとすると、お客様は元の値段に戻っただけとは感じません。
5千円も値上げされたと感じてしまいます。

さらに厄介なのは、人間は得をする喜びよりも損をする痛みを強く感じるという性質を持っていることです。
最初に安くしたときの喜びより、後から値上げしたときの不満のほうが大きくなります

この反発が怖くて、経営者は一度下げた価格を戻せなくなります。
原材料費や人件費が上がっても、お客様が離れることへの恐怖から価格を据え置き、自社の利益を削り続けることになりかねません。

現場で起きている崩壊

安売りの影響は、財務面だけにとどまりません。もっと深刻なのは、組織へのダメージです。

利益率が低いと、数をこなさなければ会社が回りません。
従業員は次々と来る仕事をさばくことに追われ、本来やりたかった丁寧な対応ができなくなっていきます。

さらに、価格だけで選んだお客様の中には、要求が厳しかったり、理不尽な対応を求めてきたりする方もいます。
従業員はそうした方にも笑顔で対応し続けなければなりません。

この負担が続くと、優秀な人材から順に離れていくことがあります。
自分の時間や能力を安売りする環境に、将来を感じられなくなるからです。

大量の離職が起き、サービスの質が下がり、さらにお客様が離れていく。
この悪循環の始まりは、往々にして安売りという判断にあります。

お客様を選ぶという発想

では、どうすればこの状況から抜け出せるのでしょうか。

答えはシンプルですが、実行には覚悟が必要です。

それは、お客様を選ぶということです。

すべてのお客様が、あなたの会社にとって良いお客様とは限りません。
価値を理解してくださらず、スタッフを疲弊させるお客様との取引を続けることは、長期的には会社を弱らせます。

他社はもっと安いですよと言われたとき、無理に合わせる必要はありません。
自社の品質やサービスに自信があるなら、その価値に見合った価格を堂々と提示してよいはずです。

もちろん、一時的にお客様が減ることへの不安はあるでしょう。
しかし、価格が上がっても残ってくださるお客様こそ、本当にあなたの会社を必要としてくれている方々です。

最後に

価格を下げてなんとかしようという経営判断からは脱却してください。

その決断が、あなた自身を守り、ご家族を守り、そしてあなたを信じてついてきてくれる従業員を守ることにつながります。

まずは明日の見積書から、少しだけ変えてみませんか。あなたの会社の価値を、あなた自身が信じてあげてください。

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わかお税理士
税理士(税理士登録番号:140275)、国際認証MBA(経営学修士)、ファイナンシャル・プランナー

20年以上の実務経験の中で、上場企業から中小零細企業まで100数十名の社長の経営・税務・資産形成を継続的に支援。
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