知らないと100万円損する?中小企業が使える「税額控除」の正しい活用法

はじめに
新しい機械を1,000万円で購入するとき、実際にいくら支払っているか意識したことはありますか。
税務の知識を持った経営者は、同じ機械を実質900万円で手に入れています。
なぜなら、税額控除という制度を使って、購入額の10%相当の税金を差し引いているからです。
多くの経営者が節税イコール経費を増やすことだと考えています。
もちろんそれも有効な方法ですが、実はそれ以上に効果が高いのが税額控除という仕組みになります。
経費を増やして利益を圧縮するのではなく、計算された税金から直接金額を差し引くため、まさに国からのキャッシュバックと呼べるでしょう。
この記事では、中小企業だけが使える強力な優遇税制について、その仕組みから具体的な活用方法まで詳しく解説していきます。
即時償却と税額控除、どちらを選ぶべきか
優遇税制を活用する際、経営者は一つの重要な選択を迫られます。
それが即時償却と税額控除のどちらを選ぶかという判断です。
この二つの違いを正しく理解しておくことが、賢い節税の第一歩となります。
即時償却・特別償却という選択肢について
通常、1,000万円の機械を購入した場合、耐用年数に応じて毎年少しずつ経費として計上していきます。
たとえば耐用年数が10年であれば、毎年100万円ずつ減価償却(定額法の場合)を行うことになります。
しかし、優遇税制を利用すれば、購入した年に1,000万円全額を経費として処理することが可能です。
これを即時償却と呼びます。
購入価額の30%を特別償却する制度もあります。
この方法のメリットは、その年の利益を大きく圧縮できる点にあります。
特に即時償却は当期の納税額を劇的に減らせるため、手元の資金を確保しやすくなるでしょう。
一方で注意すべき点もあります。
翌年以降は経費として計上する減価償却費が少なくなるため、翌年以降の税負担は増えます。
結果として、トータルで見た納税額は変わりません。
あくまでも課税のタイミングを先送りにしているだけという点を忘れないでください。
税額控除という選択肢について
税額控除は、通常の減価償却を行いながら、さらに購入額の7%から10%を法人税額から直接差し引ける制度です。
1,000万円の設備投資をした場合、70万円から100万円の税金が安くなる計算になります。
この方法の最大のメリットは、税金そのものが消滅する点です。
単なる先送りではなく、永久に税負担が軽減されるため、長期的なキャッシュフローでは有利といえます。
状況に応じた選び方の指針
では、どちらを選ぶべきでしょうか。
向こう2、3年は事業の種まきの時期で税額控除を活用できるほど利益が見込めない場合は、特別償却で経費をつくっておくという選択肢が有効です。
一方、利益が安定しており、長期的に会社にお金を残したいと考えているなら、税額控除を選ぶ方が賢明です。
基本的な考え方として、お金を生み出す節税を目指すなら税額控除が正解となります。
単なる先送りではなく、永久に税金が減るという点は非常に大きなアドバンテージでしょう。
中小企業が押さえておくべき3つの投資減税制度
具体的にどのような制度があるのか、中小企業が積極的に活用したい3つの主要制度を紹介します。
手軽に使える中小企業投資促進税制
最もポピュラーな制度が中小企業投資促進税制です。
この制度の魅力は、面倒な事前認定が不要という点にあります。
要件を満たす設備を購入すれば、確定申告の際に適用を受けられます。
対象となる設備は、160万円以上の機械装置、120万円以上の測定工具および検査工具、70万円以上のソフトウェア、3.5トン以上の貨物自動車などです。
特典としては、取得価額の30%を特別償却するか、7%の税額控除を選択できます。
ただし、税額控除を選べるのは資本金3,000万円以下の法人に限られます。
とりあえず設備を購入するという場面で、後からでも適用できる使い勝手の良さが、この制度の大きな特徴といえるでしょう。
効果絶大な中小企業経営強化税制
少し手間はかかりますが、その分だけ見返りが大きいのが中小企業経営強化税制です。
事前に国から経営力向上計画の認定を受ける必要があります。
計画書を作成して申請し、認定を取得するという手続きが発生しますが、その分だけ優遇幅が拡大されます。
対象となる設備は幅広く、機械装置、工具、器具備品、建物附属設備、ソフトウェアなどが含まれます。
特典は非常に魅力的で、即時償却か10%の税額控除を選択できます。
税額控除については、資本金3,000万円を超える法人は7%となります。
即時償却を選択できる数少ない制度という点が大きな特徴です。
1,000万円の機械を買って、1,000万円全額をその年の経費にするというダイナミックな節税が可能になります。
計画認定の手間をかけてでも、狙う価値は十分にあるといえます。
決算直前の味方になる少額減価償却資産の特例
大きな設備投資の予定はないが、利益調整をしたいという場面で活躍するのがこの特例です。
従業員用のパソコンや応接セットなど、1個あたり30万円未満のものであれば、年間合計300万円まで購入した年に全額経費として処理できます。
通常、10万円以上のパソコンなどは数年かけて減価償却しなければなりませんが、この特例を使えば一括で経費計上が可能です。
決算月にあと少し利益を削りたいというニーズに対して、最も手軽に応えてくれる制度といえるでしょう。
人への投資も税金を安くする|賃上げ促進税制の活用
設備投資だけでなく、社員への給与アップも節税につながります。
それが賃上げ促進税制です。
この制度は、社員の給与総額を前年度より一定割合以上増やした場合に、その増加額の一部を税金から差し引いてくれる仕組みになっています。
基本的な控除率は増加額の15%ですが、条件を満たせば上乗せされていきます。
給与の増加率が2.5%以上であれば15%が上乗せされ、教育訓練費を増やせばさらに10%が加算されます。
くるみんなどの認定を取得していれば5%の上乗せもあり、最大で45%もの控除を受けられる可能性があります。
あなたの会社では、この制度を活用できる余地はないでしょうか。
赤字企業でも諦める必要はない
うちは赤字だから税額控除なんて関係ないと思っている経営者もいるかもしれません。
しかし、この賃上げ促進税制には心強いポイントがあります。
赤字で税金が発生せず控除を使い切れなかった場合でも、その控除分を最長5年間繰り越すことができるようになりました。
つまり、今は赤字でも、将来黒字に転換したときに過去の賃上げ分の税金を差し引いてもらえるということです。
赤字の状況にあっても、将来のV字回復を見据えて計画的に賃上げを行うことは、合理的な経営判断となりえます。
目先の損益だけでなく、中長期的な視点で制度活用を考えてみてください。
絶対に避けたいタイミングのミス
これらの優遇税制を活用する際に、一つだけ致命的な落とし穴があります。
それが事業供用というルールへの対応です。
よくある失敗例を紹介しましょう。
決算日が3月31日の会社で、今期は利益が出そうだと気づいた社長がいました。
そこで3月30日に1,000万円の機械を発注し、代金を振り込みました。
これで今期の経費になるはずだと安心していたところ、実はこの取引では今期の節税にはなりませんでした。
なぜでしょうか。
税法上、減価償却や特例の適用は購入した日ではなく、実際に使い始めた日が基準になるからです。
この日を事業供用日と呼びます。
3月31日までに機械が工場に届き、据え付けを完了し、稼働できる状態になっていなければ、今期の経費として認められません。
当然、税額控除も受けられないことになります。
決算ギリギリの注文で納品が来期にずれ込んでしまうと、キャッシュだけが出ていき、税金は安くならないという最悪の資金繰りに陥ります。
設備投資を検討する際は、納期を十分に確認し、余裕を持ったスケジュールで進めることが不可欠です。
まとめ
会社を成長させるためには投資が欠かせません。
新しい機械、効率的なシステム、優秀な人材への投資は、すべて未来への種まきといえます。
そして国は、種まきをする会社を全力で支援しようとしています。
中小企業投資促進税制も、賃上げ促進税制も、国が配っている高額の割引クーポンのようなものです。
これを使わずに定価で投資をするのは、経営戦略としてあまりにもったいない話でしょう。
重要なのは事前の設計です。
中小企業経営強化税制を使うための計画認定には、1か月から2か月程度の時間がかかります。
決算月に慌てて動き始めても、認定取得が間に合わないケースは少なくありません。
今日からできる第一歩として、今期あるいは来期に予定している設備投資や採用計画をリストアップしてみてください。
そして、購入契約を結ぶ前に、必ず顧問税理士にこう相談してください。
この投資で使える税制優遇はありますか。事前の申請は必要ですか。
その一言が、100万円単位のお金を会社に残すかどうかを左右します。
賢く制度を活用して、国の支援を味方につけながら会社を強くしていきましょう。


