設備投資で税金が軽くなる?中小企業経営強化税制をやさしく解説

新しい機械を導入したい、システムを入れ替えたい。
でも、購入にはまとまった資金が必要だからどうしよう。もう少し様子を見ようか・・・

そんな悩みを抱えている経営者の方は多いのではないでしょうか。

実は、こうした設備投資を国が応援してくれる制度があります。それが中小企業経営強化税制です。
この制度を使えば、設備投資にかかる税金の負担をぐっと軽くできます。

今回は、この制度の仕組みと使い方を、できるだけわかりやすくお伝えします。

目次

この制度の基本

中小企業経営強化税制とは、会社の稼ぐ力を高めるための設備投資を、税金の面から後押ししてくれる制度です。

ポイントは3つあります。

まず、この制度を使うには、国から経営力向上計画の認定を受ける必要があります。これは、会社がどのように経営力を高めていくかを示した計画書のことです。

次に、令和9年3月31日までに行う設備投資が対象となっています。期間限定の制度ですので、活用を検討されている方は早めの準備をおすすめします。

そして最大の魅力は、認定を受けた上で設備投資を行うと、2つの税制優遇のうち、自社に有利な方を選べる点です。

選べる2つのメリット

この制度で選べる優遇措置は、即時償却税額控除の2種類です。
それぞれ効果が異なりますので、会社の状況に合わせて選ぶことが大切です。

即時償却とは、購入した設備の取得価額全額を、その年の経費として計上できる仕組みです。
その年の利益を大きく圧縮できるため、納税額を抑えて手元の現金を確保したいときに効果的です。
今年は特に利益が出そうだという年に向いています。

税額控除とは、購入した設備の取得価額の最大10パーセントを、法人税から直接差し引ける仕組みです。
支払う税金そのものが減るため、複数年で見たときの節税効果が高くなります。毎年安定して利益が出ている会社に向いています。

なお、資本金が3,000万円を超えて1億円以下の会社の場合、税額控除率は7パーセントになります。
また、税額控除にはその年度の法人税額の20パーセントという上限があり、控除しきれなかった分は1年間繰り越すことができます。

建物やその附属設備については、即時償却ではなく特別償却(基本15パーセント)または税額控除(基本1パーセント)が適用されます。
従業員の給与を一定割合以上増やすなどの要件を満たせば、さらに優遇される場合もあります。

あなたの会社は対象になる?

この制度を使えるのは、いくつかの条件を満たす中小企業です。
自社が当てはまるかどうか、確認してみましょう。

まず大前提として、青色申告をしている会社であることが必要です。

会社の規模については、資本金または出資金が1億円以下であれば対象となります。
資本金や出資金がない場合は、常時使用する従業員数が1,000人以下であれば対象です。

ただし、大企業の子会社は対象外となります。
たとえば、資本金1億円超の大規模な会社に株式の半分以上を所有されている場合や、複数の大規模な会社に株式の3分の2以上を所有されている場合は利用できません。

また、直近3事業年度の所得金額の平均が15億円を超える会社も対象外です。

どんな設備が対象になる?

この制度では、会社の稼ぐ力を高めるための幅広い設備が対象となります。
ただし、それぞれ最低取得価額が決まっています。

機械および装置:160万円以上
工具・器具および備品:30万円以上
建物およびその附属設備:1000万円以上
建物附属設備:60万円以上
ソフトウエア:70万円以上

気をつけていただきたいのは、新品の設備に限られるという点です。中古品は対象外となります。
また、自社で使うための設備が対象であり、他社にレンタルやリースするための資産は対象外です。
娯楽業(映画業を除く)や一部の飲食店業など、対象外となる事業もありますのでご注意ください。

制度を利用するための5つのステップ

この制度を確実に使うためには、手続きの順番がとても重要です。
特に、設備を購入するタイミングには注意が必要です。

ステップ1

導入したい設備がどの類型に当てはまるかを確認します。
A類型は工業会がすでに性能を証明している設備から選ぶもので、比較的シンプルな手続きです。
B類型は自社独自の投資計画で投資利益率が7パーセント以上になることを証明する必要があり、より戦略的な投資向けです。

ステップ2

証明書または確認書を入手します。
A類型の場合は設備メーカーを通じて工業会に証明書の発行を依頼します。
B類型の場合は税理士や公認会計士による事前確認を経て、経済産業局に確認書を申請します。
この書類の日付は、次のステップで申請する経営力向上計画の申請日よりも前でなければなりません。

ステップ3

経営力向上計画を作成し、事業を管轄する省庁に提出して認定を受けます

ステップ4

設備を取得して事業での使用を開始します。
原則として計画認定後に設備を取得しますが、申請日から60日以内であれば、計画申請前に取得することも可能です。
ただしその場合でも、設備取得の前に証明書または確認書の申請を済ませておくこと、そして設備を取得した年度内に計画の認定を受けることが必須条件です。

ステップ5

確定申告の際に即時償却または税額控除の適用を受ける旨を記載し、認定計画の写しなどの必要書類を添付します。

まとめ

中小企業経営強化税制は、設備投資を考えている会社にとって非常に有効な制度です。

証明書取得から計画認定、設備取得という手続きの順番を守ることが成功のポイントです。

手続きは少し複雑に感じるかもしれませんが、その分だけ大きなメリットがあります。
まずは顧問税理士など専門家に相談するところから始めてみてはいかがでしょうか。

 

【免責事項】
本記事は2025年12月時点の税制に基づいて作成されています。
税制は随時改正されるため、実際の適用にあたっては最新の情報を確認し、必ず税理士等の専門家にご相談ください。

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わかお税理士
税理士(税理士登録番号:140275)、国際認証MBA(経営学修士)、ファイナンシャル・プランナー

20年以上の実務経験の中で、上場企業から中小零細企業まで100数十名の社長の経営・税務・資産形成を継続的に支援。
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