新規顧客ばかり追っていませんか?リピーター戦略で利益を守る方法

「広告費をかけて新規顧客を集めても、結局またゼロからのスタートになる」
「頑張って営業して売れたのに、そのお客様は一度きりで終わってしまう」
そんな経験はありませんか?
中小企業の多くは、“新規開拓”に偏りすぎた営業活動をしています。その結果、売上は上がっても利益が残らず、慢性的な資金不足に陥る。
実はこれ、やり方が間違っているというより、発想の順番を変えるだけで大きく改善できる問題です。
今回は、「なぜリピーター戦略が利益体質を作るのか?」「どうすれば一度きりのお客様を常連にできるのか?」を、わかりやすく解説します。
なぜリピーターが重要なのか?──3つの理由
まず、リピーターの重要性を改めて押さえておきましょう。
1. 販促コストがかからない
新規のお客様を1人獲得するには、広告、営業、キャンペーンなど、いろんな手間とお金がかかります。一方、リピーターは「もう体験済み」。すでに信頼も獲得済み。だから、わざわざ宣伝を打たなくても自然に買ってくれる。
つまり、販促コストがほぼゼロで、売上が上がるという最強の状態が作れるのです。
2. 従業員のモチベーションが上がる
「またあのお客様が来てくれた!」「この前のサービスを喜んでくれていた!」
こうしたポジティブな反応があると、スタッフもやる気になります。自分の仕事がちゃんと喜ばれていると感じることで、職場の雰囲気も良くなり、離職率の低下にもつながります。
3. 「売れる空気」が店や会社に生まれる
リピーターが多いと、「ここは安心できる」「あの人がいるから通ってる」という空気ができて、周りの新規客にも好印象を与えます。
常連が多い店ほど、なぜか新しい人も来やすい。逆に、ガラガラの店は入りづらい。これも、リピーターの力です。
多くの人がハマる「リピーターの落とし穴」とは?
では、どうすればリピーターが増えるのか?
その前に、やってはいけないリピート戦略を知っておきましょう。
それは、「同じ体験を、何度も繰り返してもらうこと」を前提にしているやり方です。
「また来てね」「同じ商品をまた買ってね」というやり方は、一見自然ですが、実は長期的に見ると非効率で、価格競争に巻き込まれやすい構造になります。
なぜ「同じ体験リピート」はうまくいかないのか?
人は常に「今よりもいいものがあるのでは?」と考える生き物です。
これは「損したくない」という本能(=損失回避思考)が働いているからです。
つまり、たとえあなたの商品に満足していても、「もっと安くて、もっと良いものがあるかもしれない」と探し始めてしまう。
その結果どうなるか?
→ 他社と比べられ、値引き合戦に巻き込まれ、利益が削られます。
さらに、「次も来てくれるように、ちょっとおまけしておこう」「今回は無料でやってあげよう」と、ついサービス過剰になり、儲からないリピーターが出来上がってしまいます。
正しいリピーター戦略:2つの視点
利益が残るリピーター戦略には、2つの切り口があります。
1. 異なる目的でリピートしてもらう(異経験リピート)
同じ商品を「別の理由」で購入してもらう工夫です。
例:パン屋さんの場合
- 自分用に買っていたパン → 今度は手土産や贈り物として購入
- 朝食用に買っていたパン → 次は昼の軽食として活用
- 家族用に買っていたパン → 次は職場の差し入れとして購入
同じパンでも、「買う目的」が変わるだけで、リピート率が大きく変わります。
異なる目的=新しい“買う理由”を設計することで、リピーターの価値は何倍にも膨らみます。
2. 時間の流れに沿って買ってもらう(時系列リピート)
リピートを「次に必要になるもの」として自然に組み込むやり方です。
ここでおすすめなのが、モノ→サービス→モノ→サービスという「交互連鎖モデル」です。
例:紅茶専門店のケース
- 【モノ】紅茶の販売 →
- 【サービス】紅茶の淹れ方教室 →
- 【モノ】オリジナルティーカップ販売 →
- 【サービス】アフタヌーンティーイベント →
- 【モノ】イベント限定ギフト販売
このように、「買ったら終わり」ではなく、「買ったからこそ次がある」流れを作ることが、時系列リピートのポイントです。
リピーターを作る3つの実践アクション
それでは、どうやってリピーター戦略を実際のビジネスに取り入れれば良いのか?
今すぐ実践できる3つのアクションをご紹介します。
アクション① 「用途の切り替えメッセージ」を添える
「自宅で楽しむだけでなく、贈り物にも最適です」
「職場の差し入れとしても喜ばれています」
「会議やイベントのお供にどうぞ」
こういった“別の使い道”を伝えるだけで、「じゃあ次はそれで使ってみよう」と顧客の行動が変わります。
アクション② 体験の連鎖を設計する
1回目の購入が終わったタイミングで、次の提案をあらかじめ設計しておきます。
たとえば…
- パンを買った翌週、「パンに合うジャムフェア」の案内を送る
- セミナー後に、「参加者限定フォローアップ動画」を案内する
- コンサル契約が終わる前に、「定期フォローアップサービス」の提案をする
「次にこれがあるんだ」と思わせるだけで、自然と再購入へとつながります。
アクション③ 会員化・継続サービスへの導線をつくる
1回ずつの売り切りではなく、継続して使ってもらう仕組みを設けます。
- 月額制のサブスク
- ポイント会員制度
- 年間契約のコンサルサービス
リピーターが“自動化”されれば、安定収益の柱ができます。
まとめ:利益体質をつくるのは、新規開拓ではなく“リピーター戦略”
「売上はあるのに利益が残らない」という悩みの裏には、新規開拓に偏った経営スタイルがあります。
広告費、営業人件費、キャンペーン費用…これらをかけて新しいお客様を毎回集めても、またゼロからのスタートになってしまう。
このループを抜け出すには、一人ひとりのお客様に「2回目、3回目」の理由を用意してあげることが重要です。
最後に:こんな視点で自社を見直してみてください
- 自社の商品は「同じ体験」しか提供していないか?
- 購入目的を変える“異なる提案”ができているか?
- 初回購入のあとに、次の体験を設計できているか?
- 「継続して通う理由」が仕組みとして存在しているか?
これらを一つずつ整えることで、リピーターは「偶然」ではなく「必然」で生まれます。
利益が残る経営をつくるには、新しいお客様を追いかける前に、「いま来てくれているお客様」との関係性を深めることが一番の近道です。