機械やソフトを買うと税金が戻る?中小企業向け優遇制度の基本

目次

はじめに

会社を経営していると、いつかは設備投資のタイミングがやってきます。
古くなった機械の買い替え、業務効率化のためのソフトウェア導入など、理由はさまざまです。

こうした設備投資には当然ながらお金がかかります。
しかし、実は国が中小企業の成長を応援するために、設備投資をした会社の税金を安くしてくれる制度があることをご存じでしょうか。

その名も中小企業投資促進税制です。

この制度は、いわば国が用意してくれた設備投資向けの割引クーポンのようなものです。
条件を満たせば、支払う法人税を減らすことができます。
せっかく使える制度があるのに、知らないまま損をしてしまうのはもったいないです。

この記事では、この制度の基本的な仕組みとメリットを、専門用語をできるだけ使わずにわかりやすく解説していきます。

この制度でできること

まずは、この制度の基本ポイントを押さえておきましょう。

この制度は、中小企業が新品の機械やソフトウェアなどを購入したときに、税金の負担を軽くできる仕組みです。
対象となるのは、きちんと帳簿をつけて青色申告をしている会社で、令和9年3月31日までに取得した設備が対象となります。

つまり、今まさに設備投資を検討している会社にとっては、活用のチャンスがあるということです。

選べる2つのメリット

この制度の大きな特長は、2つのメリットのうちどちらかを選べる点にあります。
それぞれの仕組みを見ていきましょう。

1つ目:特別償却(30%)

これは、購入した設備の価格の30%を、通常の減価償却に上乗せして経費にできる仕組みです。

経費が増えるとその分だけ利益が減り、結果として初年度の法人税を抑えることができます。
将来にわたって少しずつ経費にするはずだった金額を、購入した年にまとめて前倒しで計上できるイメージです。

ただし、これは税金の支払いを先送りにする効果であり、長い目で見ると支払う税金の総額は変わらないという点は覚えておいてください。

2つ目:税額控除(7%)

こちらは、購入した設備の価格の7%を、計算された法人税から直接差し引ける仕組みです。

先ほどの特別償却が税金の先送りだったのに対し、こちらは税金そのものを減らす効果があります。
つまり、差し引いた分の税金は将来も払う必要がなく、完全な節税になります。

ただし、この税額控除には2つの注意点があります。

まず、利用できる会社に制限があり、資本金3,000万円以下の法人などが対象です。
次に、控除できる金額にはその事業年度の法人税額の20%までという上限があります。
もし上限を超えて使い切れなかった分があれば、翌年に繰り越して使うことも可能です。

どちらを選ぶべき?

2つのメリットの違いを整理すると、次のようになります。

特別償却は、経費を増やして利益を圧縮し、初年度の税金を抑える方法です。
一方、税額控除は、計算された税金を直接減らす方法です。

最も重要な違いは、特別償却が税金の繰り延べであるのに対し、税額控除は永久的な税金の減額である点です。

一般的には、直接的に税金を減らせる税額控除のほうが有利なケースが多いです。

しかし、税額控除は黒字でなければ使えません。繰り越しが認められるのはわずか1年間です。

よって、当期と翌期は事業の初期投資がかさんで赤字または黒字スレスレの見込み、2年後以降に軌道に乗るというストーリーの場合などは特別償却で欠損金を作っておいた方が良いでしょう。

どちらが自社にとって有利かは、会社の状況によって異なります。
少なくとも翌期までの業績見込みを織り込んで判断しましょう。

対象となる会社の条件

この制度を使うための前提条件は、青色申告を行っていることです。

そのうえで、原則として資本金または出資金が1億円以下の会社が対象となります。
ただし、資本金が1億円以下でも、親会社が大規模法人である場合など、対象外になるケースもありますのでご注意ください。

対象となる設備の条件

どんな設備でも対象になるわけではありません。

まずは3つの大原則を押さえましょう。

1つ目は、新品であることです。中古品は対象外となります。

2つ目は、自社の事業で使うことです。他社にレンタルする目的の設備は対象外です。

3つ目は、対象となる業種で使うことです。製造業、建設業、小売業、情報通信業など多くの業種が対象ですが、一部対象外の業種もあります。

これらを満たしたうえで、対象となる主な設備と金額の目安は以下のとおりです。

機械および装置は1台160万円以上

測定工具や検査工具は1台120万円以上
(1台の価額が30万円以上、かつ、年間複数台の合計で120万円以上でも可)

ソフトウェアは1つ70万円以上
(その期において購入したソフトウエアの合計額が70万円以上でも可)

貨物自動車車両総重量3.5トン以上の普通自動車が対象となります。

なお、パソコンやサーバーは現在この制度の対象外となっています。
これらへの投資を検討している場合は、別の制度の活用を検討する必要があります。

手続きの流れ

この制度のメリットを受けるには、事業年度が終わった後の確定申告で手続きを行います。

具体的には、確定申告書にこの制度を利用する旨と金額を記載し、計算に関する明細書を添付して提出します。

手続き自体はシンプルですが、書類の作成には専門知識が必要な部分もあります。
税理士などの専門家に相談すれば、申請漏れなく確実にメリットを受けることができますので、ぜひ活用をご検討ください。

まとめ

この記事でお伝えした重要なポイントをまとめます。

中小企業投資促進税制は、中小企業が新品の設備を購入した際に使える、国からの税金優遇制度です。
メリットは30%の特別償却か7%の税額控除のどちらかを選べます。

特に税額控除は、資本金3,000万円以下の会社にとって直接的な節税効果があります。

利用するには、自社が対象者であるか、購入する設備が条件を満たしているかを確認し、確定申告で手続きを行う必要があります。

設備投資は会社の未来をつくる大切な一歩です。
この制度を上手に活用して、会社の成長につなげていただければ幸いです。

【免責事項】
本記事は2025年12月時点の税制に基づいて作成されています。
税制は随時改正されるため、実際の適用にあたっては最新の情報を確認し、必ず税理士等の専門家にご相談ください。

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税理士(税理士登録番号:140275)、国際認証MBA(経営学修士)、ファイナンシャル・プランナー

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