リピーター獲得の本質とは?顧客心理から考えるマーケティング戦略

目次

はじめに:なぜ今リピーターが事業の生命線なのか

新規顧客の獲得コストは年々上昇しています。
広告費をかけても思うような成果が出ない、そんな悩みを抱える経営者の方も多いのではないでしょうか。

実は、事業を安定させる鍵は新規開拓だけではありません。
既存顧客との関係を深め、何度も選ばれる存在になること。
つまり、リピーター戦略こそが、持続的な成長の土台となるのです。

リピーター戦略が欠けたビジネスは、よく穴の開いたバケツに例えられます。
どれだけ新しいお客様を集めても、底から流れ出てしまっては水は溜まりません。
まず穴を塞ぐこと、つまり、顧客が離れない仕組みを作ることが先決です。

その上で、確実な方法で少しずつお客様を増やしていく。
やがて仕組み化が進めば、お客様がお客様を呼ぶ好循環が生まれます。
これが目指すべきゴールの姿といえるでしょう。

リピーターがもたらす3つの好循環

リピーターが増えると企業にはさまざまな恩恵がもたらされます。

まず、販促コストの削減です。
新規顧客を獲得するコストは、既存顧客を維持するコストの5倍から16倍ともいわれています。
リピーターが増えれば、この高コストな新規開拓への依存度が下がり、同じ売上でも利益が出やすい体質へと変わっていきます。

次に、従業員のモチベーション向上があります。
長くお付き合いのあるお客様からの感謝の言葉は、従業員の承認欲求を満たします。
上司からの評価以上に、お客様からの純粋な「ありがとう」が仕事のやりがいを生み出します。
この実感が定着率の向上にもつながっていくのです。

そして、経営者自身の精神的な安定も見逃せません。
安定した収益基盤はお金の心配を減らし、経営者の心にゆとりをもたらします。
中小企業の業績は経営者の心の状態に大きく左右されるものです。
経営者が穏やかでいられると、その空気は職場全体に広がり、さらに売上向上という正のスパイラルが生まれるのです。

顧客の意思決定を動かすものとは

ここで一つ、大切な原則をお伝えします。

人は感情で決断し、理屈で言い訳をする

これがマーケティングを考える上での出発点です。

たとえば同じ水がA店で100円、B店で80円だったとします。
理屈で考えればB店を選ぶはずです。
しかしA店が親友のお店で、B店が苦手な人のお店だったらどうでしょうか。

おそらく多くの方がA店を選ぶはずです。
でも理由を聞かれると、友人の店だからとは言わず、ポイント還元率や品揃えといった合理的な説明をしてしまう。
これが人間の心理なのです。

このメカニズムを理解すると、顧客アンケートの回答がいかに表面的なものかがわかります。
価格が安いから選んだという回答の裏には、言葉にならない感情が隠れているのです。

リピーターを生み出す仕組みの作り方

では、具体的にどうすればリピーターを増やせるのでしょうか。

最初のステップは、自社にとってのリピーターを定義することです。
定義がなければ目標も測定もできません。
漠然と「リピートを増やしたい」と思っているだけでは、戦略は機能しないのです。

その上で、リピートには3つの種類があることを押さえておきましょう。

1つ目は同経験のリピートです。
同じ商品を同じ目的で再度購入するパターン。
自分用に買ったワインを、また自分用に買うような場合がこれにあたります。

2つ目は異経験のリピートです。
同じ商品を違う目的で購入するパターン。
自分で飲んで美味しかったワインを、今度は贈り物として購入するケースです。

3つ目は時系列のリピートです。
ある商品の購入をきっかけに、関連する別の商品やサービスを購入するパターン。
ワインを買った方が、同封されていたワイン教室の案内に興味を持って申し込むような流れがこれにあたります。

ここで重要なポイントがあります。
同経験のリピートを直接狙ってはいけないということです。

あなたも経験がありませんか。
気に入った商品があっても、もっと良いものがあるかもしれないとつい探してしまうこと。
人間にはこうした損失回避の心理があるため、同じ商品だけでつなぎ止めようとすると、過剰なサービスや値引き競争に陥ってしまうのです。

注力すべきは異経験と時系列のリピートです。
これらを促すことで取引は多角的に深まり、やがてお客様は「今さら他に乗り換えるのは面倒だ」と感じるようになります。
この心理状態を作ることがリピーター戦略の最終目標なのです。

理想の新規顧客を引き寄せる方法

リピーターを生む仕組みができたら、その仕組みに合う新規顧客を獲得するフェーズに移ります。

お客様が契約に至るまでには、3つの心理的なハードルがあります。

まず思い出してもらうこと。
記憶に残るためにはギャップを作ることが有効です。
単なる強みのアピールではなく、ストーリーとして伝えるのがポイントになります。

たとえば「業界トップクラスの実績があります」という一方的な自慢ではなく、「ここまで来るのに3度の倒産危機がありました」と付け加える。
この「でもね」があることで、人間味のある物語に変わり、記憶に残りやすくなります。

次に選んでもらうこと。
比較検討の段階で決め手になるのは、価格やスペックではなく共感です。
浮き沈みのある物語を語ることで、応援したいという気持ちを引き出せます。

神戸のある酒蔵では、先代の夢だった幻の酒米作りへの挑戦と挫折、震災での蔵の全壊、そして解雇したはずの杜氏たちが瓦礫を撤去していた再起のエピソードを伝えていました。
この物語に共感した方々は、発売と同時にそのお酒を完売させたのです。

そして購入プロセスを理解してもらうこと。
商品に魅力を感じても、申し込み方法がわからなければ行動に移せません。
問い合わせから契約までの流れをステップごとに明記することで、お客様は安心して次の行動に踏み出せるようになります。

顧客満足の本質を理解する

最終的な目標は、価格ではなくあなただからとお願いされる関係を築くことです。
その鍵を握るのが顧客満足ですが、多くの方がその本質を見誤っています。

満足には2種類あります。

1つは所有満足
欲しいものが手に入ったという満足感です。
これはお金を払っている以上、当たり前のことであり、ここを満たしても満足度は0にしかなりません。

もう1つが真の顧客満足
この人から買ってよかったという関係性への満足感です。

自動販売機で水を買って冷えた水が出てきても、感謝は生まれませんよね。
それと同じで、ニーズを満たすだけでは顧客満足には到達しないのです。

真の満足を生み出すには、お客様の深層心理にアプローチする必要があります。

表面的な欲求であるニーズ、その欲求を満たす手段であるウォンツ、そして根源にある理想の状態であるウィッシュ。
この3段階を意識してみてください。

たとえば老眼鏡を探しているお客様がいたとします。
ニーズは近くのものをクリアに見たい。
ウォンツは老眼鏡が欲しい。
そしてウィッシュは孫からの手紙に返事を書きたい。そしていつまでも仲良くいたいということかもしれません。

ある眼鏡店では、老眼鏡はありますかと尋ねられた際に即答せず、どうされましたかと問いかけました。
すると孫からの手紙という背景が見えてきたのです。

そこで、店員は眼鏡の話をせず、お孫さんの話に寄り添いました。
その結果、お客様は価格も確認せずに、店員が勧めた商品を購入されたのです。

まとめ:明日から始められること

本日お伝えしたことを、ぜひ明日からの業務に活かしてみてください。

まず自社におけるリピーターを定義すること。
次に異経験と時系列のリピートを促す商品やサービスを考えること。
そしてあなた自身のストーリーを言語化すること。

お客様との会話では、質問に即答せず「どうされましたか」と問いかけてみてください。
この一言が、お客様の本当の願い(ウィッシュ)を引き出すきっかけになります。

これらの小さな積み重ねが、お客様にも従業員にも、そしてあなた自身にも心地よいビジネスの基盤となるはずです。

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わかお税理士
税理士(税理士登録番号:140275)、国際認証MBA(経営学修士)、ファイナンシャル・プランナー

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