“新規頼み”からの脱却は事業計画にあり、リピーター戦略を計画に組み込む方法

なぜ“新規顧客ばかり”を追ってしまうのか?
多くの中小企業の事業計画では、「集客=新規獲得」が中心になっています。
- チラシを配る
- SNS広告を出す
- 飛び込み営業を強化する
確かにこれらは即効性があります。
でも、そのぶんコストも労力もかかる上に、継続性がない。
さらに、新規獲得に頼りきった事業モデルは、広告費や営業コストに資金を奪われ、利益が残りにくい体質になってしまいます。
それを防ぐためには、最初の事業計画に「リピーター戦略」を組み込むことが重要です。
事業計画で見落とされやすい「リピーターの力」
計画段階でのリピーター設計には、次のような効果があります。
1. 販促コストの削減
新規顧客の獲得コストは、リピーターの5〜10倍とも言われています。
つまり、1人のリピーターを維持する方が、10人の新規を取るより効率がいいのです。
2. 売上の“予測可能性”が高まる
「いつ来るか分からない」新規客と違い、
リピーターは「次も来る」「来月も利用する」前提で売上を組み立てられるため、資金繰りが安定します。
3. 社内の空気が変わる
常連のお客様からの感謝の言葉や笑顔は、従業員のモチベーションにも直結します。
新人でも顔なじみのリピーターが来ることで、自信を持って接客できるようになります。
「同じ商品を何度も売る」=間違ったリピート設計
ここで注意が必要なのは、
「リピーター=同じ商品を同じ人に売り続ける」と誤解してしまうことです。
このモデルには限界があります。
なぜなら…
- お客様は飽きる
- 他社との比較が始まる
- 値引きやおまけで対応しがちになる
- 利益を削りながら無理やり継続させようとする
これでは、かえって利益が減る一方です。
【計画に組むべき】2つのリピート戦略
1. 異経験リピート戦略
同じ商品を、違う“目的”で再購入してもらう仕組みを設計します。
例:菓子店
初回の購入目的 | 次回の提案 | 商品の見せ方 |
---|---|---|
自分用おやつ | 贈答・手土産 | 高級感ある包装、メッセージカード付 |
会社での差し入れ | 季節限定パッケージ | 法人利用向けセット |
来店購入 | オンライン定期便 | サブスク型配送サービス |
このように、“使い道”をずらすことで、価格を上げても納得してもらえる構造ができます。
2. 時系列リピート戦略(商品連鎖型)
Aを買った人はBが必要になる…という設計を最初から計画に落とし込みます。
例:コンサルティングサービスの場合
- 無料セミナー(入口商品)
- 電子書籍(信頼構築)
- 月額メンバー制度(継続収入)
- 個別支援(高単価サービス)
- コミュニティ・年間契約へ移行
この流れを事業計画段階で「設計図として描いておく」ことがポイントです。
事業計画にどう落とし込むか?3つの視点
① 売上構成の比率を変える
最初から「新規:リピーター=5:5」や「3:7」のように、
リピーター売上を目標に入れておくと、施策も変わります。
例:
項目 | 新規重視型 | リピーター設計型 |
---|---|---|
販促費 | 月20万円 | 月10万円+会員制度構築 |
収益目標 | 月商100万(全新規) | 月商80万(うち60万が定期顧客) |
人員体制 | 営業偏重 | 顧客対応・顧客関係管理重視 |
② 顧客との接点を設計する
- 購入直後に次の提案(クロスセル)を組み込む
- メルマガ、LINE、会員ページで定期接点を維持
- 来店や購入のたびに「次につながる導線」を設ける
これを設計図に落とすと、スタッフ教育や業務設計にも反映しやすくなります。
③ “離脱しにくい”継続モデルに変える
単発購入ではなく、定期サービス化・サブスク化・会費化できないかを考えましょう。
- パンの定期便(毎月2回配送)
- 美容室の月額カット&カラー制度
- コンサルの年間顧問契約
これらは、売上の予測可能性を上げ、事業計画を“ブレない数字”で設計するための鍵になります。
成長する会社は「リピート前提」で設計されている
儲かっている会社の多くは、創業段階から「売り切りでは利益が残らない」と理解し、
構造として“繰り返し買われる仕組み”を設計しています。
これは、売上だけでなく、経営者自身の心理の安定にも直結します。
毎月ゼロから売上を積み上げる不安を抱えるより、
「今月は既に◯万円の仮固定売上がある」という状態で計画を立てられる方が、
判断の質が高まり、ミスも減り、投資の決断も早くなります。
まとめ:「リピートは結果」ではなく「設計」です
「いい商品だから、きっとリピートしてくれる」
この考え方は危険です。
リピートは、“結果”ではなく、“構造”によって生まれます。
そしてその構造は、最初の事業計画にこそ組み込むべき要素です。
今すぐできるアクション
- 「同じ商品をどう別の使い方で提案できるか?」を書き出す
- 商品購入後の“次の提案”を時系列で設計してみる
- 月商計画を「リピーター比率込み」で再構成してみる
- 「売って終わり」ではなく、「何度も使ってもらえる設計」を考える