なぜ売上が上がっても資金が残らないのか?事業計画に潜む“見落とし”

「売れているのに苦しい」現象の正体
「今月も売上はそこそこ出ている。なのに、なぜかお金が足りない」
「頑張って仕事は増えている。でも、資金繰りは一向に楽にならない」
そんな違和感を抱えている経営者は非常に多く、
これは売上と利益とキャッシュの構造が混在していることが原因です。
ここでまず確認しておきたいのは、「売上=儲け」ではないという現実です。
売上・利益・キャッシュの違いを“構造”として捉える
| 用語 | 定義 | よくある誤解 |
|---|---|---|
| 売上 | お客様が支払った金額 | 多ければ多いほど良いと思われがち |
| 利益 | 売上 − 原価 − 経費 | 利益率が低いと成長が苦しくなる |
| キャッシュ | 手元にある現金 | 中小企業経営では特に重要 |
売上がいくら増えても、仕入れ・人件費・家賃・広告費などが増えれば、
利益は減ります。しかも、入金のタイミングが遅ければ、
実際に使える現金=キャッシュも不足します。
つまり、利益とキャッシュが残る設計になっていなければ、
どれだけ「売れた」としても、会社の体力は削られていく一方です。
見落とされがちな事業計画の盲点:「利益構造の設計」がない
ほとんどの事業計画では、次のような項目はしっかりと記載されます。
- 売上目標
- 商品ラインナップ
- 仕入・販促・広告の見積もり
- 人材確保と業務フロー
- 顧客ターゲット
しかし、次の視点が抜け落ちていることが圧倒的に多いです:
✅「このビジネスモデルで、どうやって利益を出すのか?」
✅「どの収益パターンが最もキャッシュが残りやすいのか?」
事業計画が売上の計画だけで構成されていて、利益の構造設計がない状態では、
実行すればするほど赤字になる「がんばり倒産」を引き起こしかねません。
利益を“構造”から考える:モデル別の収益効率
商品やサービスの種類ごとに、利益の残り方はまったく異なります。
| モデル | 内容 | 利益効率 | よくある例 |
|---|---|---|---|
| モノの販売 | 商品や製品を販売 | 低 | パン、雑貨、洋服など |
| サービス提供 | 時間や技術の提供 | 普通〜低 | 美容、修理、コンサル |
| コンテンツ提供 | 情報・知識の販売 | 高 | 教材、動画 |
| 会費・利用料 | 継続収入・使用料 | 非常に高 | 月額制、サブスク、貸出 |
つまり、同じ「売上100万円」でも、
モノの販売で得られる利益と、会費ビジネスで得られる利益はまるで違うのです。
事業計画の段階で決めておくべき5つの利益設計要素
- 利益率(粗利)とコストのバランス
- 売上だけでなく、「いくら残るか」に焦点を当てる。
- 目標は「月商」ではなく「月利」。
- ビジネスモデルのスライド案
- モノ→サービス→コンテンツ→会費へスライドできる設計か?
- すべて一気に変える必要はないが、“移行計画”は必要。
- 仮固定売上の確保
- 継続課金・予約済サービス・会員制など、“見込める売上”があると計画が立てやすい。
- 精神的安定が、判断ミスを防ぐ。
- キャッシュフローの設計
- 回収サイト(入金タイミング)と支払サイトのズレは要注意。
- 毎月の“持ち出し額”をシミュレーションしておく。
- リスク時の“損切りルール”
- 「この数字を下回ったら見直す」という撤退・改善基準を決めておく。
「感覚でやってきた経営」から「仕組みで残す経営」へ
創業初期は、「直感」や「目の前の仕事」に全力投球せざるを得ない時期があります。
ただ、感覚ベースで続けているうちは、構造的な資金不足から抜け出すことはできません。
そこで必要なのが、計画段階での“仕組みの設計”です。
- 何を売るか
- どう売るか
- どの順番で売るか
- 何を毎月の“固定収入”にするか
これらを言語化し、見える化し、数字と組み合わせておくこと。
それこそが、キャッシュが残る経営への第一歩です。
まとめ:売上は「結果」、利益は「設計」次第で決まる
あなたの会社にお金が残らないのは、「売上が足りないから」ではありません。
事業計画に、利益を残す構造が組み込まれていないからです。
売上の数字に一喜一憂する前に、「その売上で、いくら残るのか?」を逆算しましょう。
そして、最初から“残せる”モデルを事業計画の中に設計しましょう。
今すぐできる3つの実践ステップ
- 自社の商品・サービスを「利益効率」で分類する
- 月商目標ではなく「月に残したい利益額」から事業計画を引き直す
- モノ販売・サービス提供だけでなく、「継続型収益」を組み込む案を考える
