税理士が教える「お金が増える経費」と「お金を溶かす経費」の見分け方

はじめに:「なぜ、節税してもお金が残らないのか?」
売上は伸びている。利益も黒字。税理士にも節税してもらっている。
それなのに、なぜかお金が増えていかない。
こうした状況に覚えがある中小企業の経営者は多いと思います。
こうしたモヤモヤを引き起こす原因の多くは、経費の使い方の質にあります。
節税とは「いかに効果的に経費を使うか」という設計の技術です。
今回の記事では、税理士として数百社の決算を見てきて感じる
お金が増える会社の経費の特徴+節税についてご紹介します。
経費を使うことが節税ではない
世の中には、「節税=経費を使えばいい」と思っていらっしゃる方がたくさんいます。
- 年度末に慌てて接待交際費を増やす
- 備品を必要以上に買って経費を増やす
- とりあえず高額の保険に契約する
こうした節税目当てのとりあえずの支出が、実は会社のお金が増えない根本原因です。
経費を使った節税のゴールは「税金を減らすこと」ではなく、将来に向けてお金が増える仕組みを作ることです。
つまり、経費を使うことがゴールではなく、経費を使ってお金が増える未来を設計することがゴールです。
その結果として税金が減るという順番です。
税金を減らすための経費は、浪費に終わることが多いです。
お金を溶かす経費の実例とその特徴
ではまず、お金が増えることに貢献しないお金を溶かす経費とはどういうものでしょうか?
以下によくあるパターンを挙げていきます。
過剰な接待飲食・ゴルフ・贈答品
仕事を取るための関係性づくりではあっても、数字で効果が測定できない接待交際費は、消える経費の代表例です。
さらに、交際費の損金算入限度額(年間800万円)を超えると、出費はあるのに税金計算の際に経費から除外されてしまいます。
過剰なオフィスや店舗内装
必要な内装はもちろんありますが、過剰なこだわりを施した高額内装は、顧客満足としても従業員満足としても回収が困難です。
さらに減価償却にも年数がかかるため、即効性も節税効果も薄いのが実情です。
生産性につながらない設備投資
補助金が出るので導入してみたはいいが、使いこなせていない機械やシステムなど。
使い方の説明すらされておらず、現場で誰も触れない装置になっているケースもよくあります。
共通点:すべて「利益起点で考えられていない」支出
上記のすべてに共通するのは、その支出からお金を生むところまでの設計ができていない点です。
つまり、
- その支出をしなかった場合と比べて、いつ、どれくらいのお金が増えるのか
- 何のために支出するのか
といった点が曖昧です。このような支出は、何となく使って回収されずに終わる可能性が高いです。
お金を増やす経費とは、未来の利益をつくる経費
逆に、お金を増やす経費には共通する2つの特徴+おまけがあります。
将来の売上・利益に貢献する
- 顧客満足向上のためのカスタマーサービス教育
- リピート率向上の仕組みづくり
- 現場の生産性を上げるためのIT導入
これらは数字で成果が測れる投資としての経費です。
たとえば、顧客データ管理システム導入で既存客の離脱率が10%下がれば、年間売上の上積みに繋がります。
経営者や社員の幸福度を高める
- 代表者の人間ドック
- 社員の福利厚生
- 社内コミュニケーション活性化
これらは直接的に利益にはつながりませんが、離職率の改善による採用コスト・教育コスト削減など、財務的インパクトは大きいです。
おまけ:税制優遇を受けられる設計になっている
おまけとして、次の制度を活用できれば、同じ支出でも税額を10万円〜100万円単位で圧縮することが可能です。
- 中小企業投資促進税制
- 中小企業経営強化税制
- 研修費の増加による賃上げ促進税制の上積み
しかし、これらはあくまでもおまけであって、適用を受けることが目的になってはいけません。
経費を使う前に問うべき5つの質問
- この支出は、半年後の利益につながりますか?
- 競合に勝つための差別化につながりますか?
- 社員のやる気・働きやすさに貢献していますか?
- この支出の成果を、数字で説明できますか?
- この支出を、もう一度自信を持ってやりますか?
「社長の時間」も溶ける経費になっていませんか?
実は、もう1つ重要な視点があります。
それは、「経費=お金」だけではなく「時間」も含まれるということ。
- 惰性で続けているミーティング
- 目的が曖昧な勉強会や会合
- 断れずに参加している飲み会
これらは社長自身の時間を溶かし、年間で数百万円レベルの損失を生んでいる可能性があります。
「お金が増える人」の思考法とは?
最後に、「お金を増やす経費」を使える社長には共通する特徴があります。
- 経費の目的を言語化できる
- 「やらないこと」を明確に決めている
- お金の使い方にブレがない
そして何より、
「税金を減らすためにお金を使う」のではなく、
「未来の利益を作るためにお金を使う、結果として税金が減る」という思考に立っています。
まとめ:「何に使うか」ではなく、「なぜ使うか」が未来を決める
経費を使う節税とは、小手先のテクニックではありません。
未来を見据え、経費の設計そのものを戦略化することです。
その結果として、お金が増える会社へと進化していきます。
あなたの会社の経費は、「お金を増やしていますか?」「お金を溶かしていますか?」
