資金計画の「型」と税金の「設計」で通帳残高を伸ばす方法

目次

なぜ黒字なのに現金が手元に残らないのか

売上は順調に伸びている。決算書を見れば黒字になっている。
それなのに、通帳を開くたびに不安になる。
そんな経験はありませんか。

決算が近づくと税金の支払いが気になり始め、慌てて節税になりそうなものを探し回る。
これは多くの経営者が一度は通る道です。
しかし、これでは根本的な解決にはなりません。

手元資金がなかなか増えない会社には、ある共通点があります。
それは、利益の計画と資金の計画がバラバラになっていて、判断のタイミングが遅れてしまうことです。

帳簿上は黒字でも、取引先からの入金が遅れたり、在庫が想定以上に膨らんだり、借入の返済が重なったりすると、現金はあっという間に少なくなります。
さらに、年度末に思いつきで節税支出を増やしてしまうと、税金は少し減っても現金はもっと減ってしまいます。
その結果、翌期に使える投資の余力が落ちて、また同じ焦りを繰り返すことになりがちです。

今回の記事では、金融機関からも信頼され、社長自身の不安も軽くなり、結果として通帳残高が増えていく資金計画の作り方をお伝えしていきます。

銀行が本当に見ているのは数字を説明できる力

融資の相談に行ったとき、銀行が確認しているのは売上の規模だけではありません。
社長が自社の状態をきちんと把握していて、先手を打てる人かどうかを見ています。

資金が足りなくなってから駆け込む会社と、足りなくなる前に理由と対策を持って相談に来る会社では、銀行側の対応も変わってきます。
前者はどうしてもお願いする立場になりやすく、後者は対等なパートナーとして話ができます。

銀行から信頼される会社には、次の3つが揃っています。

  1. 利益計画がある
  2. 資金計画があり、残高の推移をきちんと説明できる
  3. 税金の支払いも含めた資金の手当てを事前に済ませている

御社では、税金(特に消費税)の支払い予定を資金計画に織り込んでいますか。

もし入れていないと、納税の月に現金残高がカツカツになってしまいます。
そのタイミングで借入を申し込むと、条件交渉がどうしても厳しくなりがちです。
だからこそ、税金は年度末のイベントとして捉えるのではなく、年度の始まりの段階で設計に組み込んでおく必要があります。

2つの層で考えると資金計画は回り始める

資金計画と聞くと難しそうに感じるかもしれませんが、複雑に考えすぎると続きません。

おすすめは2層構造で組み立てる方法です。

1年の設計と月次の予実管理という2つの層を持つことで、精度とスピードの両方が手に入ります。

第一層は1年の利益計画から始める

最初に作るのは利益計画です。
ここで大切なのは、売上目標から考え始めるのではなく、必要な利益から逆算することです。

まず、目標とする通帳残高を決めます。
次に、そこから必要な営業利益を逆算し、固定費を足して必要な粗利を決めます。
最後に、粗利率から必要売上を算出します。

この順番で考えると、値引きや原価率の上昇が起きたときの影響がすぐに読めるようになります。

計画を立てるうえで大切なのは、当たるかどうかを気にしすぎないことです。
計画は判断を早めるための地図として使うものですから、ズレが出たら修正すればそれで十分です。

第二層は月次の予実管理で粗利と固定費に集中する

月次の予実管理では、科目を細かく並べるほど運用が煩雑になります。
最初のうちは粗利と固定費に絞って管理すると、無理なく続けられます。

売上が計画を上回っていても、粗利率が落ちていれば危険信号です。
固定費が予算を超えていれば、来月以降の現金残高が削られていきます。
月次で確認する目的は単なる反省会ではありません。そこから次の一手を決めることにあります。

今月の粗利率、すぐに答えられますか。

粗利率を把握しているだけで、値上げの判断、値引きのルール、外注比率の見直しが具体的に進められます。
その結果、利益だけでなく現金も残りやすくなっていきます。

税金設計は税金を減らすよりお金を増やす発想で考える

節税という言葉は便利ですが、解釈を間違えると現金を減らす結果になりかねません。
ここでは節税を、納税額を適正にコントロールしながら手元の現金を増やすことと捉えてみてください。

この定義から外れる支出は、税金が少し減ったとしても現金を減らし、会社の体力を奪います。

税金を減らしたいという気持ちは自然なことです。
ただ、税金が発生するということは、利益が出ている証拠でもあります。
きちんと納税している会社は、稼ぐ力があるというシグナルとして金融機関にも伝わります。

目指すべき姿は、税金をゼロにすることではありません。
税金を払いながらも、通帳の残高が着実に増えていく状態に近づけることです。

実務で効果的な方法は、年度の始めに二つの枠を決めておくことです。

一つ目は納税準備枠です。
毎月の利益見込みから概算の税額を計算し、資金計画の中で別枠として積み上げていきます。
これで決算期に納税資金で慌てることがなくなります。

二つ目は投資枠です。
節税支出は将来の売上や生産性の向上につながる投資だけに使うと決めておきます。
年度末に駆け込みで経費を使うのではなく、年度の初めに枠を確保しておいて、予実管理表でチェックしながら計画的に進めていきます。

その支出は、一年後に現金を増やしてくれるでしょうか。」

この問いに自信を持って答えられない支出は、節税ではなく浪費に近いものかもしれません。
判断基準をここに置くと、税金設計が単なる納税額の削減ではなく、経営戦略の一部として機能し始めます。

まとめ

通帳残高を増やすための資金計画は、気合いや根性で回るものではありません。
2層の仕組みを作ることで、自然と回り始めます。

1年の利益計画で全体の地図を描き、月次の予実管理でズレを早めに修正していきます。
そこに税金設計を組み込んで、納税準備枠と投資枠を年度の初めに確保しておきます。

この流れができあがると、社長の頭の中にある漠然とした不安が軽くなります。
銀行からの信頼も安定していき、資金調達力も自然と高まっていくでしょう。

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わかお税理士
税理士(税理士登録番号:140275)、国際認証MBA(経営学修士)、ファイナンシャル・プランナー

20年以上の実務経験の中で、上場企業から中小零細企業まで100数十名の社長の経営・税務・資産形成を継続的に支援。
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