「売上は増えたのに利益が残らない」その原因、商品の届け方にありました

売上が伸びれば、利益も自然についてくる。多くの経営者がそう考えています。
でも、本当にそうでしょうか。
実は、商品やサービスをどうやってお客様に届けるか、つまりデリバリーの方法によって、利益率は大きく変わってきます。
同じ商品を売っていても、届け方ひとつで儲かることもあれば、赤字になることもあるのです。
この記事では、多くの方が見落としがちなデリバリーという視点から、ビジネスの利益構造を見直すための5つのポイントをお伝えします。
意外な事実:店内飲食が一番儲からなかった
ある飲食店では、料理の届け方が3つありました。
お客様に来店していただく店内飲食、こちらから届ける配達、そしてお客様に持ち帰っていただくテイクアウトです。
この3つの中で最も利益率が高かったのはどれだと思いますか。
答えはテイクアウトでした。
そして驚くべきことに、最も利益率が低かったのは店内飲食だったのです。
配達よりも低い利益率だったというのは衝撃の事実でした。
なぜこんな結果になるのでしょうか。
理由は、原価以外の隠れたコストが、店内飲食に最も多く発生するためです。
店内でお客様にお食事を楽しんでいただくには、接客スタッフの人件費がかかります。
客席を維持するための家賃も必要になります。
使用したお皿を洗うための水道光熱費や洗剤代、店内設備のメンテナンス費用なども見逃せません。
こうした費用は、原価として意識されないため見過ごされやすいです。
ここから学べる大切なことがあります。
それは、ビジネスの健全性を測る本当の指標は、届け方ごとの利益率だということです。
御社のビジネスでも、届け方によって利益率に差が出ていないか、一度確認してみてはいかがでしょうか。
最安の届け方がお客様離れを招くこともある
コスト削減はあらゆるビジネスにとって重要な課題です。
しかし、最も安価な届け方を選ぶことで、かえってお客様離れを招いてしまうケースがあります。
ある法人向けの小売ビジネスでは、複数の届け方の中で注文を受けた後にメーカーから直接発送する方法が最もコストを抑えられる選択肢でした。
ところが、この方法を利用していたお客様の継続購入率が、他の方法と比べて著しく低いという問題が発生していました。
原因を調べてみると、納品時のコミュニケーション不足が浮かび上がってきたのです。
メーカーから直接商品が届くだけでは、お客様と対話する機会が失われてしまいます。
これによって、新たなニーズを発掘するチャンスや、担当者が変わったといった重要な情報を得る機会、そしてお客様との信頼関係を深める場がなくなっていました。
問題に気づいたこの会社は戦略を転換しました。
目先のコストは上がりますが、お客様と直接会話ができる自社配達に重点を置いたところ、コスト増を補って余りある売上と利益を確保できるようになったのです。
この事例が教えてくれるのは、届けるという行為は単なる物の移動ではないということです。
それはお客様との関係を築き、将来の利益を育てるための大切な接点です。
実費ではなく単価そのものを変えるべき理由
コンサルティングや専門サービスを提供している方が陥りやすい価格設定の落とし穴があります。
それは、お客様を訪問する際に報酬は同額のままで、交通費などの実費だけを上乗せするという方法です。
この考え方には、大きな見落としがあります。
それは、ご自身の移動時間という極めて重要なコストが反映されていないことです。
1時間のコンサルティングのために、往復で3時間の移動が必要になることも珍しくありません。
この3時間は、本来であれば別の仕事や価値創造に使えたはずの時間です。
移動には交通費以外にも機会コストがかかっているということを忘れてはなりません。
ではどうすればよいのでしょうか。
答えは、提供する場所によって報酬そのものを変えることです。
たとえば、お客様のもとへ訪問する場合は8万円(交通費別途)、自社に来ていただく場合は5万円というように設定します。
こうすることで、ご自身の時間の価値を価格に正しく反映させることができます。
時間というコストをご自身で負担する(逆に言えばお客様が負担しなくて済む)のであれば価格は高く、お客様が負担していただけるのであれば価格は低く設定しましょう。
専門知識だけでなく、それを届けるために費やす全ての時間に適正な対価を設定することが大切です。
時間は有限の資源であり、その価値を軽視してはいけません。
やめやすいサービスが最強の改善サイクルを生む
オンラインで提供するサービス、特にサブスクリプション型のビジネスでは、まとめて数万円をいただく売り切り型よりも、毎月数千円の継続課金型が非常に効果的です。
この料金設定は、始めやすくてやめやすいという特徴を持っています。
一見すると、やめやすいというのはビジネスにとって不利に思えるかもしれません。
しかし実は、この特徴こそがビジネスを進化させる武器になります。
なぜでしょうか。
低い参入障壁によって、まずは試してみようというお客様が増えます。
そして、やめやすい構造があるからこそ、お客様は率直なフィードバックを返してくれるのです。
退会される方がいらっしゃったとき、その理由にはビジネスを成長させるヒントが詰まっています。
お客様が離れていく理由を真摯に受け止め、サービス改善に活かすことができれば、ビジネスは着実に進化していきます。
お客様の離脱を、自社サービスを成長させるための研究開発の材料へと転換できます。
このサイクルを回し続けることで、顧客満足度の向上と売上の安定という好循環が生まれます。
請求書に潜むキャッシュフローの落とし穴
商品を届けた後、いつ代金を受け取るか。
この回収タイミングは、ビジネスの資金繰りにおいて極めて重要なポイントです。
御社では、代金回収のタイミングをどのように設定されていますか。
特に独立したばかりの方は、何の疑問も持たずに月末締め・翌月末払いという商慣習を受け入れがちです。
しかしこれは、キャッシュフローを悪化させる大きな落とし穴になりかねません。
ビジネスにとって最も望ましいのは、全額を前払いで一括していただくことです。
とはいえ、全ての取引でこれを実現するのは現実的に難しいでしょう。
大切なのは、複数の支払いタイミングを戦略的に組み合わせて、資金ショートを防ぐ仕組みを設計することです。
私の場合、仕事内容に応じて以下のように使い分けています。
毎月の顧問報酬は当月分を当月末に口座振替でいただいています。
決算・申告報酬は納品の翌月にいただいています。
納品まで半年以上の長期の依頼では一部を前払い、残りを納品後にお支払いいただく形を取っています。
支払いタイミングの交渉で大切なのは、通るか通らないかよりも、まず希望を伝えてみることです。
言わなければ、相手には伝わりません。
キャッシュフローの安定は経営の土台なので、ここは遠慮せずに対策を講じていただきたいところです。
まとめ:届け方を再設計して利益を最大化する
ここまで見てきたように、ビジネスにおける届け方とは、単に商品を運んだりサービスを提供する方法というだけではありません。
それは利益構造そのものを設計し、お客様との関係を築き、事業の成長サイクルを回すための大切なビジネスモデルの一部です。
利益を最大化するためのポイントを整理しておきましょう。
まず、目に見えない隠れたコストを可視化することから始めてください。
次に、届ける場面をお客様との大切な接点として再設計します。
ご自身の時間の価値を価格に正しく反映させることも忘れてはいけません。
そして、キャッシュフローを主体的に管理し、お客様からのフィードバックを事業改善の原動力とする仕組みを組み込んでください。
これらを実践することで、ビジネスは持続的に成長していくはずです。
御社の商品やサービスの届け方は、本当に利益を最大化するように設計されていますか。
この機会にぜひ、見直してみてください。


