節税だけではダメ?お金が残るビジネスに必要な3つの視点

こんにちは、越谷市の法人税務を専門にしている税理士の若尾です。
今回は、「節税を頑張っているのにお金が残らない」中小企業の社長さんにこそ、ぜひ知っていただきたい話です。
節税というのは、利益が出た後に行う調整です。 つまり、そもそも利益が出にくい構造のままでは、節税の効果はたかが知れているということです。
では、どうすればお金が残るようになるのか? 今回はそのために必要な「3つの視点」を、節税+経営戦略の視点からお伝えします。
視点1:利益構造を変える 〜稼げば稼ぐほど苦しい仕組みからの脱却〜
多くの中小企業は、売上を増やせば増やすほど忙しくなり、利益が圧迫される構造になっています。
たとえば、1件1件が単発の取引で、しかも人手が必要だったり、原価が高かったりするビジネスです。
こういった業態では、売上が伸びても手間とコストも比例して増えていくため、お金が残りません。
この状態を変えるには、次のような方向転換が必要です。
- 労働集約型→スケーラブル型(例:デジタル商品、オンラインサービス)
- 単発型→継続型(例:月額会員、保守契約)
- 有形→無形(例:コンテンツ、ノウハウ販売)
こうしたモデルに変えていく、または組み合わせていくことで、粗利率が高まり、労働時間あたりの利益が増えるようになります。
加えて、継続課金モデルを導入することで、収入が読めるようになります。月商や入金額の予測が立てられると、資金繰りも安定し、銀行融資や設備投資の判断も早くなります。
さらに、1回の取引だけで終わるのではなく、2回3回と続けてもらうことで、「1件あたりの顧客獲得コスト」がどんどん安くなります。これができていない会社は、毎回新規獲得に多額の費用をかけているため、広告費や人件費が利益を圧迫してしまうのです。
視点2:リピート構造をつくる 〜新規営業コストからの解放〜
2つ目の視点は、「新規顧客獲得のコスト」を削減することです。
新規営業は、時間もお金もかかります。それにもかかわらず、1回の取引で終わってしまえば、費用対効果が合いません。
中小企業の多くは既存顧客から得た利益の多くを新規顧客獲得のために費やすという、キャッシュが右から左へ抜けていく構造となっています。
そこで必要になるのが、リピート構造です。
リピートといっても、「また同じ商品を買ってもらう」だけではありません。
- 異なる経験を得るための再購入(異経験のリピート)
- ストーリーとしてつながる商品・サービス連鎖(時系列のリピート)
たとえば、パン屋さんであれば「パンを購入 → パン作り教室 → パンに合う紅茶の販売 → 紅茶の入れ方教室」といった時系列でリピートの流れを設計すれば、1人のお客様から複数回の収益を得られます。
重要なのは、「買い手の心理に沿って設計すること」です。
人は、「この人、わかってくれている」と感じた相手とは長く付き合いたいと思うものです。そのためには、次に提案する商品が「自然な流れ」に感じられることが大切です。
そして、その流れにのることがお客様にとって価値あるように設計することが必要です。
また、リピート構造があることで、「広告を打てば打つほど赤字になる」という悪循環からも脱出できます。
1人の顧客から複数回売上が立つので、広告費も回収しやすくなります。
そして何より、リピート構造は経営の見える化にも繋がります。
次にどんな商品を買ってもらうかが分かっていれば、営業の行動やチームの連携も計画的になります。属人的な営業ではなく、仕組みとしての営業へ転換しましょう。
視点3:節税の考え方を変える 〜使って減らすから、投資して残すへ〜
多くの経営者が「節税=お金を使うこと」と考えています。
確かに経費を増やせば税金は減ります。しかし、それと同時に減った税金以上に現金が減ります。
意味のない備品を買って節税しても、次の月には資金繰りに悩むことになります。
ここで重要になるのが、「未来に残る支出」へのシフトです。
- 研修・教育費(従業員のスキル向上)
- 情報発信・ブランディング(顧客ロイヤリティの構築)
- 継続収益の仕組みづくり(会員システム開発など)
- 業務の自動化・効率化(RPA、クラウド会計など)
- 顧客との接点強化(LINE活用、コミュニティ運営)
これらはすべて、未来の利益や顧客の信頼に直結する支出です。
節税の目的は「お金を守ること」だけではなく、「お金が増え続ける土台を作ること」でもあります。つまり、使って減らすのではなく、投資して増やす視点こそが、経営者に求められる節税マインドです。
まとめ:お金が残る会社に変えるための第一歩
節税は大事です。でも、節税だけでは限界があります。
本当にお金を残したいなら、
- 利益が出やすい構造に転換すること
- 顧客と長く深く付き合える仕組みをつくること
- 節税を目的ではなく、投資の一部と捉えること
この3つの視点を持つことで、毎月の通帳残高に余裕が出てきます。
まずは、自社の商品ラインナップと取引フローを見直してみてください。どこに無駄があり、どこに資源を集中させればいいのかが見えてくるはずです。
税金を減らすのは「手段」であって、「目的」ではありません。
お金を残すために戦略を持っている会社だけが、未来への節税投資を実行し、結果として持続可能な経営を実現できています。
目の前の税金に一喜一憂するのではなく、10年後のキャッシュフローを見据えて、今何に力を注ぐべきか。それを考えていくことが必要です。
