出張手当はなぜ非課税?会社も役員・社員も得する仕組みを分かりやすく解説

目次

はじめに:出張手当は給料とどう違う?

社員(役員を含む(以下同じ))が出張に行くとき、交通費や宿泊費とは別に日当を支給している会社は多いのではないでしょうか。

この日当、給料とは違って税金がかかりません。
つまり、支給した金額がそのまま個人の手元に残るのです。

出張手当とは、社員が普段の勤務地を離れて働く際に発生する食事代や通信費といった細かな出費、そして慣れない環境で働くことへの負担を軽減するために支給するお金のことです。

この記事では、出張手当が非課税になる仕組み、会社と社員の双方にもたらすメリット、そして制度を正しく運用するために欠かせない出張旅費規程の重要性について分かりやすく解説していきます。

出張手当が非課税であることのメリット

出張手当が非課税であることは、社員にとっても会社にとっても大きなメリットがあります。
それぞれの視点から見ていきましょう。

社員にとってのメリット:手取りが増える

給与や賞与は、所得税や住民税、社会保険料が差し引かれてから社員の手元に入ります。
一方、出張手当はこれらの対象外となるため、支給された金額がそのまま収入になります。

たとえば、会社が社員に2,000円を上乗せで支給したいと考えたとき、給与として払うと税金などが引かれてしまいます。
しかし、非課税の出張手当として支給すれば、2,000円がまるごと社員のものになります。

また、出張手当には長時間の移動や慣れない場所での業務に対するねぎらいの意味も含まれています。
そういった意味では、社員のモチベーション向上にもつながる制度です。

会社にとってのメリット:節税と社会保険料の負担なし

会社側にとっても、出張手当制度には複数のメリットがあります。

まず法人税の節税効果です。
出張手当は会計上、旅費交通費という経費として計上できます。
経費が増えるとその分だけ会社の利益が圧縮されるため、結果として法人税を抑えることができます。

次に消費税の節税効果です。
出張手当は消費税法上、課税仕入れに該当します。
会社が納める消費税額を計算する際に、消費税の対象取引として控除できるため、納税額を減らすことができます。

さらに社会保険料の削減も見逃せません。
出張手当は給与ではないため、社会保険料の算定基礎に含まれません。
会社が負担する社会保険料も発生しないため、同じ金額を給与で支給するよりもコストを抑えられます。

非課税と認められるための2つのルール

出張手当が非課税となる根拠は、所得税法第9条第1項第4号で定められています。
ただし、どんな金額でも非課税になるわけではありません。
国税庁は非課税と認めるための条件として、2つのルールを示しています。

これらのルールは、出張手当が実質的な給与として使われ、不当な税逃れにつながることを防ぐために設けられています。

ルール1:全社員に対して公平な基準であること

出張手当の金額は、役員から一般社員まで全社員を通じてバランスの取れた基準に基づいて決める必要があります。
特定の役員だけ極端に高い金額を設定することは認められません。

もちろん、役職によって多少の差を設けることは問題ありません。
ただし、その差が社会通念上、妥当な範囲内であることが求められます。

ルール2:世間一般の相場から見て妥当な金額であること

手当の金額は、同じくらいの規模や同じ業界の他社と比べて高すぎない妥当な金額でなければなりません。
あまりに高額な手当は、実質的なボーナスとみなされ、課税対象となる可能性があります。

では、妥当な金額とはいくらくらいでしょうか。
参考として、財務省が2023年に実施した調査結果があります。

国内出張の日当は平均で約2,621円、海外出張の日当は平均で約5,441円となっています。

この相場から著しくかけ離れた高額な手当を設定していると、税務調査で指摘を受け、追加で税金を納めることになる可能性があるため注意が必要です。

出張旅費規程をつくる重要性

出張手当制度を適切に運用し、非課税のメリットを受けるためには、出張旅費規程という社内ルールを文書で定めておくことが欠かせません。

この規程が必要な理由は主に3つあります。

  1. 税務調査で手当の妥当性を証明するため
    ルールに基づいて公平に支給している客観的な証拠となります。
  2. 社員間の公平性を保ち、トラブルを防ぐため
    あの人だけ手当が多いといった不満を未然に防ぐことができます。
  3. 経費精算のルールを明確にし、業務を効率化するため
    申請や精算の手順を統一することで、スムーズな運用が実現します。

出張旅費規程に盛り込むべき項目

出張旅費規程には、一般的に以下のような項目を盛り込みます。

  • 目的と適用範囲
    この規程が何のためのルールなのか、そして役員を含む全社員が対象であることを明記します。
  • 出張の定義
    どのような場合に出張と見なすかを具体的に定めます。
    たとえば、通常の勤務地から片道100km以上離れた場所での業務のように、距離や移動時間で明確な基準を設けます。
  • 旅費の種類の定義
    会社が支給する旅費に何が含まれるかを明らかにします。
    一般的には交通費、宿泊費、日当の3つです。
  • 手当や上限額
    日当や宿泊費の上限額を役職などに応じて具体的に定めます。
    この金額が公平性と妥当性のルールを満たす上で核心となります。
  • 手続きと精算方法
    出張前の申請から出張後の精算までの流れをルール化します。
    たとえば、帰社後3日以内に精算書と領収書を提出するといった具体的な手続きを定めます。

しっかりと練られた出張旅費規程があって初めて、出張手当の非課税メリットを安心して活用できます。

まとめ

出張手当は、社員には非課税の収入を、会社には法人税、消費税、社会保険料の節減をもたらす双方にメリットのある制度です。

ただし、非課税とするためには公平性と社会通念上の妥当性という2つのルールを守る必要があります。

そして、これらのルールを守り、制度を正しく運用するための根拠となる出張旅費規程の作成が欠かせません。

出張手当制度は社員の満足度を高めながら、会社の健全な経営にも貢献する重要な仕組みです。
まだ出張旅費規程を整備されていない場合は、この機会に検討されてみてはいかがでしょうか。

【免責事項】
本記事は2025年12月時点の税制に基づいて作成されています。
税制は随時改正されるため、実際の適用にあたっては最新の情報を確認し、必ず税理士等の専門家にご相談ください。

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