節税保険に固執すると危険?設備と人への投資を怠った会社に訪れる10年後の末路

決算期が近づくと、こんなことを考える社長は多いのではないでしょうか。
「今期は利益が出たから、保険に入って節税しよう」
そのお気持ちはよく分かります。
利益が出れば税金は増えますし、少しでも手元にお金を残したいと思うのは自然なことです。
ただ、今の時代にその判断をしてしまうと、思わぬ損をする可能性があります。
物価が上がり続けるインフレの時代に入った今、保険にお金を預けたままにしておくと、節税できた分を差し引いても実質的にマイナスになるケースが増えてきました。
私のシミュレーションでは、インフレ率2%の環境で毎年100万円(解約返戻率85%)の保険を10年間掛けると、実質で約188万円もの損失が出るという結果になっています。
しかも、本当に怖いのは188万円の損だけではありません。
その1,000万円を会社の設備や人に投資していれば得られたかもしれない利益まで手放しているという事実があります。
今回は、なぜインフレ時代には保険よりも設備や人への投資が大切なのか、できるだけ分かりやすくお伝えしていきます。
会社のお金には眠っているお金と働くお金の2種類がある
会社のお金の使い方は、大きく分けると2つに分かれます。
ひとつは、万が一に備えて寝かせておくお金です。
保険の積立や低金利の定期預金がこれにあたります。
このタイプのお金は、物価が上がっていくインフレの局面で年々その価値が目減りしてしまうのが特徴です。
リターンはほぼゼロか、むしろマイナスになることもあるでしょう。
もうひとつは、会社を成長させるために使うお金です。
新しい設備の購入や人材の採用、広告への投資などがこちらにあたります。
うまく活用すれば売上や利益を押し上げてくれる力を持っており、事業の利益率次第で5%から20%以上のリターンも期待できるでしょう。
物価が下がっていたデフレの時代は、お金を寝かせておいても価値が減りませんでした。
保険で節税するのは当時としては合理的な選択だった側面もあります。
しかし今はインフレの時代に変わりました。使わずにいるお金は、少しずつその価値を失っていきます。
皆さんの会社のお金は、今どちらの状態にあるでしょうか?
インフレ時代に設備投資をすべき2つの理由
設備投資にはリスクがあるとお感じになる社長もいらっしゃるかもしれません。
しかしインフレの局面では、むしろ早めに設備を導入する方がリスクを抑えられます。
その理由は次の2つです。
理由1:モノの値段は上がり続けている
建設費や機械の価格、車両の価格はどれも年々上昇を続けています。
「もう少し様子を見よう」と3年待った結果、同じ機械を買うのに2割も多く支払うことになるかもしれません。
インフレの時代は、今日が一番安い日だという意識を持つことが大切です。
現金のまま、あるいは保険として置いておくのではなく、価値が上がり続けるモノに早めに変えておくことが防衛策になります。
理由2:新しい設備は毎日稼いでくれる
保険の証券は金庫の中で眠っているだけですが、最新の機械や設備は日々の業務で活躍し、利益を生み出してくれます。
古い設備のまま我慢を続ける会社と、最新の設備で効率よく利益を出す会社では、10年後に残るキャッシュに大きな差が生まれるでしょう。
さらに、国は設備投資をする企業を税制面で後押ししています。
中小企業経営強化税制などを活用すれば、設備投資そのものが強力な節税手段にもなるでしょう。
保険に頼らなくても、節税の方法はきちんと用意されています。
設備よりもさらに人への投資を
設備以上に大切な投資先があります。
それは、日々一緒に働いてくれている社員への投資です。
「賃上げをしたら固定費が増えて経営が苦しくなる」
こう心配される気持ちはよく分かります。
しかし、少子化で働き手がどんどん減っている今の日本では、給料が低い会社には人が集まりにくくなっているのが現実です。
物価が上がって日々の生活が苦しくなっている社員に対し、賃上げをせずにいると、優秀な人ほど先に離れてしまうでしょう。
一度失ったベテラン社員のノウハウやお客様との信頼関係を取り戻すには、多額のコストがかかります。
逆に、給料を上げれば社員のやる気は高まり、仕事の質も向上していきます。
離職率が下がれば採用コストも減るため、長い目で見れば会社の負担はむしろ軽くなるケースが少なくありません。
経験豊富でモチベーションの高い社員は、どんな経済環境でも価値が下がることのない、会社にとって最高の財産です。
しかも、給与は全額が経費として認められますし、賃上げ促進税制という優遇措置も用意されています。
人への投資もまた、れっきとした節税策として活用できるでしょう。
保険を選んだ会社と投資を選んだ会社、10年後にはこれだけの差がつく
ここで、年間100万円を10年間、合計1,000万円をどう使ったかで、10年後にどんな違いが出るのか、2つの会社を比べてみましょう。
まず、保険を選んだA社です。
金庫には保険証券がありますが、インフレの影響で実質的な価値は約188万円も減っています。
設備は古くなって故障が増え、修繕費もかさんできました。
給料を上げてこなかったため、優秀な若手は転職してしまい、慢性的な人手不足に悩んでいます。
一方、設備と人に投資したB社はどうでしょうか。
最新の設備で生産性が上がり、利益率はアップしました。
1,000万円の投資は複利のように効果が積み重なり、数千万円のキャッシュフローを生み出しています。
賃上げのおかげで社員の士気は高く、求人を出せば優秀な人材が自然と集まってくるでしょう。
片方は実質マイナス、もう片方は数千万円のプラスです。
この大きな差こそが、保険と事業投資の間に生まれる機会損失の正体といえます。
税理士からの提言:稼ぐ力を持つ資産を増やしましょう
現金や保険の積立金が増えるだけでは、会社は強くなりません。
機械や設備、そして人材といった稼ぐ力を持つ資産が増えて初めて、会社の体力は本当の意味で強くなっていきます。
「途中で解約すると元本割れするから、もったいない」
そうお考えの方もいらっしゃるでしょう。
お気持ちはよく分かります。
ですが、満期までの残りの年月にわたってインフレで価値が削られ続け、そのうえ資金が身動きを取れない状態が続くことの方が、結果的にはずっと大きな損失につながるかもしれません。
今の損失に縛られて立ち止まるか、未来の利益を取りに行くか。
税金も減り、会社も強くなり、社長も社員も笑顔になれる方策。
それこそが、インフレ時代にふさわしい本当の節税であり、経営の正しい姿だと思います。


