起業初期の不安を乗り越える、あなたに合ったお客様は必ずいます

目次

はじめに

これから独立を考えている方、あるいは起業したばかりの方にとって、最初にぶつかる壁は何でしょうか。
多くの場合、それは「最初のお客様をどうやって見つけるか」という問題ではないでしょうか。

私も開業当初は夜も眠れないくらいに悩みました。

ビジネスプランは練り上げた。商品やサービスにも自信がある。
でも、肝心のお客様がいなければ、すべては絵に描いた餅で終わってしまいます。

この記事では、起業初期の社長が陥りやすい落とし穴を避けながら、あなたに合ったお客様を見つけるための考え方をお伝えします。
難しい理論ではなく、今日から使える実践的な内容を心がけました。

最後まで読んでいただければ、きっとあなたのビジネスの視界がひらけてくるはずです。

経験のある分野から始めるのが成功への近道

なぜ慣れた業界で勝負すべきなのか

起業を決意したとき、まったく新しい分野に挑戦したいという気持ちが湧いてくることがあります。
今までとは違う世界で自分の力を試してみたい。その意気込みは素晴らしいものです。

しかし、ビジネスを軌道に乗せるという観点から見ると、最初の一歩は自分の経験が活きる分野で踏み出すことをお勧めします。

どの業界にも、その業界特有のルールや慣習が存在しています。
長年その業界にいる人にとっては当たり前のことでも、外から入ってきた人間には見えない壁がたくさんあるものです。
自分の業界の常識は、他の業界の非常識とは良く聞く言葉です。

独立初期においては、時間も資金も人脈も限られています。
そんな中で慣れない業界の文化を一から学びながら事業を進めるのは、想像以上に大変な作業になります。

あなたが何年もかけて培ってきた知識や人脈は、思っている以上に価値があるものです。
まずはそのホームグラウンドで勝負することが、成功への最短ルートになります。

新しい挑戦は足場を固めてから

誤解しないでいただきたいのですが、経験のない分野に挑戦してはいけないと言いたいわけではありません。
大切なのは順番です。

まずは自分の経験が活かせる顧客層をターゲットに、しっかりとした活動基盤を作ります。
そこで安定した収益を確保できてから、次のステップとして新しい分野にチャレンジする。
この順番を守ることで、ビジネスは着実に成長していきます。

焦る気持ちはわかりますが、まずは足元を固めることから始めてみてください。

理想のお客様像を具体的にイメージする

ペルソナという考え方

マーケティングの世界でよく使われるペルソナという言葉をご存じでしょうか。
難しく考える必要はありません。
これは、あなたのビジネスにとっての理想のお客様像を、一人の具体的な人物として設定することです。

半ペルソナがちょうどいい

本格的なペルソナ設定には、アンケートやインタビューなどの詳細なリサーチ、データ分析が必要になります。
多くの時間とコストがかかるため、いきなりそこまで踏み込むのは現実的ではありません。

そこでお勧めしたいのが、半ペルソナという考え方です。
詳細なデータに固執せず、これまでの経験から感覚的に顧客像を捉える程度に留めておきます。

こんな人がお客様だったら嬉しいな。そんなぼんやりとしたイメージで十分です。
まずはそこから始めてみましょう。

うまくいかないときの見直しルールを決めておく

ビジネスを始めても、最初の想定通りに成果が上がらないことは珍しくありません。
むしろ、ほとんどの場合、計画通りには進まないものです。

大切なのは、うまくいかなかったときにどう動くか、その見直す順番やルールをあらかじめ決めておくことです。
これを決めておかないと、場当たり的な対応になり、時間もコストも無駄になってしまいます。

参考までに、ひとつ例をお伝えします。

第一優先は売り方の見直しをします。
顧客想定と商品はそのままに、訴求ポイントやアプローチ方法を変えてみます。
商品の見せ方を変える。販売経路を変えるなどです。

それでもダメなら、第二優先として商品の見直しを行います。
顧客想定はそのままに、商品の内容や価格を改良してみるのです。

そして、顧客想定だけは一切変えないというルールを設けます。
このような自分なりのルールを持つことで、冷静に、かつ一貫性を持って事業の軌道修正ができるようになります。

顕在ニーズと潜在ニーズの違いを理解する

2種類のお客様を知っておこう

お客様が抱えるニーズには、大きく分けて2つのパターンがあります。

1つ目は、ニーズが顕在化したお客様です。
すでに商品の必要性を認識していて、購入を検討している段階にあります。
どこで買うか、いくらで買うかを考えている状態です。

2つ目は、潜在的ニーズを持つお客様です。
まだ自分のニーズや、それを満たす商品の存在に気づいていない状態にあります。

この2つの違いを理解しておくことは、ビジネス戦略を考える上でとても重要になってきます。

どちらを狙うべきか

起業初期の落とし穴として、多くの起業家は売りやすいからという理由で、ニーズが顕在化したお客様に集中しがちです。
しかし、そこはすでに競合がひしめき合う激戦区になっています。
熾烈な価格競争に巻き込まれ、十分な利益を確保するのが難しくなるケースが少なくありません。

一方で、潜在的ニーズを持つお客様へのアプローチは、利益を確保する上で非常に有利に働きます。
なぜなら、お客様はまだ自分の課題を解決する商品の存在を知らないため、あなたが初めての商談相手になる可能性が高いからです。
そこで価値をしっかり伝えられれば、価格だけで比較されることなく、納得して購入していただけます

潜在ニーズを見つけるヒント

では、どうすれば潜在的ニーズを見つけられるのでしょうか。

一つの有効な視点は、違う業界で使われている道具やノウハウを、自分の業界に持ち込めないかと考えてみることです。
ある業界ですでに効果が実証されている解決策を、まだその存在を知らない別の業界に持ち込む
これによって、これまで誰も気づかなかった場所に、まったく新しい価値を生み出すことができます。

他の業界では当たり前だと思っている知識やツールを、自身の業界にスライドさせてみてください。
そこには、まだ誰も気づいていない大きなチャンスが眠っているかもしれません。

そういった意味では、異業種との交流はビジネスのヒントをつかむ場として有効です。

ひとり社長が押さえたい5つの顧客モデル

役所向けビジネス(BtoG)

何だかハードルが高そうという思い込みで、最初から選択肢から外してしまう方が多いのがこのモデルです。
しかし、手続きが煩雑で多くの人が避けるからこそ、真剣に取り組む人にとっては大きなチャンスになります。

適正なステップを踏めば公平公正に話が進み、門前払いされることはありません
また、拠出のベースが税金であるため、貸し倒れのリスクがほぼゼロという点は大きな魅力です。

一般消費者向けビジネス(BtoC)

私たち自身も消費者であるため、最も馴染み深く気持ちを理解しやすいモデルです。
ただし、大きな注意点があります。

それは、生活費から支出される商品を避けることです。
日用品や食品など生活に必須のものは、性能や品質で明確な差をつけない限り、価格で選ばれてしまいます。
大量生産が可能な大手企業と正面からぶつかるのは得策ではありません。

狙うべきは、生活費以外のお財布です。
たとえば同じ飲食店でも、お客様の目的によって支出されるお財布は変わります。
空腹を満たすための食事は生活費から出ますが、パーティーや懇親会は交際費から、料理教室なら教育娯楽費から支出されます。
これらを選ぶ時の判断基準は、価格ではなく、得られる効果や満足度が優先されます。

お客様がどのような名目であなたにお金を払ってくれるのかを意識することで、価格競争から抜け出すヒントが見つかります。

法人向けビジネス(BtoB)

事業者向けビジネスの成否を分けるたった一つの本質があります。
それは、事業者が商品やサービスを購入する理由は、究極的には1円でも儲けを増やしたいからだということです。

つまり、あなたが事業者向けにビジネスをする際に伝えるべき最も重要なポイントは、私の商品やサービスを使えば、お客様はいくら儲かりますかという問いに、具体的な数字で答えることです。

作業効率が20%向上しますという曖昧な表現では不十分です。
作業効率が20%向上するので、スタッフさんの給与が30万円だとすると少なくとも月間で3万円、年間36万円のコスト削減になる。
さらに空いた時間で別の作業をすれば月2万円の利益増が見込める。
合計で月5万円の利益増になる。
ここまで具体的に説明できて初めて、事業者はあなたの商品に価値を感じてくれます。

法人の先にいる個人向けビジネス(BtoBtoC)

法人を構成するのは個人であるという視点に立ったビジネスモデルです。
表向きは法人との取引ですが、実際にお金を支払うのはその法人で働く従業員という仕組みになります。

会社に設置された自動販売機がわかりやすい例です。
飲料メーカーが会社に自動販売機を設置し、従業員が商品を購入し、売上を会社とメーカーで分配する。
会社、従業員、サービス提供者の三者にメリットがある仕組みを考えることで、新しいビジネスチャンスが生まれます。

個人の先にいる法人向けビジネス(BtoCtoB)

あなたが集めた個人の集団そのものが価値を持つビジネスモデルです。
その集団にアプローチしたい企業が、広告料などの形でお金を支払います。

YouTubeチャンネルがいい例です。
経営者向けに動画を発信すれば、経営層の視聴者さんが集まってくださる。
すると、経営者層に広告を出したい企業が広告を出稿し、視聴者さんにアクセスする場を提供した対価として広告料を受け取る。
個人の視聴者さんの束が価値となり、それが収益を生みます。

この個人の束で価値を生むという考え方は、あなたのビジネスでも必ず応用できるはずです。

おわりに

起業の第一歩であるお客様を見つけるという工程、いかがでしたでしょうか。

この記事では、あなたの経験こそが最強の武器になること、お客様には顕在ニーズと潜在ニーズの2つのタイプがあること、そして具体的な5つの顧客モデルについてお伝えしてきました。

難しく考えすぎる必要はありません。
まずは、あなたの経験が活かせる身近なところから、理想のお客様の顔を想像してみてください。
どんな人が、どんなことに悩み、あなたの商品やサービスでどうやって笑顔になるでしょうか。

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わかお税理士
税理士(税理士登録番号:140275)、国際認証MBA(経営学修士)、ファイナンシャル・プランナー

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