「異経験リピート」でお金が残るビジネスモデルをつくる―別の角度からもう一度買ってもらうための設計図

中小企業経営者の皆さま、売上を伸ばすために「同じ商品を何度も売ろう」としていませんか?
確かにリピート(再購入)は重要です。
しかし、「同じ体験を繰り返す」だけでは、安売り競争やサービス過剰につながり、利益が出づらくなってしまいます。
この同じ商品を同じ目的で再購入するリピートは「同経験リピート」です。
そして、今回のテーマは「異経験リピート」です。
つまり、「前回とは別の理由、別の用途、別の勘定科目で再び買ってもらう」戦略です。
これを設計することで、利益率が上がり、顧客との関係が深まり、節税対象となる経費の使い方も変わってきます。
なぜ「同経験リピート」では弱者は勝てないのか?
同経験リピートとは?
- 同じ商品を、同じ理由で、繰り返し購入してもらうこと
例:毎週同じパン屋で同じ食パンを買う、毎月同じ整体に通う
このリピートは、競合に模倣されやすく、大手企業には値段や利便性で負けてしまうリスクが高いのです。
人は意識的であれ無意識であれ、より良い購入先を探しています。常に他の店が気になっています。
近所に気になるパン屋さんができればそちらへ行きますし、そこが気に入ればすぐに乗り換えられてしまいます。
それを防ぐために手を出してしまいがちなのが、リピートを継続させようとして過剰な割引やサービスを提供することです。これらは利益を削ってまで繋ぎ止める方策であり、結果としてお金が残らない構造になります。
このように、同経験リピートだけで安定して利益を出すことは、構造的に非常に難しいというのが現実です。
異経験リピートとは?どこが違うのか?
定義:別の目的・用途・勘定科目での再購入
異経験リピートとは、「前回と違う角度から再び購入してもらう」ことを狙った戦略です。
この仕組みを構築できれば、お客様1人あたりの売上(LTV)を自然に上げていくことができます。
同経験リピートと組み合わせて設計することも効果的です。
具体的には、いつものパン屋で同じ食パンを買う流れで、友人宅への手土産としてお気に入りの食パンを買ってもらうというものです。
手土産用パックをつくるだけで実現できるリピートです。
具体的なパターン例
| 最初の購入 | 異経験リピート | 説明 |
|---|---|---|
| 自宅用にプリン購入(個人) | 贈答用として再購入(友人) | 目的の変化 |
| 自費で講座受講(個人) | 社員教育として法人契約(法人) | 対象の変化 |
| 店内飲食 | 持ち帰り、デリバリー | 場所の変化 |
異経験リピートの効果
- 購入する目的が増えれば、購入する回数も増える
- 贈答用や法人経費での購入は高めの価格帯でも購入されやすい
- 顧客との接触頻度が自然に増え、関係が深まる
異経験リピートの設計方法
STEP 1:現行商品・サービスをマッピング
まず、自社で現在提供している商品・サービス一覧を作成し、それぞれに「別の目的・用途・勘定科目」で購入していただける可能性がないか検討します。
- 誰が買っているか(個人・法人)
- 何のために買っているか(個人消費・法人経費・贈答)
- どの形で買っているか(単発・継続)
STEP 2:「転換ポイント」を設計する
一度購入したお客様に対し、以下のようなきっかけを設けて、別角度での再購入を促します。
- 場所の選択肢を提供(例:店内 → 持ち帰り)
- 経費処理の提案(個人支出 → 法人契約)
- 新パッケージの紹介(自己利用 → 他者ギフト)
STEP 3:「異経験での利活用法」を言語化する
パンフレットやWebページ上で、「この商品はこういう目的でも使えます」と明記することが大切です。
- 「お持ち帰りできます」
- 「福利厚生としても導入されています」
- 「社員教育用途にもご利用いただけます」
- 「贈り物としても人気です」
こうすることで顧客が「別の視点」でその商品・サービスを再認識でき、再購入につながります。
異経験リピート設計を阻む壁とその対策
壁1:「そんな売り方したことがない…」という思い込み
→ お客様の使い方を「言語化して提示する」ことで、新しいニーズが自然に生まれます。
壁2:「法人相手はハードルが高そう」
→ すでに満足している個人顧客に「法人でも導入できますよ」と提案することで、低リスクで転換が可能です。
壁3:「うちの商品・サービスでは無理」
→ 必ず切り口は見つかります。5W1Hに沿って現在のお客様の体験を少しずらしてみてください。
成功のカギは「再提案の仕組み」
異経験リピートは、1回売って終わり、ではなく2回目の提案力に勝敗がかかっています。
- 「こんな使い方もできますよ」
- 「今度は法人契約でまとめてご利用いかがですか?」
このように「別の角度」で自然に再提案する仕組みを現場に組み込むことで、営業トークなしでもリピートが増えていきます。
まとめ:「別の理由でもう一度買ってもらう」仕組みを持ちましょう
リピート=同じ商品を繰り返す、ではありません。
これからの時代、中小企業が生き残るには、「一人のお客様から複数の理由で喜んで買っていただく構造」が必要です。
異経験リピートづくりとは、
- 別の目的、用途、勘定科目で再購入を促すこと
- 利益率の高い再提案で、LTV(顧客生涯価値)を最大化すること
- そのための仕組みづくりに「意味のある経費」を使うこと
そして、その経費が「将来の利益を増やす」「事業構造を強化する」のであれば、それは最も効果的な節税支出です。
