情報発信をただの広告費ではなく「お金を生む節税投資」に変えていく方法

目次

はじめに:がんばっているのに、なぜかお金が残らない現実

SNSの更新も毎日がんばっています。ブログも週に2〜3本は書いています。メルマガだって定期的に配信しています。お問い合わせもポツポツと入ってきます。

でも、なぜか通帳の残高は思うように増えていかない。
こんな悩みを抱えていませんか。

総務省の令和6年版情報通信白書によると、日本企業のソーシャルメディア活用は年々増加しており、多くの企業が認知度向上や新規顧客獲得を目的として情報発信に取り組んでいます。
しかし、ただ発信するだけでは十分な成果が得られないのが現実です。

一生懸命に情報発信をしているのに成果が出ない背景には、実は2つの共通した問題が隠れていることがほとんどです。

ひとつは新規のお客様を獲得し続けないと売上が維持できない構造になっていること。

もうひとつは情報発信にかけたお金が将来の資産になっていないということです。

決算前の広告費投入に潜む税務上の落とし穴

多くの経営者の方は、決算前になると「広告費を使って利益を圧縮しよう」「ウェブサイトのリニューアルを今期中に済ませてしまおう」と考えがちです。

しかし、ここで注意が必要なのは、国税庁が定める厳格なルールの存在です。
広告宣伝費は原則として、広告掲載やCM放映などの役務の提供が完了した日の属する事業年度の損金となります。

つまり、単に現金を支払うだけでは、その期の経費として認められない場合があります。

短期前払費用の特例もありますが、これは契約に基づき継続的に役務の提供を受けるもので、支払った日から1年以内に提供を受けるものなど、一定の要件を満たす場合に限られます。

単発の広告や、まだサービスの提供を受けていないWebサイト制作費などは対象外となるケースがあることを理解しておく必要があります。

情報発信のお金が「浪費」になってしまう典型的なパターン

たとえば、決算直前になって慌てて次のようなものにお金を使ったとします。

デザインにこだわったパンフレットを大量に印刷する。
とりあえずウェブ広告の運用サービスを契約する。

確かに経費が増えれば、その分税金は減ります。しかし、少し立ち止まって考えてみてください。

もしその情報発信が、見込み客のリストにつながっていなかったら。リピートを生まない単発のキャンペーンで終わってしまったら。やりっぱなしになってしまって、ノウハウも蓄積されなかったら。

税金は減っても、それ以上に会社のお金が浪費として減ってしまいます。

無形資産としての情報発信という考え方

実は、経済産業省が公表している「人材版伊藤レポート」では、企業価値を決定づける要素として、従来の有形資産だけでなく、無形資産への投資が重要であると定義されています。

無形資産とは、顧客基盤、ブランド、データ、ノウハウなどを指します。
政府は、企業が広告宣伝やマーケティングを通じて築いたブランドや顧客との関係性を無形資産として評価し、持続的な企業価値向上につなげることを推奨しています。

これは単なる経費処理という発想から、投資という発想への転換を促すものです。
同じお金を使うなら、将来にわたって価値を生み続ける資産として積み上げていくべきです。

資産になる情報発信の3つの条件

では、どのような情報発信が資産になるのでしょうか。ポイントは3つあります。

1. 時間が経つほど価値が積み上がる形になっているか

ブログやYouTubeのように、後から何度でも見返せる形で残っているコンテンツは資産になります。
さらに大切なのは、テーマがバラバラではなく、誰のどんな悩みを解決するのかが一貫していることです。

総務省の調査によると、ソーシャルメディアを活用している企業は、活用していない企業に比べて売上高の増加や人材確保においてポジティブな効果を感じている割合が高いという結果が出ています。
ただし、これは計画的で一貫性のある発信があってこその効果です。

2. リピーターの増加や単価アップにつながるか

中小企業庁の調査では、ITツール等を活用して顧客データを分析・活用している企業の方が、そうでない企業よりも売上高増加率が高い傾向にあることが示されています。

既存のお客様が、やはりこの会社は信頼できると再確認できる内容になっているでしょうか。
また、既存のお客様に新しい商品やサービスを提案するための土台になっているでしょうか。
新規客の獲得だけでなく、既存客との関係を深める情報発信こそが、実は最も効率的な投資なのです。

3. 数字で結果を追えるか

アクセス数、お問い合わせ件数、メルマガ登録数など、追いかける指標が明確に決まっているでしょうか。

効果測定ができない情報発信は、改善のしようがありません。
情報発信の目的を明確にし、どの数字が伸びればその目的を果たしたことになるのか

ここが曖昧のままで情報発信を続けてもなかなか効果に繋がりません。

CAP理論で設計する「お金を生む導線」

せっかく情報発信にお金を使うなら、お客様が自然に深い関係になっていく流れを作りたいものです。
私はこれをCAP理論と呼んでいます。

C(Connect):SNSなどで顔見知りを増やす

まずはSNSで存在を知ってもらう段階です。
ここでは深い話をする必要はありません。親しみやすい投稿で、まずは認知してもらうことが大切です。

A(Archive):ブログや動画で専門性と実績を蓄積する

次に、ブログや動画でこの会社は信頼できそうだと感じてもらう段階です。
専門的な知識や実績を、わかりやすく伝えていきます。これこそが無形資産としてのブランド構築につながります。

P(Push):メルマガやLINEで定期的に接点を持つ

最後に、メルマガやLINEで忘れられない関係を維持する段階です。
定期的な情報提供で、お客様との距離を縮めていきます。リテンションマーケティングとも呼ばれるこの手法は、新規客獲得よりも費用対効果が高いことが多くの研究で明らかになっています。

この3つがうまくつながることで、SNSで知ってもらい、ブログで信頼してもらい、メルマガで関係を深め、タイミングが来たときに自然な形でお申し込みをいただける。
そんなルートができあがります。

年度の初めから考える情報発信の節税設計

お金を生む節税は、決算直前になって慌てて作れるものではありません。
税務上のルールを踏まえた上で、計画的に進める必要があります。

年度の初めに、
今年は誰に何を重点的に伝えるのか。
ブログをどれくらいの頻度で書くのか、動画を何本出すのか。
どのタイミングで既存のお客様にどんな情報を届けるのか。
これらをざっくりとでも決めておきましょう。

すると次のようなことが見えてきます。
年間を通じてどれくらい情報発信費を使うのか。
その結果、どれくらいの売上と利益増を目指すのか。
いくらまでなら節税として前向きに使っていいか。

この状態になっていれば、決算前に無理やり広告をねじ込む必要はなくなります。
計画的に、戦略的に、年間を通して情報発信への投資ができるようになります。

情報発信にお金を使う前にチェックしたい4つの質問

情報発信のための支出を決める前に、ぜひ次の4つの質問を自分に問いかけてみてください。

質問1:この支出は、将来の売上や利益にどうつながりますか

単に認知度を上げるだけでなく、具体的にどのような形で売上につながるのか着地点までイメージできるでしょうか。

質問2:新規客だけでなく、既存客やリピーターの売上にも貢献しますか

新規客獲得だけでなく、既存客との関係強化にも役立つ投資になっているでしょうか。

質問3:キャッシュフローを悪化させませんか

分割払いやサブスクリプション契約も含めて、資金繰りに無理が生じないか確認しましょう。

質問4:自社の情報発信戦略と一貫性がありますか

バラバラな施策ではなく、全体の戦略と調和した投資になっているでしょうか。

 

この4つすべてに「はい」と答えられるなら、その情報発信費はお金を生む節税になっている可能性が高いです。

おわりに:通帳残高が増える節税への転換

情報発信に使うお金は、何も考えずに使っているとただの広告費、あるいは浪費になってしまいがちです。
しかし、少し視点を変えるだけで、それは将来の無形資産になり、リピーターを増やす仕組みになります。

政府も企業の無形資産投資を推奨している今、情報発信を単なる経費ではなく、企業価値を高める投資として捉え直す時期に来ています。
節税の本当の目的は税金を減らすことではありません。手元にお金を残し、それを増やしていくことです。

今期の情報発信費をどう使えば、来期以降のキャッシュが増えるか
この問いから逆算して、ブログやSNS、メルマガの戦略を組み立てていけば、情報発信そのものがお金を生み出す仕組みに変わっていきます。

まずは小さな一歩からで構いません。
今日の投稿、明日のブログから、少しずつ資産になる情報発信を意識してみてください。その積み重ねが、きっと1年後、2年後に大きな違いとなって現れてきます。

税務上のルールをしっかり理解した上で、計画的に、戦略的に情報発信に投資していく。
それが、本当の意味での節税であり、持続的な企業成長への近道です。

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わかお税理士
税理士(税理士登録番号:140275)、国際認証MBA(経営学修士)、ファイナンシャル・プランナー

20年以上の実務経験の中で、上場企業から中小零細企業まで100数十名の社長の経営・税務・資産形成を継続的に支援。
もっと会社にお金を残したい社長へ。利益最大化と合理的節税で通帳残高を増やす、ご機嫌な未来志向の経営をサポートしています

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