あなたの会社は何を売っていますか?中小企業の命運を分ける4つの商品モデル

目次

はじめに|売り方より先に考えるべきこと

「もっと営業力を上げなければ」
「広告を増やせば売れるはず」
そう考えて販売手法ばかりに目を向けていませんか。

もちろん、売り方を磨くことは大切です。
しかし、どれだけ優れた営業トークを身につけても、どれだけ広告費を投じても、なかなか成果につながらないことがあります。
その原因は、意外なところに潜んでいるかもしれません。

実は、ビジネスの成果は何を売るかという商品そのものの構成に大きく左右されます。
言い換えれば、自社のビジネスがどのような商品モデルに当てはまるのかを理解しないまま走り続けても、思うような結果は得られにくいということです。

本記事では、あらゆるビジネスの土台となる4つの商品モデルについて、それぞれの特徴やメリット・デメリットをわかりやすく解説していきます。
自社のビジネスを客観的に見つめ直すきっかけにしていただければ幸いです。

モノの提供|最もイメージしやすい王道のかたち

まずは、手に取れる製品をお客様に届ける有形商品のモデル。

小売業や製造業がこれに当てはまります。
お客様が実際に商品を見て、触れて、確かめられるという点で、購入の判断がしやすいのが大きな強みです。
サンプルを渡して試してもらうこともできますし、取引の安心感という意味では抜群の説得力があります

一方で、このモデルには見過ごせない落とし穴も存在します。
在庫を抱えるということは、保管場所の確保や輸送コストが発生するということ。
さらに、多くの場合、仕入れの支払いが売上の入金より先に来ます。
売れ始めた矢先や大口の注文が入ったタイミングで手元資金が足りなくなる、いわゆる黒字倒産のリスクと常に隣り合わせです。

このモデルで安定した経営を続けるためには、入金が先、支払いが後という健全なキャッシュフローを意識し続けることが欠かせません。

役務の提供|自分のスキルを武器にするサービス型

次に紹介するのは、サービスを提供するかたちのモデルです。

コンサルティング、研修、飲食、運送、建築など、業種は多岐にわたりますが、共通しているのは物理的な在庫を持たないという点でしょう。
在庫がなければ保管コストもかかりませんし、仕入れ資金の心配も少なくなります。
結果として、売上に対する利益率が高くなりやすいのがこのモデルの魅力です。

ただし、サービスは目に見えません。
お客様からすれば、お金を払う前に価値を実感しにくいという課題があります。
購入へのハードルが有形商品より高くなるのは避けられません。

そして、もう一つ忘れてはならない点があります。
サービスを提供する以上、あなた自身の稼働時間や店舗・設備のキャパシティがそのまま売上の上限になるということです。
いわゆる労働集約型のビジネスですから、どこかで成長の壁にぶつかります。
追加の設備投資や人材の採用なしに売上を伸ばし続けることは難しいのが現実です。

自分のできる範囲で堅実に経営していきたいという方には向いていますが、大きくスケールさせたい場合には工夫が必要になってきます。

コンテンツの販売|一度作れば何度でも売れる情報モデル

時間の限界を超えられる可能性を秘めているのが、情報を商品として販売するコンテンツモデルです。

わかりやすい例を挙げるなら、ミュージシャンの活動を思い浮かべてください。
ライブで演奏するのは役務の提供ですが、CDやDVDとして作品を販売するのはコンテンツの販売にあたります。
一度作ってしまえば、同じものを何度でも複製できる点が大きく異なります。

このモデルの最大の魅力は、利益率の高さと拡張性にあります。
最初の制作コストを回収した後は、売れれば売れるほど利益が積み上がっていく構造です。
特にデジタルコンテンツであれば、在庫も保管コストもほぼゼロです。
夢のある話に聞こえるのではないでしょうか。

しかし、現実はそう甘くありません。
インターネットで無料の情報があふれている今、わざわざお金を払ってでも手に入れたいと思ってもらえるコンテンツを作ることは、想像以上に難しい挑戦です。
その情報が誰にとって希少で、どんな実用性があるのか。
ここを徹底的に掘り下げなければ、見向きもされないまま終わってしまいます。

御社の持つ専門知識やノウハウに、他では手に入らない価値があるかどうか。
一度、じっくり考えてみる価値はあるでしょう。

マッチングの提供|売り手と買い手をつなぐ仲介モデル

最後に紹介するのは、自社では商品を持たずにビジネスを成立させるマッチングモデルです。

不動産仲介や人材紹介がわかりやすい例でしょう。
売りたい人と買いたい人を引き合わせ、取引が成立したら手数料をいただく。
在庫リスクがなく、専門的な対応は売り手側が担ってくれるため、運営コストを抑えやすいのが特徴です。

また、どんなにニッチな分野であっても、あなたが持っている知識やネットワークを活かしてマッチングの場を作れる可能性があります。
アイデア次第で、思わぬビジネスチャンスが生まれるかもしれません。

とはいえ、このモデルにも弱点はあります。
取引が一度成功すると、次からは当事者同士で直接やり取りされてしまうことが少なくありません。
リピートが生まれにくいため、常に新しい顧客を探し続ける必要があるのです。

さらに、売りたいという人を集めるのは比較的容易ですが、買いたいという人を継続的に集める段階で行き詰まるケースも多く見られます。
このハードルを乗り越えるには、一件あたりの取引額が大きく高い手数料が見込めるニッチな領域に絞り込むといった戦略が求められます。

自社にはどのモデルが合っているか

ここまで4つの商品モデルを見てきました。
それぞれに強みと課題があり、どれが正解ということはありません。
大切なのは、自社の状況に照らしてどのモデルが最も適しているかを見極めることです。

手元にある資金はどれくらいか。
他にはない専門スキルや知識を持っているか。
どの程度のリスクなら許容できるか。
こうした問いに向き合うことで進むべき方向が見えてくるはずです。

たとえば、資金は限られているが特定の専門知識がある場合、役務の提供やマッチングの提供から始めるのが現実的な選択肢になります。
本当にユニークな情報を持っていて時間をかける覚悟があるなら、コンテンツの販売に挑戦する価値は十分にあるでしょう。

売れ続ける仕組みを作るために

最後に、どのモデルを選ぶにしても意識していただきたい考え方をお伝えします。

一つは、対症から予防への流れを作ることです。
今まさに困っている問題を解決する商品は売りやすいですが、将来のリスクに備える商品はなかなか響きません。
人間には、自分だけは大丈夫だろうと未来のリスクを過小評価する心理があるからです。
だからこそ、まずは目の前の課題を解決して信頼を築き、その後に予防的な提案をする流れが効果的になります。

もう一つは、時系列のリピートを設計することです。
お客様が商品を購入した後、次に何を必要とするかを予測し、あらかじめ準備しておくという発想になります。
たとえば動画制作の仕事であれば、採用動画を納品した後に会社説明会用の動画を提案し、さらに研修動画へとつなげていく。
お客様のビジネスの流れに寄り添って、次に必要になるものを先回りして用意しておくことで、継続的な取引が生まれやすくなります。

おわりに

今回ご紹介した4つの商品モデルは、ビジネスを考えるうえでの基本的な枠組みにすぎません。
しかし、この基本を押さえているかどうかで、その後の打ち手の精度は大きく変わってきます。

たった一度の取引で終わりにするのではなく、お客様の未来を見据えて次に何が必要とされるかを考え続けること。
その姿勢があれば、一過性ではない、長く続くビジネスを築いていけるはずです。

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わかお税理士
税理士(税理士登録番号:140275)、国際認証MBA(経営学修士)、ファイナンシャル・プランナー

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