決算前の駆け込み節税をやめて、逆算思考の社長になりませんか

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決算が近づくと、なぜか焦ってしまう

決算の時期が近づくと税理士さんからこんな連絡が入ります。

「社長、今年は利益が出そうですね」

この一言を聞いた瞬間、なんとなく焦りを感じたことはありませんか。

「利益が出る=税金をたくさん取られる」というイメージが頭をよぎり、
慌てて備品を買ったり、接待を増やしたり。

決算月になると、とにかく何かお金を使わなければと落ち着かない気持ちになる社長は、実はとても多いです。

私自身、多くの経営者の方とお話しする中で、この駆け込み節税が会社の現金を一番ムダに減らしている原因だと感じています。

もちろん、税金は少ないほうがいいに決まっています。
しかし、節税のつもりで使ったお金が、実は会社の体力を奪っているとしたらどうでしょうか。

今日は、この駆け込み節税の落とし穴と、それに代わる考え方についてお伝えしていきます。

なぜ今、手元現金がこれほど重要なのか

ここ数年、中小企業を取り巻く環境は大きく変わりました。

特に注目すべきは、コロナ禍で多くの企業が利用した実質無利子・無担保融資、いわゆるゼロゼロ融資の返済が本格化していることです。

中小企業庁の分析によると、返済開始に伴い、黒字であっても資金繰りが回らず倒産する事例や、過剰債務により新たな融資が受けられない事例が報告されています。

つまり、決算書上は利益が出ていても、実際に返済に充てる現金がなければ事業は継続できません。
利益の額だけでなく、返済原資となるキャッシュの確保が、今まで以上に重要になっています。

税金を払う=損という思い込みを手放してみる

そもそも、税金を払うことは本当に損なのでしょうか。

少し視点を変えてみると、税金を払うということは、それだけ利益が出ている証拠でもあります。

金融機関が融資を検討するとき、まず見るのは決算書です。
この会社はどれくらい稼ぐ力があるのか、安定して利益を出せているのかを確認します。

さらに近年、金融庁は金融機関に対し、担保や保証に過度に依存せず、企業の事業内容や成長可能性を評価して融資を行うよう促しています。
これは事業性評価融資と呼ばれる考え方です。

決算書上の利益を無理に圧縮して見栄えを悪くすることは、こうした将来性の評価においてマイナスに働く可能性があります。
大手企業との新規取引でも、信用調査で決算内容をチェックされることは珍しくありません。

節税を意識するあまり利益を削りすぎると、銀行融資の審査で不利になることがあります。
取引先からの信用調査でマイナス評価を受け、せっかくのビジネスチャンスを逃すこともあります。
さらに、内部留保が少なくなると、予期せぬ出来事が起きたときに資金がショートするリスクが高まります。

税金を払いたくないから利益を減らすという発想は、短期的には得をしたように見えても、長い目で見ると会社の首を絞めていることになりかねません。

大切なのは、税金をゼロにすることではありません。
税金を払ってもなお、通帳にしっかりお金が残っている状態こそ、目指すべき姿ではないでしょうか。

逆算思考に切り替えると判断が変わる

決算間際に慌てる社長には、ある共通点があります。
それは、今年いくら利益を出すべきか、いくら通帳に残すべきかというゴールが明確になっていないことです。

漠然と売上を追いかけ、経費を使い、決算が近づいてから利益の金額を知る。
だから、利益が出ていると聞いて焦ってしまいます。

ここで、逆算思考という考え方を取り入れてみてください。

まず、今年の返済額を確認します。
借入金がある場合、毎月の返済は必ず発生します。
これに加えて、来期以降に備えてどれくらい現金を貯めておきたいかを決めます。

次に、返済と貯金に必要な現金を確保するために、どれくらいの利益が必要かを計算します。
税金を払った後に手元に残るお金から逆算します。

必要な利益がわかれば、そのために必要な粗利がわかります。
粗利がわかれば、達成すべき売上が見えてきます。

もし必要な粗利に届きそうにない場合は、値上げや仕入れの見直し、固定費の削減などで埋める方法を考えます。

このフレームワークがあると、利益が出過ぎたから何か買わなければという発想自体がなくなります。

目標を上回った利益は、来期以降のバッファーとして内部留保に積んでおくという選択肢があるからです。

経費で落とせるという思考は静かな中毒症状

駆け込み節税を毎年繰り返していると、いつの間にか危険な思考パターンが身についてきます。

経費で落ちるからいいやという思考が、無意識のうちにクセになってしまいます。

使いもしないサブスクリプションサービスを契約したまま放置していませんか。
効果が測定できない接待やゴルフ、贈答品が増えていませんか。
必要以上に豪華なオフィス内装にお金をかけていませんか。

経費で落ちるからという理由だけでお金を使うようになると、会社の体質は少しずつ悪化していきます。

粗利率は改善されないまま低い状態が続きます。
固定費はどんどん重くなります。
手元に残る現金は薄くなる一方です。

これは、急激に資金が枯渇するわけではないので気づきにくいのですが、ゆるやかな自滅コースに入っている状態です。

この流れを断ち切るには、お金を使う前に一度立ち止まることが大切です。

このお金は、いつ、どれくらい増えて戻ってくるのか
この問いを経費を使う前に投げかける習慣をつけてみてください。

お金を生む節税だけを残していく

駆け込み節税をやめましょうと言っても、すべての節税をやめる必要はありません。

大切なのは、お金を生む節税と、ただお金を減らすだけの節税を区別することです。

たとえば、社員の教育投資はどうでしょうか。
スキルが向上すれば、顧客満足度が上がり、リピートや紹介につながる可能性があります。

業務効率を上げるIT投資も同様です。
作業時間が短縮されれば、同じ人数でより多くの仕事ができるようになります。

離職率を下げるための福利厚生や働き方の改善も、採用コストの削減や組織の安定につながります。

これらは単なる経費ではなく、将来の売上や利益に貢献する可能性が高い投資です。
こうした投資に対しては、さまざまな優遇税制が用意されています。

優遇税制をうまく活用すれば、今期の税金を減らしながら、来期以降の粗利を増やすことができます。
これこそが、本来の意味での節税です。

年度初めに節税の設計図を描いておく

駆け込み節税をやめるための、とてもシンプルな方法があります。

それは、決算2ヶ月前以降は節税のための新規支出はしないとルール化してしまうことです。

最初は少し不安に感じるかもしれません。でも、このルールがあるからこそ、年度の初めにしっかり考えるようになります。

年度が始まったら、今年やる投資を決めます。
設備投資、人材投資、IT投資など、会社の成長に必要なものをリストアップします。

次に、活用できる優遇税制を確認します。
中小企業向けの税制優遇は意外と多くあります。税理士さんと相談しながら、使えるものを洗い出しておきましょう。

さらに、役員退職金の準備、出張日当の規程整備、社宅制度の導入など、制度として整えておくべきものがあれば、このタイミングで着手します。

あとは、月次決算で進捗をチェックしながら、必要に応じて早めに微調整していくだけです。

このスタイルに変えると、決算前に税理士さんと何かありませんかと慌てて相談すること自体がなくなります。

節税は思いつきではなく設計するもの

駆け込み節税で減らしているのは、税金ではなく、会社の体力である現金です。

逆算思考で経営する社長は、まず通帳に残すべき現金の金額を決めます。
そこから必要な利益と粗利を逆算し、達成すべき売上を明確にします。
年度の初めに、お金を生む節税だけを設計します。
そして、決算前の思いつき支出は一切しないと決めています。

税金を払わないためにお金を使う社長から、未来の利益を作るためにお金を使い、結果として税金が減る社長へ

この発想の転換ができたら、通帳の残高は少しずつ、確実に増えていきます。

節税は、思いつきでするものではありません。会社の未来を見据えて、設計するものです。

今年の決算から、ぜひ逆算思考を取り入れてみてください。
きっと、お金との付き合い方が変わってくるはずです。

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わかお税理士
税理士(税理士登録番号:140275)、国際認証MBA(経営学修士)、ファイナンシャル・プランナー

20年以上の実務経験の中で、上場企業から中小零細企業まで100数十名の社長の経営・税務・資産形成を継続的に支援。
もっと会社にお金を残したい社長へ。利益最大化と合理的節税で通帳残高を増やす、ご機嫌な未来志向の経営をサポートしています

【執筆税務論文】
組織再編税制に係る行為計算否認規定の解釈とその適用

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