新規顧客開拓の呪縛から解放される、情報発信を活かした経営と賢い節税の進め方

目次

はじめに:毎月の集客に疲れていませんか

月が変わるたびに新規のお客様を探し続ける日々。広告費がかさんで利益が残らない。売上はあるのに、なぜか資金繰りが苦しい。

こんなお悩みを抱えながら、日々頑張っていらっしゃる経営者の方は多いのではないでしょうか。

実は、このような状況から脱却する鍵は、既存顧客との関係強化にあります。
中小企業庁が2024年5月に公表した中小企業白書によると、デジタル化を活用して顧客管理システムやSNS等で顧客接点を強化している企業は、そうでない企業と比べて売上高および労働生産性が増加傾向にあることが明らかになっています。

今回は、新規開拓中心の経営から脱却し、情報発信を活用してリピーター中心の安定経営を実現する方法を、データに基づいてお伝えします。

そして、その結果として自然と節税も設計しやすくなる仕組みについて解説します。

なぜ新規開拓ばかりではお金が残らないのか

5倍のコストがかかる新規獲得の現実

マーケティングの世界では、新規顧客獲得コストは既存顧客維持の5倍かかるという法則が知られています。

これは米国のフレデリック・ライクヘルド氏が提唱した理論ですが、日本においても経済産業省のサービス産業生産性向上ガイドラインで、人口減少社会においては顧客生涯価値(LTV)の最大化、つまり既存顧客との関係性強化が極めて重要であると指摘されています。

実際に計算してみましょう。月30万円の広告費で10人の新規客を獲得したとすると、一人あたり3万円のコストです。さらに営業担当者の時間や資料作成の手間を考えると、実際のコストはもっと大きくなります。

多くの業種において、この新規獲得コストは初回購入で得られる利益を上回り、実質的に赤字からスタートしています。

毎月リセットされる不安と疲弊

新規開拓に依存している会社では、月が変わるたびに売上がゼロからのスタートになります。

先月どんなに頑張って売上を上げても、今月また同じだけの新規客を獲得しなければならない。
この繰り返しは、経営者の精神的な負担も相当なものです。

広告を止めたら売上が止まってしまうという恐怖から、効果が薄れてきた広告にも投資を続けざるを得ない。
こうして、利益率はどんどん低下していきます。

リピーター中心経営がもたらす3つの安心

1. 劇的に下がる顧客獲得コスト

既存のお客様にもう一度購入していただくためのコストは、新規開拓と比べて驚くほど少なくて済みます。

メールマガジンやLINEでの情報配信なら、一人あたりのコストは数円から数十円程度です。
ニュースレターを郵送しても、せいぜい一通200円程度です。新規獲得に数万円かかることを考えれば、その差は歴然としています。

この効率性の高さは、単なる理論ではなく、多くの企業が実感している事実です。

2. 売上予測が可能になる経営の安定

リピーターが増えてくると、今月は最低でもこれくらいの売上は見込めるという基準ができてきます。
この安定感は、単に資金繰りが楽になるだけでなく、経営判断の質を大きく向上させます。

新商品の開発や設備投資、人材採用など、中長期的な投資判断も自信を持って行えるようになります。

3. 深まるお客様との信頼関係

リピーターとは、つまりあなたの会社を信頼してくださっているお客様です。
こうしたお客様は、単に商品やサービスを購入してくださるだけでなく、貴重なフィードバックや新規顧客の紹介など、様々な形で会社の成長を支えてくださいます。

デジタルを活用したCAP理論で作る情報発信の仕組み

まずは知ってもらうことから(Connect)

リピーター中心の経営を実現するために、私がおすすめしているのがCAP理論という考え方です。

これは、中小企業庁の調査でも効果が実証されているデジタル活用による顧客接点強化の具体的な方法論でもあります。

まずCはConnect(つながる)の頭文字です。

SNSやホームページなど、お客様との最初の接点を作る段階です。ここでは、あなたの会社の存在を知ってもらうことが目的です。

大切なのは、いきなり売り込まないこと。
まずは有益な情報や興味深い話題を提供して、この会社、なんだか気になるなと思ってもらうことから始めます。

信頼を積み重ねる(Archive)

次のAはArchive(蓄積)です。
ブログ記事や動画コンテンツなど、あなたの専門知識や価値観を伝える情報を蓄積していく段階です。

お客様が何か困ったときに検索して、あなたの会社のブログ記事にたどり着く。
そこで問題が解決して、この会社は本当に詳しいんだなと感じてもらえる
こうした体験の積み重ねが、信頼関係を築いていきます。

忘れられない関係を作る(Push)

最後のPはPush(プッシュ)です。
メルマガやLINEなど、こちらから定期的に情報をお届けする仕組みです。

どんなに良い商品やサービスでも、忘れられてしまえば購入にはつながりません。
定期的に有益な情報をお届けすることで、お客様の記憶に留まり続けることができます。

 

この3つの要素を組み合わせることで、適切なタイミングで新規のお客様から自然と問合せが入って来るようになります。
ここで大切なのは、リピート売上の仕組みを作ってから新規のお客様を開拓するということです。

リピートの仕組みなしに新規のお客様を追いかける行為は、穴の開いたバケツに一生懸命水を汲んでいる行為と同じです。
まずは、穴をふさいでから水を注ぎましょう。

節税が年度初めから設計できるようになる理由

利益予測が立つことの価値

リピーターが増えて売上が安定してくると、年度初めの段階で今年はこれくらいの利益が出そうだという予測が立てられるようになります。

これは節税対策において、革命的な変化をもたらします。
なぜなら、慌てて年度末に節税商品を購入するのではなく、年間を通じて計画的に投資や経費を使えるようになるからです。

投資と節税の理想的な形

たとえば、年度初めに以下のような計画を立てることができます。

上半期は既存顧客向けのサービス改善に投資する。
下半期は来年度の成長に向けた人材育成に力を入れる。
利益の着地を見ながら、適切な納税資金を確保する。

今期「種まき」として経費を使う(=節税)、来期「刈り取って」利益を生む(=回収)。
このサイクルこそがお金を生む節税です。

このように、節税が目的ではなく、事業成長のための投資が結果的に節税にもなるという、理想的な形が実現できます。

広告費の使い道を変える勇気

新規開拓費用の一部を既存客へ

これまで新規開拓に使っていた予算の一部を、思い切って既存顧客向けの施策に振り替えてみませんか。

経済産業省も指摘する通り、人口減少社会においては新規顧客の獲得はますます困難になっていきます。
だからこそ、既存顧客との関係性を深め、顧客生涯価値を最大化することが、持続可能な経営の鍵となるのです。

具体的な投資先の例

既存顧客向けの投資といっても、難しく考える必要はありません。

たとえば、
お客様限定の勉強会を開催する。
購入者だけが読める特別なニュースレターを作る。
顧客管理システムを導入してアフターフォローの体制を充実させる。

こうした取り組みはすべて経費として計上できますし、何より既存のお客様の満足度を高め、リピート率の向上につながります。

おわりに:情報発信からリピート、そして安定経営へ

新規開拓依存から脱却し、リピーター中心の経営に転換することは、もはや選択肢の一つではなく、必然の流れとなっています。
中小企業庁の調査データも、経済産業省の指針も、すべてが既存顧客との関係強化の重要性を示しています。

今日から始められることはたくさんあります。
まずは、既存のお客様に向けて、お礼のメッセージを送ってみる。
ブログで専門知識を一つ共有してみる。
メルマガの配信を始めてみる。

始めは小さな一歩でも、それが積み重なれば大きな変化につながります。

デジタル化による顧客接点の強化は、決して大企業だけの話ではありません。
むしろ、リソースが限られている中小企業こそ、効率的な既存顧客維持の仕組みを作ることで利益率を維持していかなければなりません。

情報発信を通じてお客様との関係を深め、リピーター中心の安定経営を実現する。
そして、その安定した利益構造の上に、計画的な節税設計を組み立てる。

この好循環を作ることができれば、新規開拓に追われる日々から、お客様に喜ばれながら成長する経営へと、会社の姿は大きく変わっていくはずです。

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わかお税理士
税理士(税理士登録番号:140275)、国際認証MBA(経営学修士)、ファイナンシャル・プランナー

20年以上の実務経験の中で、上場企業から中小零細企業まで100数十名の社長の経営・税務・資産形成を継続的に支援。
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