黒字なのに融資が通らない本当の理由、銀行があなたの決算書で真っ先にチェックする科目とは

法人税務を専門とする税理士として、これまで数多くの中小企業の決算書を拝見してきました。
その中で、とても惜しいケースに何度も出会っています。
業績は悪くないのに、なぜか銀行からの評価が低い会社が少なくありません。

「利益は出ているはずなのに、銀行の反応がどうも渋い」
「融資の金利が思うように下がらない」
「追加融資をお願いしたら、やんわりと断られてしまった」

こうした経験に心当たりはありませんか?

もしこのような違和感を抱いているなら、その原因は十中八九、決算書の資産の部に隠れています。
実は銀行員は、提出された決算書をそのまま額面通りには見ていません。
銀行内部のルールに従って、決算書を実態バランスシートへと引き直し、独自の視点で評価を行っています。

今回は、銀行格付けの仕組みと、多くの経営者が気づかないうちに放置してしまっている問題について、できるだけわかりやすくお伝えしていきます。

目次

銀行格付けの仕組みを知っておこう

まず、大前提を共有させてください。
銀行融資において、金利や貸出条件、そもそも融資するかどうかの判断基準となるのは、銀行内部での債務者区分、いわゆる格付けです。

この格付けは、担当者との相性や社長の人柄だけで決まるものではありません。
評価の7割から8割は、決算書の数値に基づく定量評価で自動的に決まってしまいます。
つまり、決算書が出来上がった時点で、翌1年間の会社の資金調達力はほぼ決まっていると言っても過言ではないでしょう。

正常先と要注意先の大きな違い

中小企業の約95パーセントは、銀行の区分でいう正常先か要注意先のどちらかに分類されます。
この二つの間には、実は大きな差があります。

正常先というのは、銀行が積極的に融資したいと考える優良顧客のことです。
低い金利、無担保・無保証、長期返済など、有利な条件が提示されやすくなります。

一方、要注意先は、銀行が貸出にリスクがあると警戒する顧客です。
金利は高めに設定され、追加担保や保証人を求められることも珍しくありません。
融資審査も当然ながら慎重になります。

経営者として目指すべきは、間違いなく正常先の上位ランクでしょう。
では、銀行は決算書のどこを見て、このランクを決めているのでしょうか。

銀行が重視する6つの評価ポイント

銀行のスコアリングシステムは複雑ですが、経営者として意識すべきポイントは大きく6つあります。
これらを数値化して合算したものが、御社の点数となっていきます。

安全性について

最も配点が高い項目が、この安全性です。

自己資本比率は、純資産を総資産で割った数値で、会社の資産のうち返済不要な自己資金がどれだけあるかを示しています。
最低でも10パーセント以上は欲しいところで、優良企業を目指すなら30パーセントから40パーセントが必要になってきます。

ギアリング比率は、有利子負債を自己資本で割った数値です。
借金が自己資本の何倍あるかを表しており、200パーセント以下、つまり借金が自己資本の2倍以内に収まっていることが望ましいでしょう。

返済能力について

稼ぐ力と借金の量のバランスを見るための指標になります。

債務償還年数は、有利子負債を税引後利益と減価償却費の合計で割った数値になります。
今のキャッシュフローで借金を完済するのに何年かかるかを示しており、10年以内が目標です。
7年以内であれば理想的ですが、これを超えると要注意先への転落リスクが高まってしまいます。

収益性について

本業で利益を出せているかどうかを確認するポイントです。

売上高経常利益率は、売上高に対する経常利益の割合を表しています。
業種や会社規模にもよりますが、まずは5パーセント以上で黒字を確保し、10パーセント以上あれば高い評価を得られます。

流動性について

資金繰りがきちんと回っているかを判断する項目になります。

流動比率は、流動資産を流動負債で割った数値で、1年以内に支払うお金に対して、1年以内に入ってくるお金が足りているかを示しています。120パーセント以上が目標で、これを下回ると資金繰りが厳しいとみなされてしまう可能性があります。

これらは教科書的な指標ですが、銀行はこれらを表面上の数字だけでは判断しません。ここで登場するのが、実態修正というプロセスです。

銀行が最も警戒する科目とは

ここからが本題になります。
多くの中小企業経営者が軽く考えているものの、銀行員が最も警戒する勘定科目があります。

それが役員貸付金仮払金です。

御社の決算書に、これらの科目が載っていないでしょうか?

なぜ役員貸付金が問題になるのか

「ちょっと個人的な支払いで現金が必要だったから、会社から引き出した」
「生活費が一時的に足りなくて、会社から借りる形にした」

こうした経緯で発生することが多い役員貸付金ですが、銀行からどのように見られているかご存知でしょうか。

銀行員の視点から見ると、役員貸付金は公私混同や会社資金の私的流用という印象を与えてしまいます
言葉を選ばずに言えば、会社のお金が本来の事業目的以外に使われているという疑念を持たれかねません。

銀行は事業の発展のために資金を貸しています。
そのお金が、回り回って社長個人の用途に消えているとしたらどうでしょう。
そういった会社に追加融資をしたいと考える銀行員は、残念ながらほとんどいないのが現実です。

資産価値ゼロという評価

感情的な問題だけではありません。実務的な評価においても、深刻な影響が出てきます。

銀行の審査において、役員貸付金や使途不明の仮払金は、資産価値がないものとして扱われます。
決算書上は資産として計上されていても、銀行の実態査定では回収が難しい不良資産として処理されてしまいます

実態バランスシートで見るとこうなる

具体的な数字で見てみましょう。

表面上の決算書が以下のような状態だったとします。

資産合計は1億円で、内訳は現金が2000万円、売掛金が3000万円、役員貸付金が2000万円、その他が3000万円です。
負債合計は9000万円で、純資産つまり自己資本は1000万円となっています。

表面上は資産が負債を上回っており、純資産がプラス1000万円の資産超過の状態です。
一見すると、特に問題なさそうに見えるかもしれません。

しかし、銀行がこれを査定するとどうなるか。

役員貸付金2000万円は資産性なしとしてマイナス控除されます。
修正後の資産合計は1億円から2000万円を引いた8000万円です。
負債合計は9000万円のまま変わりませんから、実質純資産は8000万円から9000万円を引いてマイナス1000万円となります。

おわかりいただけたでしょうか。
決算書上は黒字経営で資産超過の状態に見えていても、銀行の目には実質債務超過の会社として映っています。

実質債務超過と判定されれば、格付けは一気に要注意先以下、最悪の場合は破綻懸念先へと下がってしまいます。
当然ながら新規融資は難しくなり、既存融資の金利引き上げや返済条件の見直しを求められることにもなりかねません。

たかが役員貸付金と思っていたものが、会社の資金調達の道を閉ざしてしまう可能性があります。

他にも注意が必要な科目がある

役員貸付金以外にも、銀行がマイナス評価する項目がいくつかあります。

回収できていない売掛金は要注意です。
何年も回収できないまま残っている売掛金はありませんか。
銀行は入金履歴をチェックしており、動きのない債権はゼロ評価されてしまいます。

不良在庫も同様です。
1年以上動いていない在庫は、換金価値がないものとしてゼロ評価、あるいは大幅に減額されます。

繰延資産が過大な場合も問題になります。
開発費などを資産計上している場合、収益性が伴わなければ資産価値なしとみなされることがあります。

これらが積み重なると、実質自己資本はあっという間にマイナスになってしまうこともあり得ます。
これを防ぐためには、決算を迎える前に税理士と協力して対策を講じる必要があるでしょう。

問題を解決するための具体的な方法

では、すでに計上されてしまった役員貸付金や不良資産をどう処理すべきか。
痛みを伴う場合もありますが、ここから逃げていては状況は改善しません。

役員報酬を増やして返済する方法

これが最も現実的な解決策です。
社長個人の役員報酬を上げて、増えた手取り分から会社へ返済していきます。

「でも、役員報酬を上げると所得税や社会保険料が増えるではないか」

おっしゃる通りです。
個人の税負担は増えますし、会社の利益も減少します。
しかし、個人で税金を払ってでも会社のバランスシートをきれいにすることが、銀行からの信頼を勝ち取る道です。
目先の税金を惜しんで融資が止まり、会社が立ち行かなくなってしまっては本末転倒でしょう。

個人資産を活用する方法

社長個人が所有する不動産や有価証券、あるいは解約返戻金のある保険などを現金化して、会社への返済に充てる方法もあります。
会社と個人は別という線引きを明確にするための、覚悟を持った改革といえます。

不良資産の処理

回収できない売掛金や売れない在庫は、思い切って貸倒損失や廃棄損として計上し、バランスシートから外すことも検討すべきでしょう。
一時的に赤字になるかもしれませんが、問題を出し切ったきれいなバランスシートは、翌期以降の回復への土台となります。
銀行に対しても、不健全な資産を処理して筋肉質な財務体質を目指したと説明すれば、むしろ評価されることが多いです。

財務は正直に向き合うことが大切

経営者の皆さんにお伝えしたいのは、決算書の見栄えを良くしようとする小さな工夫が、かえって逆効果になることがあるということです。

あなたの会社の決算書に、役員貸付金の項目は載っていませんか?

銀行というプロの目には、表面上の数字の裏側まで見えています。
そして、その代償は、いざというときに資金が借りられないという形で、最も苦しいときに降りかかってきてしまいます。

役員貸付金をゼロにすること。
不明朗な仮払金をなくすこと。
実態で資産超過を維持すること。
これらはテクニック以前の経営者の姿勢の問題といえるかもしれません。

直近の決算書を取り出してみてください。
もしそこに役員貸付金の文字があるなら、次の決算までにどう解消するか、顧問税理士と話し合いの機会を設けることをおすすめします。
それが、これからの金利上昇局面、選別融資の時代を生き残るための、最初の、そして最も重要な一歩になるはずです。

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わかお税理士
税理士(税理士登録番号:140275)、国際認証MBA(経営学修士)、ファイナンシャル・プランナー

20年以上の実務経験の中で、上場企業から中小零細企業まで100数十名の社長の経営・税務・資産形成を継続的に支援。
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