決算書が赤字でも融資は引ける。A4用紙1枚で銀行の評価をひっくり返す方法

原材料費の高騰や円安の影響で、今期は赤字になってしまった。
決算書を見るたびに、銀行はもう相手にしてくれないだろうと頭を抱えていませんか。
あるいは、うちには確かな技術力があるのに、どうして銀行はその価値を分かってくれないのだろうと、もどかしさを感じていませんか。

もしそうなら、どうか諦めないでください。
銀行の格付けは、決算書の数字だけで100%決まるわけではありません。
実は、定性評価という敗者復活戦のような加点要素が存在するのをご存じでしょうか。

2026年現在、金利上昇によって企業の本当の稼ぐ力が試される中で、銀行側も必死になっています。
今は数字が悪くても将来伸びる企業なのか、それともこのまま衰退していく企業なのか。
その見極めに全力を注いでいるのが実情です。

この記事では、決算書の数字では弱い中小企業が言葉とロジックで銀行を説得し、格付けを逆転させるための定性評価向上戦略について、税理士の視点から詳しくお伝えしていきます。

目次

銀行員は御社の業界について詳しくないという現実

まずは、現実からお話しさせてください。
銀行員は金融のプロではありますが、製造業のプロでも、飲食業のプロでも、ITのプロでもありません。

彼らは、御社の工場にある機械がどれほど高性能なものか知りません。
御社の職人が持っている技術が、どれほど代替不可能なものか分かりません。
御社が長年築いてきた顧客との信頼関係が、どれほど強固な参入障壁になっているか、想像することさえ難しいでしょう。

これを専門用語で情報の非対称性と呼びます。

黙っていると無能だと思われてしまう

多くの職人気質の経営者は、良い仕事をしていれば、いつか分かってくれるはずだと考えがちです。
しかし、銀行融資の世界において、その態度は致命的といえます。

銀行員は、分からないものにはリスクを感じます。
御社のビジネスモデルや強みが理解できなければ、彼らはどうするでしょうか。
唯一彼らが理解できる共通言語、つまり決算書の数字だけを見て判断することになってしまいます。

数字が悪いときに、定性的な強みも説明しない。
これでは、自ら私はダメな経営者ですと認めているようなものです。

武器となる事業性評価とは何か

金融庁は長年、銀行に対して担保や保証に過度に依存せず、企業の事業内容や成長可能性を評価して融資しなさいと指導してきました。
これを事業性評価といいます。

事業性評価とは、決算書という過去の結果ではなく、ビジネスモデルという未来のキャッシュフローを生む源泉を評価する考え方です。

ただし、現場の銀行員は忙しく、すべての取引先の事業内容を深く理解する時間がありません。
そこで重要になるのが、経営者の側から私の会社の事業性はここにありますと分かりやすくまとめた資料を渡してあげることです。
いわば銀行員へのカンニングペーパーのようなものです。

そのための心強いツールが、経済産業省が推奨するローカルベンチマーク、通称ロカベンと呼ばれるものです。

ローカルベンチマークで強みを見える化する

ローカルベンチマークには財務情報として6つの指標と、非財務情報として4つの視点があります。
今回重要になるのは、後者の非財務情報の方です。
これを銀行員に見せるだけで、この社長は経営を分かっているなと一目置かれることでしょう。

以下の4つの視点を、A4用紙1枚にまとめてみてください。

1つ目の視点:経営理念とビジョン

きれいごとだと思わないでください。
銀行が見ているのは経営者の本気度と事業の継続可能性です。

社長はなぜこの事業をやっているのか。従業員にその理念は浸透しているか。将来、どのような会社にしたいのか。
こうした問いに対する答えを、具体的な数値目標も含めて言葉にしてみましょう。

2つ目の視点:経営者・経営幹部・従業員というヒトの強み

中小企業の最大の資産はヒトです。

社長の経歴や業界経験年数は重要な評価ポイントになります。ベテランであることは、それだけで信用につながるからです。
後継者が決まっているかどうかも見られています。決まっていれば格付けにプラスの影響があります。
従業員の定着率が高いかどうかも大切で、低い離職率は優良企業の証といえます。
独自の資格や技能を持った職人が何人いるかも、ぜひアピールしてください。

3つ目の視点:企業を取り巻く環境

御社の市場は拡大しているか、縮小しているか。
競合他社と比較して、御社の立ち位置はどこにあるか。
主要な取引先はどこか。
こうした点を整理しておくと良いでしょう。大手企業との直接取引があれば、それは強力な武器になります。

4つ目の視点:内部管理体制・商品・サービスというモノとカネの強み

御社の商品やサービスの独自性は何でしょうか。
特許、製法、立地など、具体的に挙げてみてください。
他社が真似できない理由は何か、これがいわゆる参入障壁になります。
IT化やDXへの取り組み状況も、最近では重要な評価ポイントです。

これらを言語化し、銀行担当者に当社の事業性評価シートですと言って手渡してみてください。
担当者はその紙をそのまま稟議書、つまり融資の申請書に添付できるため、大変喜ばれます。

結果として、審査部への説得力が格段に増すことになります。

弱みは隠さない。SWOT分析で信頼を勝ち取る方法

定性評価を上げるための最大のポイントは、実は強みのアピールではありません。
弱みの開示と、それへの対策を示すことです。

御社のビジネスに弱みはありませんか? 
そう聞かれて、何も問題ありませんと答える社長を、銀行員は信用しません。そんなはずはない、リスクがあるはずだとあら探しを始めてしまいます。

逆に、自ら弱みをさらけ出し、その対策を語る社長には信頼を寄せます。これをSWOT分析を使って行うと効果的です。

銀行の心に刺さるSWOT分析の伝え方

悪い例を見てみましょう。

銀行員が最近、原材料費が上がっていますが、影響はありますかと尋ねたとします。
社長がまあ、なんとかやってますよと答える。
実は利益が激減しているのに言いたくないから曖昧にしている。
このとき銀行員は心の中で、具体的な対策がないようだ、リスクが高いなと判断しています。

では、良い例はどうでしょうか。

まず弱みとして、おっしゃる通り、円安による材料高騰で粗利率が5%低下していますと正直に認めます。
脅威として、今後もこの傾向は続くと見ていますと伝えます。
そのうえで機会と対策として、不採算だった製品の製造を中止し、高付加価値な製品にラインを集中させました、また、先月から取引先への価格転嫁交渉を行い、8割の承諾を得ていますと具体的なアクションを説明します。
最後に強みとして、当社の技術力があれば他社に乗り換えられないという強みがあるため、強気の交渉ができましたと締めくくります。

粗利率が低下しているというネガティブな事実を認めていますが、それに対する具体的なアクションがセットになっているのがポイントです。

これを聞いた銀行員は、この社長はリスク管理ができている、この会社なら金を貸しても回収できると判断し、定性評価のポイントを加点してくれます。

社長は会社の広報担当になりましょう

良いモノを作っていれば売れるという時代が終わったように、良い経営をしていれば銀行が分かってくれるという時代も終わりました。
今は、金利ある世界であり、選別融資の時代です。

銀行の格付けにおいて、決算書の数字という定量面を変えるには時間がかかります。
自己資本を増やすには、何年も利益を積み上げなければなりません。
しかし、定性評価は、社長の伝え方ひとつで、明日からでも変えることができます。

自社の強みを言語化すること。
弱みを認め、対策を提示すること。
定期的に銀行と対話し、未来を語ること。

これらはすべて、コストゼロでできる強力なの財務戦略です。

決算書の数字だけで一喜一憂しないでください。
御社の本当の価値は、数字の裏側にある現場と経営者の頭の中にあります。
それを銀行員に翻訳して伝えることこそが、社長であるあなたにしかできない重要な仕事です。

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わかお税理士
税理士(税理士登録番号:140275)、国際認証MBA(経営学修士)、ファイナンシャル・プランナー

20年以上の実務経験の中で、上場企業から中小零細企業まで100数十名の社長の経営・税務・資産形成を継続的に支援。
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