本屋の立ち読みでスッキリわかる。節税・租税回避・脱税の決定的な違いとは

会社を経営していれば、誰でも一度は考えたことがあるはずです。

「できるだけ税金を減らしたい」

この気持ちは、決して後ろめたいものではありません。
利益を出しながらも手元にお金を残したいと考えるのは、経営者として当然の責務でしょう。
むしろ、その感覚がなければ会社を守り続けることはできません。

しかし、その思いが空回りすると、思わぬ落とし穴にはまることがあります。

「このくらいなら問題ないだろう」
「他の社長もやっているから大丈夫」

そんな軽い気持ちで実行した方策が、数年後の税務調査で全て否認されてしまう。
場合によっては脱税と認定され、重いペナルティーだけでなく、銀行からの信用や取引先との関係まで失ってしまう。そうした痛ましいケースは実際に多数存在します。

税務対策には色分けが存在します。
節税は白、租税回避はグレー、脱税は黒。
白と黒は比較的わかりやすいかもしれません。
しかし、経営判断で最も厄介なのは、その間に広がるグレーの世界ではないでしょうか?

今回は、酒井克彦先生が著書で紹介されている、とてもわかりやすい例え話をお借りして、この境界線をご説明します。

舞台は本屋です。
そこには『立読禁止!ただしレジ周りを除く』という貼り紙があります。

目次

節税とは何か。堂々と権利を使って会社の財産を守る行為

まずは本屋での場面を想像してみてください。

あなたは購入予定の本を手に取り、レジの行列に並んでいます。
会計を待っている間、少し手持ち無沙汰になったので、その本をパラパラとめくって内容を確認しています。

これが節税に当たる行動です。

本屋の店長は立読禁止というルールを掲げていますが、本を購入するお客様がレジ待ちの間に中身を確認することまでは禁じていません。
むしろ「どうぞ中身を見て、納得してからお買い上げください」というスタンスでしょう。
店長が意図したとおりの行動ですから、何も咎められることはありません。

税務的な表現に直すと、これは税法が予定している範囲内で、税負担の軽減を図る行為ということになります。

経営の現場ではどういうことか

節税とは、国が予定している行為であり、許されている行為ですので否認されることはありません
これは経営者に与えられた正当な権利と言えます。

たとえば、中小企業経営強化税制などの優遇税制を活用すれば、国が指定する設備投資を行った場合に即時償却や税額控除を受けられます。
飲食代の交際費除外についても、要件を満たしたものを正しく処理することで交際費課税を避けることができます。
出張手当の支給では、適正な規程を作成すれば、会社は経費として計上でき、受け取る個人は非課税になります。

これらは、税務署が調査に来ても胸を張って見せられる処理ばかりです。

ところが残念なことに、手続きが面倒だから、あるいはよくわからないからという理由で、この権利を使っていない経営者が多いのが現実でしょう。
権利は自ら行使しなければスルーされます。税務署が自発的に税金を安くしてくれることはありません。
本屋の店長がレジ待ちの客に「立読みできますよ」とわざわざ勧めないのと同じです。

まずはこの白の領域を徹底的にやり切ることが、会社にお金を残す第一歩となります。

租税回避とは何か。法の抜け穴を突く行為と公平性との戦い

次に、別の場面を想像してみましょう。

あなたはレジの周りで買う気もないのに立ち読みをしています。
あるいはレジから離れた店の隅で座り読みをしています。

これが租税回避に当たる行動です。

この状況で店長が注意しに来たとしましょう。するとあなたはこう反論します。

「立ち読み禁止は『レジ周りを除く』と書いてあるじゃないか」
「『立ち読み禁止』とは書いてあるが、座り読み禁止とは書いてない」

確かに、貼り紙の文言だけを厳密に解釈すれば、この言い分は通るかもしれません。
これが税務の世界でいう租税法律主義という考え方です。

しかし、店長や他のお客様はどう思うでしょうか?

「屁理屈はやめてくれ。常識で考えてダメに決まっている」
「みんなはお金を払って買っているのに、あなただけタダ読みするのはズルいじゃないか」

この感覚が、税務の世界でいう租税公平主義に当たります。

税務調査や裁判で争われる論点の多くは、この二つの原則のぶつかり合いから生まれています。

経営の現場ではどういうことか

法律に禁止と書いていないから合法だと主張して、不自然な取引形態を使って税金を逃れようとする行為がこれに該当します。
たとえば海外の軽課税国を利用した複雑なスキームや、法形式と実態を大きく乖離させた取引などが典型例でしょう。

経営者の皆様に知っておいていただきたいのは、法律に書いてないからセーフとは限らないということです。
日本の税法には同族会社の行為計算否認規定という伝家の宝刀が存在します。
これは平たく言えば、税務署長が経済的合理性がなく不当に税逃れをしていると判断したら、取引の形式に関わらず否認できるという強力な権限を意味しています。

ある方策を思いついた時は、ぜひ次の二つの視点で自問自答してみてください。

一つ目は、法律の観点からOKかどうか。これは顧問税理士に相談すると良いでしょう。
二つ目は、その方策に合理性があるかどうかです。つまり、いびつな取引になっていないかどうかです。

このバランス感覚こそが、税務リスクを回避する鍵となります。

脱税とは何か。会社を破滅させる絶対的なNG行為

最後の場面です。

あなたは店員の目が届かない本棚の裏に隠れてこっそり立ち読みしています。

これが脱税に当たる行動です。
解釈の余地はありません。見つかれば即座に厳重注意を受けることになります。

経営の現場ではどういうことか

会社経営における脱税は、主に二つの行為を指します。

一つは架空経費の計上です。
実在しない人件費を計上する、存在しない取引の請求書を作成するといった行為が該当します。

もう一つは売上除外です。
現金で受け取った売上をレジに通さず自分のポケットに入れる、裏口座を作って売上の一部を隠すといった行為がこれに当たります。

これらは税務用語で仮装・隠ぺいと呼ばれています。
仮装とはないものをあるように見せること、隠ぺいとはあるものをないように見せることです。

脱税の代償はどれほど重いか

脱税行為に対しては、重加算税という非常に重いペナルティーが科されます。
本来払うべき税金に加えて、35%から40%もの罰金が上乗せされます。さらに延滞税もかかりますから、発覚した時のキャッシュアウトは莫大な金額になるでしょう。

しかし、金銭的なダメージ以上に恐ろしいのは信用の喪失です。
税務署の重点管理対象リストに載れば、その後も高い頻度で税務調査が入るようになります。
悪質と判断されれば、銀行は融資を引き上げ、新規の融資もストップしてしまうかもしれません。

ここで一つ、重要な注意点をお伝えしておきます。
それは、脱税ではないのに脱税として処理されてしまうケースがあるということです。

仮装・隠ぺいは、納税者が故意に行うことが前提になっています。
ですから、経理担当者の単純な計算ミスや売上計上のうっかり漏れといった過失は、本来であれば脱税には該当しません。

ところがずさんな経理処理を続けていると、調査官から「これはわざと隠したのではないか」と疑われ、重加算税を課されそうになることがあります。
日頃から透明性の高い経理処理を行い、領収書や請求書を適切に保存しておくことが大切でしょう。

経営者が目指すべき場所はどこか

ここまで、本屋の立ち読みという例え話を通して、三つの領域の違いを見てきました。

節税は白であり、積極的に活用してキャッシュを守るべき行為です。
租税回避はグレーであり、常に否認リスクと隣り合わせで公平性の視点が欠かせません。
脱税は黒であり、会社の未来を閉ざす自滅行為です。

経営者の皆様にお伝えしたいのは、黒には絶対に手を出さず、グレーのリスクを慎重に見極め、白を最大限に活用するという姿勢です。

特にグレーゾーンの判定には高度な専門知識が必要となります。
このくらい大丈夫だろうという自己判断は禁物です。

税理士は、あなたと一緒に本屋へ行き、「社長、そこで読むと店長に怒られますよ」「購入予定の本なら並んでいる間に読んでも良いですよ」とアドバイスするパートナーのような存在です。
しかし最終的に、読むかどうかを決めるのは経営者であるあなた自身です。

正しい知識を持って、堂々と節税をしていただければ幸いです。

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わかお税理士
税理士(税理士登録番号:140275)、国際認証MBA(経営学修士)、ファイナンシャル・プランナー

20年以上の実務経験の中で、上場企業から中小零細企業まで100数十名の社長の経営・税務・資産形成を継続的に支援。
もっと会社にお金を残したい社長へ。利益最大化と合理的節税で通帳残高を増やす、ご機嫌な未来志向の経営をサポートしています

【執筆税務論文】
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