「5手先の構造」と節税の考え方

日々、たくさんの中小企業経営者の方と接している中で、よくこんなお悩みを聞きます。

「売上はそこそこ伸びてきたんだけど、手元にお金が全然残らないんです…」

この悩み、とてもよく分かります。がむしゃらに頑張って売上を上げたのに、決算が終わってみると法人税がドンときて、利益も残らず、気づけば資金繰りにヒヤヒヤする。こんな悪循環に陥っていませんか?

実はこの問題、単なる経費の使い方や節税テクニックの不足ではなく、ビジネスの「設計」=構造が曖昧なことに原因があるケースが多いのです。

今回は、「5手先までを見据えた構造を持つこと」が、なぜお金を残す力につながるのか。そして、そこに税理士としてどんな節税戦略を組み込めるのか。そんなテーマで解説していきます。

目次

まず、根本的な話からいきましょう。

売上が上がったのにお金が残らない理由は、たいてい次の3つです。

  1. 収益構造が単発型になっている
  2. 利益が出る前提で経費を後付けしている
  3. 税金を“事後処理”で対応している

この3つに共通するのは、「行き当たりばったり」になっているという点です。

ビジネスの流れに設計図がないため、次に何が起きるかが読めず、結果として無駄な出費がかさみ、税金もコントロールできず、お金が出ていくばかりになるのです。

では、どうすればこの問題を解決できるのでしょうか。

その答えが、「5手先までの構造を考える」ことです。

これはどういうことかというと、売上を単発で取りにいくのではなく、最初の商品・サービスから始まり、最終的に継続的な売上と利益が残る仕組みまでを設計するということです。

たとえば、次のような流れをイメージしてください。

  1. お試しの低価格サービスを提供
  2. 気に入ってもらえた方へセミナーを案内
  3. セミナー参加者から個別相談に発展
  4. 高単価な講座・プログラムに参加してもらう
  5. 最終的に月額の顧問契約・会員契約につなげる

この流れができると、見込み客を「入口商品」から自然に「継続的な売上」へと育てる導線が完成します。
ここに税理士の立場から節税戦略を組み込めば、ただ売上が増えるだけでなく、手元にお金が残る体質に変えることができるのです。

ビジネス構造を5手先まで設計すると、実は税務の設計も自然と見えてきます。というのも、利益が出るタイミングや支出のタイミングを“自分で調整できる”状態になるからです。

たとえば、こんなケースを考えてみてください。

ステップ1:お試し商品の提供

ここでは、まず少額の商品やサービスを提供します。利益は小さくても、広告費や販促費をかけることができる段階です。これはすべて経費として計上可能です。

ポイント:この段階では「利益より信用」を重視し、将来の利益の“準備経費”として節税ができると考えましょう。

ステップ2:セミナー・イベント開催

見込み客との接点を作る場です。ここでは、会場代、資料作成費、交通費、広告費などの支出が発生します。これらもすべて経費です。

ポイント:利益を生むためのプロセスであり、売上と経費のバランスを調整する絶好の機会です。黒字を抑えつつ、集客の導線も整えられます。

ステップ3:コンサルティングや個別契約へ

ここから本格的に利益が出始めます。このタイミングで法人化を検討する、役員報酬を見直す、外注費を戦略的に使うといった選択肢が出てきます。

ポイント:法人の形や支払い方法を調整して、利益の出方を“自分で管理”することが可能になります。

ステップ4:講座やプログラムなど高単価商品

まとまった売上が発生するフェーズ。ここで重要なのは、“事業投資”という名目でしっかりお金を使っていくことです。

たとえば、

  • 自社の教材を制作する
  • 動画配信の設備を導入する
  • 社員研修を実施する

こうした支出は経費になりますし、次の売上をつくる仕掛けにもなります。

ポイント:利益が出やすいステップだからこそ、戦略的な支出で税金をコントロールすることがカギです。

ステップ5:会員制・顧問契約で安定化

ここが最終ステップです。安定した月額課金の仕組みができることで、資金繰りの不安がなくなります。

この段階で見えてくるのが、「利益を残しながら税負担を抑える方法」です。

たとえば、

  • 法人保険を活用した節税
  • 退職金制度を作る
  • 福利厚生制度を設計する

これらは、ある程度利益が出るようになってからでないと意味を持ちません。「5手先の構造」があるからこそ、有効に使える手段です。

ここまでの話でお分かりいただけたかと思いますが、節税は“申告の直前に焦って考えるもの”ではありません

税金は、事業の設計段階で決まります。

つまり、「5手先まで見える構造」を持っている経営者は、税務も含めて自分で主導権を持つことができます。逆に言えば、構造が見えていない経営は、税金に振り回され、お金が残らない経営になってしまうのです。

売上を増やすことはもちろん大事です。でも、売上を伸ばしてもお金が残らないのでは意味がありません。

大切なのは、「どんな流れでお客様が動いていくか」というビジネスの構造を設計し、その中に節税の仕組みを組み込むことです。

この「構造×節税」の考え方ができると、

  • 毎年の税金に悩まされなくなる
  • 資金繰りの見通しが立つ
  • 利益を残して次の投資ができる

という、**“攻めながら守れる経営”**が実現できます。最後に:あなたのビジネスにも構造を

「なんとなく売れている」
「いつもお金が足りない」
「税金に振り回されている気がする」

こうした不安があるなら、まずは今のビジネスの構造を紙に書き出してみることをおすすめします。

5手先までの流れを見える化し、それに対してどんな経費や税務処理が必要なのかを一緒に考えていくことで、今よりずっと強い経営体質が作れます。

もし、「自社の構造を見直したい」「節税を長期で設計したい」と思ったら、ぜひご相談ください。

税金を減らすことがゴールではありません。
お金を残し、未来を描ける経営にすることが、本当の目的です。

その第一歩として、「5手先を読む力」を、ぜひあなたのビジネスに取り入れてみてください。

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わかお税理士
税理士(税理士登録番号:140275)、国際認証MBA(経営学修士)、ファイナンシャル・プランナー

20年以上の実務経験の中で、上場企業から中小零細企業まで100数十名の社長の経営・税務・資産形成を継続的にサポート。
「節税は手段であって目的ではない」をモットーとし、中長期的に会社の健全な成長に貢献する節税策のみを提案している。

【執筆税務論文】
組織再編税制に係る行為計算否認規定の解釈とその適用

【セミナー登壇】
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東京司法書士会練馬支部様「インボイス制度から事業を守るための基礎知識」
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